一年ぶりに住んでたところに来てみたら、裏ステージに行けた
休日、一年前に住んでた下高井戸にやってきた。理由はとくになく、強いて上げるなら住んでた頃に行かなかった居酒屋を数件回りたかった。
一年ぶりの下高井戸は結構お店とかが入れ替わっていて、でも変わってないところもあり、巡っていてなかなかたのしかった。そして、住んでいたころは一度も訪れることができなかった、スーパーの向かいにある「桃山」という骨董品屋さんに初めて訪れた (店名は初めて知った)。
実はこのお店は自分にとって、テレビゲームの裏ステージのような場所だった。ゲームを全クリしても訪れることができない場所。スーパーの買い物帰りにいつも見えるのに、入り口が見つからないから入り方が分からない。「どうやったら行けるんだろう?」とずっと思っていて、とうとう住んでいるうちに訪れることができなかった場所。めっちゃ目立つ感じでお宝が見えているのに、どうキャラクターを操作したら取れるのか分からない、そんな場所に、本当に偶然訪れることができた。入り口、ここにあったのか。
店内はウン十万円する焼き物がずらっと並んでいて、ビビリながら棚を眺めていると、お店の方がフレンドリーに話しかけてくださった。そこからいろんな話を聞けた。
37年間お店をやっている話、2階が茶室で、以前は頻繁に来客に対してお茶を一服差し上げていたがコロナ以後は全くできなくなった話、本物の白磁は光っているから見分けがつくという話、安土桃山時代の技術を継承した作家たちの作品を買い付けて販売している話、焼き物を焼いて、最低30年封印して、結晶化するまで完成とみなさない作品の話、物質的な要素だけではなく、作品の裏にある過程や歴史の重みを味わうという話。
あえてスーパー側ではなくその反対側の目立たない位置に入り口を設け、来たいと思った人だけ来れるようにした話 (そしてそのギミックにまんまとハマっていた自分)、ショーウィンドウにもたれかかってカップラーメンを食べていた不良高校生たちにお茶を2服提供したら、「ちゃんとした大人が俺らのようなものにひれ伏してくれた」と言われ、自然に「目上の者が目下の者にどれだけ臣従できるかという修行」である茶道の真髄を体現していた話。
結界を超える関係の話、生まれちゃったものは仕方ないからたくましく生きていく話、間違った生き方というものはないという話などなど。
自分たちに対して、きっといい人生になると言ってくれた。それまでの話に説得力があったので、根拠のないことを言われているのに本当にいい人生になる気がしてきた。本当は根拠があるけど、若造の自分には分からない部分なのかもしれないし。
裏ステージにある宝物ってこんな感じだよなと思った。そこには賢者がいて、その RPG 中で出てくるすべての魔法を伝授してくれる。みたいな感じがした。
今度訪れるときは、お茶をいただけるといいなと思った。