アドウェイズ会長になった岡村陽久が、新潟・燕三条の「金属加工工場」を受け継いだワケ
アドウェイズ社長退任から3か月。会長となった岡村は前回明かした「3つの計画」に向けて多忙な日々を送っていた。そして、そのうちの一つである「キャンプ事業」が具体的な実行フェーズに移ったという。
その構想について話を聞くべく岡村のもとを訪れた高山と西久保。しかし、そこに現れたのは岡村が「事業のキーマン」と名指しする意外な人物だった。
三代目を継ぎし者
高山:岡村さんがアドウェイズの会長になって3か月が経ちましたけど、いま何をやってるんですか?
岡村:前回、会長になったらやりたい3つの計画について話しましたけど、そのうちのひとつ「キャンプ事業」がついに動き始めました。
西久保:自社で工場を持ってサウナテントを作るってやつですね。ついに!
岡村:今日はそのキーマンを呼んでいるんですよ。とある工場の三代目のトモくんです。
トモ:三代目のキャンプ好きトモです。よろしくお願いします。
高山:おつかれさまです三代目。……って、僕らもよく知ってるアドウェイズ社員のトモじゃないですか?とある工場?三代目?
西久保:どういうこと?
岡村:じつは今年10月1日に、新潟の燕三条エリアにある「とある工場」をアドウェイズが受け継いだんです。創業73年の、ステンレスやアルミのプレス加工を得意とする工場です。
トモ:ちなみに、燕三条は金属加工製品のものづくりで有名なエリアです。
岡村:そう。そして、燕三条ってじつはスノーピークやキャプテンスタッグといったアウトドアブランドの本社がある、いわばキャンプの聖地でもあるんですよ。だから、我々もここから新しいキャンプギアを生み出していこうと。その三代目をトモにやってもらうことにしました。
高山:なるほど。でも、そういう工場って普通は親族が継ぐものなんじゃ……? なんでアドウェイズが?
岡村:一般的にはそうですね。色々とご縁があってアドウェイズが工場を受け継ぐことになりました。
西久保:それで、アドウェイズでも有数のキャンパーであり、岡村さんのアウトドア仲間でもあるトモが三代目に抜擢されたと。
岡村:そう、トモのキャンプ好きは常軌を逸していますからね。彼、今回、三代目就任で新潟に引っ越したんですけど、生活に必要なモノとか服とか一切持たずに、パソコンとキャンプグッズだけ持って新潟に行ったらしいです。しかも、不安だからテントは3張り持って行ったらしい。パンツも靴下も一枚もないのにテントを3張り。
高山:新潟に何しに行ったんだろう?
岡村:他にも、北海道に1週間キャンプに行くとなれば、ワンボックスカーがギュウギュウになるほどのキャンプグッズを持ち込む男ですからね。キャンプ中のあらゆる事態を想定して、あらゆるグッズを準備するんです。トモはお酒もタバコもしないんですが、絶対に自分で使わないであろうワインオープナーや自分が吸わない葉巻、謎のカードゲームまで持ち込んでいた時は、こいつガチだなと思いました。
三代目として最初の意思決定は「何も変えない」こと
西久保:それにしても、あのトモがいきなり創業73年の重みを背負うことになるとは……。
トモ:そうですね。IT企業の会社員からいきなり三代目になるとは……自分でも驚きです。
高山:大丈夫? 従業員のみなさんとはうまくやれてるのかい?
トモ:就任して1週間しか経っていません。当たり前ですが、まだ何もできていないですし、何の実感もまったくないです。まして、うまくやるなど恐れ多い。だから、まずは工場になるべく「いる」ことから始めようと思って。
西久保:それは従業員のみなさんにトモの存在を知ってもらうため?
トモ:いえいえ、知ってもらうとかも恐れ多いです。というよりは、そこにいるんです。いさせてもらえるようになったら大したものだとも思っていて。だって、よく分からないIT会社の人間がいきなり工場にやってきて「三代目です」って言われても、従業員のみなさんはなんだ、なんなんだってなると思うんです。だから、そこにいるんです。
高山:ちょっと何を言っているのかわからないけど、確かに、IT会社の人間って、効率化の名のもとに工場にITを取り入れるだけ取り入れて、結果何にも変わらないような改革をしそう……。
トモ:そんなことしませんよ! というか、僕は三代目として決めたことが一つだけあって、それは「変えない」です。工場はもちろん今まで通り、取引先とも今まで通りのお付き合いをさせていただきたいですし、工場の皆様に対しても「これまで通りのやり方でお願いします」とお願いしています。なるべく変えたくないんです。
西久保:ちょっとくらいは変えてもいい気がするけど、どうして?
トモ:言葉で説明するのは難しいんですけど、創業73年の工場って、全てが研ぎ澄まされているんですよ。ひたすらものづくりだけを突き詰めてきた、そんな空間にしか醸し出せない芸術があるというか。何かをすることで、それが崩れてしまうのがイヤだったんです。
岡村:分かる。あの雰囲気は変えたくないよなあ。
トモ:なので、工場の皆様にはこれまで通りのお仕事をお願いしまして、僕らは僕らでなるべく目立たず、工場の皆様に迷惑かけず、見えないところでキャンプギアなんかを作らせてもらおうかなと。「あの人は何をやっているの?」くらいの感じでも見てもらえるだけでも嬉しいなと思ってます。。
高山:で、まずはテントサウナを作ると。
岡村:じつはすでに開発を始めています。ストーブや煙突、テントも含めた本格的なテントサウナを年明けくらいに販売します。価格はまだハッキリ言えないけど、品質・材質から見ると相当安いです。おそらく儲けはほぼ出ない値段にします。
高山:え? じゃあなんでやるんですか?
岡村:全国のキャンパーおよびサウナ―のために決まってるじゃないですか! いいですか、高山さん。テントサウナを買う人はね、「夢」を買ってるんですよ。キャンプ場の川の横でサウナに入り、ロウリュウをして、そのまま川に飛び込む。そんな素晴らしい「夢」を買うんです。
高山:夢……。
岡村:そんな夢を、多くの人が気軽に手にできたら素晴らしいでしょ。ただ、安かろう悪かろう、じゃダメなんです。安いからって粗悪な、室温が100℃にも満たないような「なんちゃってテントサウナ」を作ることは、サウナ好きの夢を踏みにじる行為だから。あと、普通に風邪ひくし。
トモ: 徐々にテントサウナが認知されてきていて、たぶん、これからそういう粗悪品もいっぱい出てくると思うんですよ。でも、そうなると、テントサウナのムーブメントが萎んでしまう。だったら、うちがいち早く良いものを安く提供できるようになって、業界全体の信頼を担保していかないといけないと勝手に思ってるんです。
西久保:作る前からすでにテントサウナ業界の未来を考えてるんだ……。
猛烈に欲する、仲間とアイデア
高山:しばらくはトモ三代目と岡村さんの二人三脚でやっていくんですか?
岡村:それなんですけど、じつは社員を募集しようと思ってます。三代目はアドウェイズの仕事もあって東京や大阪を行ったり来たりしているので、彼の不在時に「右腕」として働いてくれる存在が新潟にいてほしい。これは、いずれ正式に募集をかけます。
トモ:あとは、僕らの工場と一緒にものづくりをしてくれる会社や、「こんなキャンプグッズがほしい」といったアイデアも随時募集しています。特に、キャンプグッズのアイデアはTwitterなどを使って広く募りたいですね。今はテントサウナ以外、何を作るかまだ決まっていないので。
岡村:テントや焚き火台みたいな王道のキャンプギアもいいんだけど、どうせなら大手メーカーが絶対やらない、遊び心のあるものを作りたいよね。そんなぶっ飛んだアイデアを、どんどんください。
西久保:それって、アイデアが採用された人は何かもらえるんですか?
トモ:一番良いと思ったアイデアには僕らが作ったテントサウナを差し上げます。他にも、入選・佳作などに応じて、いろいろ賞品を考えたいなと。「とある工場」で作ったマグカップや灰皿とか、どうでしょう。あとは、換気扇の通気口のパーツも作ってるのでそれもよければ。
高山:いや、通気口だけもらっても困るのでいりません。とにかく、三代目と岡村さんは今、仲間とアイデアを欲してるわけですね。
トモ:本当に、猛烈に欲してます。
岡村:さっき話した正社員だけでなく、もし僕らのキャンプ事業に興味のある人がいたら、ぜひ新潟まで来てほしいですね。燕市に寮を用意したので、住まいは確保できます。謝礼もお支払いします。それで、普段は自由に活動してもらい、手が空いた時だけ手伝ってくれたり、一緒にアイデアを考えたりしてくれると嬉しいですね。
高山:というわけで、アイデアのご応募は以下のTwitterアカウントのDMまでお願いします。この通りです!
三代目Twitterアカウント:トモ (@tomo___44)