エウシーニョという「一人トータルフットボール」
歴史に残るアヤックスの快進撃
美しいパスサッカー、若い選手の輝き、来年には多くの選手が抜けていく儚さ…
心に響く話題に事欠かない今年のアヤックスのUCLでの快進撃。
そんな彼らのことを私は良く知らなかった。なぜならJリーグばかり見ているから。
そのせいで「アヤックスすげー」と思っていた直後に見た清水エスパルスvsセレッソ大阪での強烈なカウンターゴール。
これを見た時に立役者でもあり私の大好きな選手である「エウシーニョ」の姿が、オランダの伝説のトータルフットボールに重なった。
そんな背景から書く、エウシーニョ好きによるエウシーニョの文章です。
トータルフットボールについて
トータルフットボールに関して書き始めると話の本題に入るまでめちゃくちゃ長くなるので、参考書物でも読んでください。
とりあえず無難にWikipediaのリンクを貼っておきます。
…ということで。
トータルフットボールについて多少わかってるくらいの前提で書き進めていこうと思います。私自身も詳しくは無いので難しい話はナシで行きましょう。笑
エウシーニョと言えば「なぜそこに居る!?」
エウシーニョの凄いところはいろいろあります。
テクニック、シュートレンジ、スタミナ、クレバーな守備
いろいろありますが、最もエウシーニョらしい特徴は「ポジショニング」
もはや不可解に近いような動きをすることで有名な彼は、RSBのポジションで出場しているはずが、敵ゴール左から侵入してきてゴールを奪うようなことをやってのける選手。
ゴール近辺では神出鬼没といった表現をしたくなるほどのポジショニングをする。しかし、神出鬼没は消えるという側面もあるが、エウシーニョの場合神出が8割くらい。「そこに何で居ない!?」といったマイナスの部分は少ないので悪目立ちはしにくいのも付け加えておきたい。
ポジショニングに捉われない考えはトータルフットボールに通じる
まずトータルフットボールの最大の特徴は「固定のポジションが無い」ということです。
この点はエウシーニョにも通じます。
好き勝手やるというのではなく、形にとらわれずに必要な時必要な場所に行くというのがこのサッカースタイルの神髄。
もちろん状況を正確に判断する能力や、チームメイトとの協力関係が必要な高難易度なサッカー。
動くことが基本であるため、自分から動かなくても周りの動きに合わせて動く必要があるため、動き続けるという難しさもある。そのため高いスタミナと集中力を試合中ずっと求められるという大きな負担もある。
エウシーニョの特徴はまさにトータルフットボールが可能な項目が揃っていると言っていいでしょう。
「一人」トータルフットボールだからいい
この記事で何度も出している「一人」というフレーズ。
これが私のエウシーニョのプレースタイルの最も効果的で独特な部分だと思っています。
全員で行うトータルフットボールは、各国の名称たちが口を揃えて「再現不可能」とまで言われる代物。
だからこそ、今はチームとしてのトータルフットボールは「夢物語」や「愚策」になってしまっている。
一人でやるからこそいいのだ。それを強く感じたからこの文章を書いています。
戦術の進化の歴史的に見ても「一人」は理想的
なぜ「一人トータルフットボール」がいいと感じたのかを熱く語るために、一番いいなと思ったのは「戦術の進化の歴史をたどること」だとお風呂中に結論に至った。
戦術の進化の歴史は「新しいモノ作り」に通じる
戦術の進化の歴史をたどるためには戦術をいちいち羅列していく「事象の羅列」よりも、進化の道中で起こる事象やその理由をたどりる「理由の説明」の方がわかりやすいと思ったので、兵器や車などのモノ作りの歴史に重ねて紹介していこうと思います。
コンセプト→修正→安定化→アンチ が進化の基本
大抵のモノ作りの発端は「こんな新しいモノがあったらいいな」という発想からスタートする。
画期的な新システムや新兵器といったものがそれに当たる。
サッカーで言えば超攻撃力や絶対的な守備といった考え方のコンセプトが基本になってくる。
画期的な事をすると、大抵の試作品は新機能満載やコスト度外視などの考え方を優先するため、余分なものや実戦ではあまり効果が無いものがくっついてしまうことが多々ある。
まずはそれらの不具合を現実的なものにするための修正が加えられて完成に近づいていく。
civ4のテクノロジー取得時の格言にこういうものがある
工学 「これ以上付け加える物が無くなった時でなく、これ以上取り去る物が無くなった時が完成だ」 - アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
デザインとは余計なものを無くすのが最終段階。そのため、コンセプトカーや試作兵器の良い部分を残しつつ不要な部分を無くす修正を経て完成してやっと安定板が完成する。
安定化することで敵を含めて多くの人がそれを真似たりすることで、その「新製品や新戦術に対してのアンチ」の必要性も高まってくる。
アンチを作るためにまた開発が進められ、同じ道をたどり始める。
この流れがサッカーの戦術の歴史にもある。
今で言えば「ポゼッションvsカウンター」のようなもの
こんなこと話す時に言うのもなんだが、私はポゼッションサッカーとカウンターサッカーが対立したり別のものだという考え方を持っていない。
必要な瞬間が違う、求めているものが違う時点でどっちが優れているかといったような並べて考えるものではないと思っているからだ。
しかし、往々にしてポゼッションサッカーへのアンチはカウンターサッカーでやることの多い現代では、ある意味ではこの二つはアンチの関係であるとも言えるのは確かだ。
一人トータルフットボールの良さは「異分子的存在」
現代のサッカーはトータルフットボールとは真逆。安定感を最優先する傾向にある。
その安定感と言うのも複数の考え方があって
・全体のバランス
・得失点のバランス
・ポジションのバランス
・考え方のバランス
などが挙げられる。
詳しく書きだすときりが無いのでさらっと書こうと思うが、多くのチームで4バックや3バックが採用されたり、多くても3トップがベースであったりと、特徴的なサッカーをするチームであっても、完全な格の差があってのドン引きサッカーでもない限り、なにかしらバランスという考え方が根底にあるのが最近のサッカーの考え方だ。
トータルフットボールのポジショニングの考え方はそのバランスという観点では真逆にある。
バランスを重視するサッカーをチーム全体で行っている中、しっかりと意図をもってそれを崩してストロングに変えられるエウシーニョはいわば異端な存在。
お互いにバランス、バランスとやっている所に一人が予想外な動きをする。
これがエウシーニョの強みだ。
個人の判断や飛び出しはサッカーにおいては常に発生し続けている「日常」のできごと。
そのため、エウシーニョを中心とした戦術を採用する場合には、他の選手も調整が必要になるが、エウシーニョはそういったことが必要な好き勝手にやる選手ではないと書いたように、そこまでの変化が必要なわけではない。
一人で状況に合わせて異分子になることで、いい意味でバランスを崩す。
これが一人トータルフットボール
フロンターレで輝けたのも必然
フロンターレのサッカーはパスサッカー。
いくらパスのスタイルはいろいろあるとはいえ、人から人へボールを動かすことを中心にプレーが進むため、人の動きを制御できれば防ぐことは可能なサッカーだ。実際やるのは難しいけど。
5バックでがっちりパスコースを潰したり、クロスを上げさせて最後のプレーは「普通」にさせたり、といったものが典型的な対策だ。
人の動きが重要になるサッカーにおいて、動きで常軌を逸したことができるエウシーニョはこういった対策をぶち破る最適な方法。
アンチに対するアンチを個人でやってしまう選手。だからこそリーグベストイレブンにも輝ける。
エスパルスで求められるものは?
私はエスパルスに詳しくないどころか、昔はボッコボコにされ続けていたという苦い記憶があるせいでむしろ敵対的とも言える。
そのためあまり正しいことは言えないが、テセや北川やドウグラスといった、裏抜けや高さを生かした攻撃が基本なチームだと思っている。
そのためにもサイドアタッカーの攻撃力が求められてエウシーニョを獲得したんじゃないかと推測している。
左の松原右のエウシーニョ
両サイドからバランスよく攻めれるメンバーを揃え、前2人で仕留めるのが基本。
ベースは4-4-2で攻撃方法も形通りのサイド重視と言っていい。
この形は最もバランスに適した陣形と言えるため、異分子の存在は利くはずだと思う。
現状ではその特殊なスタイル故にフィットが不十分で、チームの状態も思わしくない。
しかし、これまで書いたようにエウシーニョの存在は忘れてはいけないし、エスパルスにフィットすれば怖くて当然な選手。
彼のフィットがチームの起爆剤になる可能性はあると思う。
できることなら、直接対決では相手にしたくないな…
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