北極圏・ラップランドひとり旅 6日目
September 18, 2019
Urho Kekkonen National Park
北極圏トレッキングの2日目は寒さで目が覚めた。
近くに張ったサトルのテントから音はしない。どうやらまだ寝ているらしい。
ゴソゴソと寝袋から這い出し、テントの入り口から顔を出すとキリリと冷たい空気が流れ込んできた。朝露に地面の落ち葉が濡れている。とても静かな朝だ。
僕の動く音で目が覚めたのか、サトルもテントから這い出してきた。彼も寒さでよく眠れなかったらしく、とても眠そうな顔をしている。
スープとバナナで簡単に朝食を済ませ、テントを畳み、バックバックを背負う。サトルは昨日歩いてきた道を戻り、ヒッチハイクをしながら彼の旅を続ける。僕はこのまま国立公園の奥へと歩いて行く。彼とはここでお別れだ。
日本に戻ったらまた会おう。旅の話をしながらお酒を飲もう。そう言いながらお互いの旅の幸運を祈ってハグをする。重そうなバックパックを背負い、アコースティックギターを抱えながら歩いて行く彼の背中を見送り、僕も自分の道を歩き始める。
僕の歩く道は川沿いにあって、振り返ると昨日歩いてきた丘が見えた。この国立公園は大きな山がなく緩やかな丘がずっと続いている。1年の半分以上が雪に閉ざされるため、植物は生えづらく、木の成長も遅い。
次のキャンプ地は思ったほど遠くなかった。川沿いの道は平坦で歩きやすく、1時間もしないで着いてしまった。そこには立派な山小屋風のハットとファイヤーサークル、薪小屋があり、中を覗くとたくさんの薪が積まれていた。これなら昨日のキャンプ地で立ち止まらず、ここまで歩いて来ればよかったかもしれないと思いながら、マッカラを焼いているハイカーたちの間に混ざる。
ここはルートの分岐に位置し、様々な方向からハイカーたちがやってくる。僕はこの素敵なハットに泊まろうと思い、時間潰しに一日中ファイヤーサークルに座って彼らを眺めていた。
ハイカーたちはほとんど全員、リュックの中からマッカラを取り出して火に炙っていた。マッカラの焼ける匂いが食欲をそそるけど、サーリセルカの街で買ったマッカラは昨夜のうちにサトルと全て食べ尽くしてしまっていた。少し残しておけば良かったと思いながら眺めていると、ハイカーがマッカラを1本分けてくれた。優しさが嬉しい。
9月のラップランドは白夜が終わり、19時頃には陽が沈む。
ハイカーたちも夕方になるといなくなり、辺りには川の流れる音と、風に揺れる木々の音しか聞こえなくなった。
人がいなくなった空間に少し寂しさを覚えながら、夕陽に照らされるファイヤーサークルでひとり焚き火を続けた。