嘘グルメ 第四話「スッポンの甲羅」
誰だてめえは!勝手に人ん家に来て何様だってんだ!借金取りか!?あん!?…ん?お、お前!それは幻の名酒『鬼仏』の18年じゃねえか!お、俺にくれるってのか?お、おい!あがれよ、まあ、一杯やろうじゃねえか!それとお前さん、酒の肴は持ってきてんだろうな?ん?赤キンメイカのスルメ…?お前さん、、分かってるじゃねえか(笑)
クーッ!さすが鬼仏だ!匂っただけで肝臓が震えやがったよ!うめえ!…だからよ、俺ほどの川専門の漁師は後にも先にもいねえってことだわ!川は面白えぞ、こっちが追うと逃げやがるし、逃げると追ってきやがんだよ。イチオシの食事を教えろだ?そうだな、、川だったらコイツしかいねえよ。鰻、、なんて足元にも及ばない、川の頂点はスッポンだ。
スッポン漁は奴らが活発になってくる夏の夜にやるんだ。あいつらは体力がねえんだわ。短距離タイプっていうか、マラソンタイプじゃないんだよ。要はめちゃくちゃに動いたと思ったらすぐに休みやがるんだ。その習性を利用して、川のあちこちにスッポンが休む部屋を作っといてやる。するってえとスタミナのなくなったスッポンが俺っちの作った部屋で休むわ休むわ!そこを捕まえるだけでいいのよ(笑)
(名人は簡単に言っているが、この"部屋誘い"という漁法を行えるのは今現在日本では彼一人だけであった)
で、スッポンの食いかただけどよ、いくつもやったけどこの食いかたが一番うめえよ。まずスッポンを捕まえたら絞めて甲羅を剥ぎ取る。甲羅の裏に旨味が詰まった味噌がへばり付いてんだ。そのまま甲羅を裏ッ返して七輪で炙る、、甲羅を鍋の代わりにするんだ。その間にスッポンの胸肉の部分を薄切りにする。甲羅にへばりついた味噌に酒とみりんを少し加えて煮立ってきたら薄切りにした胸肉をその熱々の味噌につけて食べる。これが…うめえのよ。
名人との宴会は続いた。これはどうやら、予備で持ってきた名酒『赤坂見附』を出さなきゃならないのも時間の問題な訳で…。
「スッポンの甲羅味噌」
材料
スッポンの甲羅1枚
スッポンの胸肉 100g
みりん 大さじ3
酒 大さじ3
作り方
1 スッポンの甲羅を剥ぎ取る。
2 甲羅を裏返し炭火で炙る。
3 スッポンの胸肉を薄切りにする。
3 甲羅の味噌にみりん大さじ3、酒大さじ3を入れて沸騰させる。
4 胸肉の薄切りを甲羅の中の味噌ダレにつけて食べる。
※本文に出てくる料理は、嘘です。
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