嘘グルメ 第十六話「お盆のクラゲ」
清々しい程の青空はどこまでも抜けるように高く、青い海はそんな空と白い雲を、寄り添うように映し出していた。
東京なんて遠いとこからよく来たね!こんな何もない魚臭い町にようこそ!(笑)匂ってよ匂ってよ!ほら俺の手!な?魚臭いだろ?ほら肘も肘も!ほら!魚臭いだろ?顔も顔も!ほらー!魚臭いんだよー!(笑)
ごめんねー!ついよそから来た人には匂ってもらうんだよ!(笑)これだけ漁師やってると全身魚臭いんだって(笑)ここかい?ここは海に生かされてる港町でね。ここに住む殆どの大人は漁師なんだ。それしか選択肢がないって言ったら変だけど、幼いときからこの港の大人たちを見てたらかっこよくてね~。気が付いたらみんな漁師を目指してるんだよ。
最近では近代化の波が港町にも来ててね、やれ魚群探知機だ、やれAIだ、色んな業者がきて営業しにくるんだけど、奴等は分かっちゃないんだよな、俺たちがどれだけ耳と目と鼻を効かして魚を追っているかっていうのを。経験ってのはコンピューターには真似できないんだよ!それでも「お願いします!」ってしつこいからさ、「しつこい!」っつってそいつの顔殴っちゃったよ!え?うん。しっかり捕まったよ。ダメだよな、人を傷付けたら。反省してるよ。
で?あーそうだそうだ!グルメの話だよな?あんたも物好きだねー!あのさ、お盆の時期になると漁師が楽しみにしてるもんがあんだよ。お日さんが上に登って腹が鳴ったら鍋に湯を沸かして、海に箸突っ込んだら取れんだよクラゲが、いくらでも。お盆になるとクラゲが異常に発生してるだろ?それをさしゃぶしゃぶにして食うのが、お盆の時期の「漁師メシ」なんだわ。お盆の時期の海は俺たちには食べ放題のバイキングに見えるね(笑)
海にいるクラゲをすくうのに色々試したんだよ。箸、おたま、トング。でも一番クラゲを取りやすいのは、パスタをすくうアレが一番取りやすかったよ(笑)あんたあれの名前知ってるかい?あれ、パスタレードルって言うらしいぜ。別にどうでもいいんだけどな(笑)
で、食べ方だけどさ、湯にさっとくぐらせると透明な身が一瞬でほんのりピンクな白に変わってキュッと身がしまる。それを紅葉おろしを入れたポン酢にかぼすを搾ったのにチョンとつけて食べると、コリコリした食感と舌がピリッと痺れる…!その瞬間を逃さずに冷酒をぐいっと飲む…!!これがうめぇのよ。漁が終わって疲れた体に染みるんだ。口に「トゥルン」って入る感じもたまんねえな。まあまたその時期になったら来な!気持ちいい海と空と大量のクラゲをご馳走するよ。
清々しい程の青空はどこまでも抜けるように高く、お盆の時期の青い海はそんな空と白い雲と大量のクラゲを、寄り添うように映し出すそうだ。
「お盆の時期のクラゲのしゃぶしゃぶ」
材料(四人分)
お盆のクラゲ 150g~200g
長ネギ 2本分
人参 1/2本
大根 160g
白菜 1/5株ほど
水 1000ml
ポン酢 お好みで
かぼす 1個
作り方
1 お鍋に水を入れ沸騰させる。
2 野菜を入れて煮ていく。
3 海に箸をくぐらせクラゲを取り、しゃぶしゃぶする。
ポイント・コツ
大根おろしやもみじおろし等を薬味として入れると、よりいっそう美味しいです。クラゲを取るのはパスタレードルを使うと取りやすいです☆
※本文に出てくる料理は、嘘です。