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Hubbleが切り開く。生成AIによる契約業務の進化

携帯の契約書、賃貸の契約書、、契約書という言葉の重要度はなんとなく理解できるものの、Hubbleを始める前は「読んだふりしてサインする」それが僕と契約書の関係値でした。スタートアップをやる中で、株主間契約や投資契約と、「さすがにちゃんと読まないとな」と思った僕に降りかかったのは、契約書にしか登場しないのではないかと思うくらいの複雑な日本語。

正直何が書いてあるか分からず、弊社取締役CLOの酒井弁護士の貴重な時間をお借りして、わかりやすく説明をしてもらいました。理解して初めて法律的な観点での相談が建設的にできたことを覚えています。

企業間における契約のやり取りの難易度に比べると、小さなことかもしれませんが、あの時の煩わしさを解決したい――そんな思いを抱きながらプロダクト開発に努めています。この度、シリーズBの資金調達を完了し、その目標達成に向けて大きな一歩を踏み出しました。Hubbleがこれまで大切にしてきた理念と、生成AIの登場によって見えてきた新たなビジョンについてお伝えできたらなと思います。

AIと契約業務のこれまで

契約書は過去の判例をもとに作成されることが多く、その性質上、大規模なデータベースを利用したAIとの相性は非常に良いとされています。そのため、近年では契約書チェックやレビューサービスなど、AIを活用した開発が多く行われてきました。

顧客の課題に向き合う姿勢

しかし、Hubbleはこれまで「AIスタートアップではない」というスタンスを貫いてきました。その理由はいくつかあります。

  • データが揃っていない
    2017年の創業当時、リーガルテックサービスはまだ少なく、契約書をクラウドで管理されているお客様も多くありませんでした。多くの企業が自社独自の方法で契約書を管理しているため、AIの学習に使えるデータには限りがあり、世に出ているAIレビューサービスも汎用的なものに留まっていました。

  • 顧客の課題に真摯に向き合いたかった
    私たちは、魔法のようなAIツールを開発するよりも、まずは顧客の実際の課題に向き合うことを選びました。「事業部から無作為に契約書審査依頼がくる」「過去の契約が検索できない」「契約書の作成過程が見えない」といった声を受け、HubbleはCLM(Contract Lifecycle Management)というポジションを取り、契約業務全体の効率化に取り組んできました。

このように顧客に寄り添いながら開発を続け、継続率99%を誇るサービスを築くことができました。このスタンスは今後も変わらないと断言します。

ChatGPTの登場と新たな展望

彗星の如く突如現れたChatGPT。スタートアップ業界でもAIに対するパラダイムシフトが起きています。以前は「データを貯めろ」「技術的競合優位性を保て」といった戦略が主流でしたが、ChatGPTがもたらした大規模言語モデル(LLM)により、少ないデータでもカスタマイズされたAIを簡単にサービスに組み込むことが可能になりました。

また、生成AIによる影響は、他業界と比べ法務業界(Legal)での影響力が顕著であることが報告されています。Goldman Sachsのレポートによれば、Legal分野の約44%がAIによる自動化の影響を受ける可能性があると推定されています。

Global Economics Analyst The Potentially Large Effects of Artificial Intelligence on Economic Growth (Briggs/Kodnani)

データの構造化とRAG基盤の構築

LLMの出現により、各社が強みとしていたAIによるアウトプットがコモディティ化していく現象が起きています。汎用性と高性能を持つLLMによって相対、多大な投資をして開発した独自のAIモデルの価値は低下しています。結果論にはなりますが、当初から顧客の課題解決を最優先し、AI開発自体に投資をしなかったHubbleの決断は正しかったと思っています。

LLMを利用した機能を実現するためには、RAG(Retrieval-Augmented Generation)と呼ばれるデータ基盤の構築が必要です。機密性の高さから必要とされる柔軟な権限設定、異なる業界や企業文化に合わせて自社最適な管理項目を設定でき、自動で台帳が作成される機能を開発したりと、業務フローファーストな開発を行ってきました。結果として、契約書の実運用で必要とされるデータを集め、LLMと組み合わせた高度な機能を実現する基盤を築くことが可能となりました。

RAGとは、Retrieval Augmented Generationの略で、自社に蓄積された大量の業務文書・規定などの社内情報、外部の最新情報を活用する手段として、信頼できるデータを検索して情報を抽出し、それに基づいて大規模言語モデル(LLM)に回答させる方法のことです。

https://www.dir.co.jp/world/entry/solution/rag

このデータ基盤を活かし、事業部門と法務部門の双方が効率的に連携できる環境を提供し、ビジネスの最前線で活躍できるようサポートします。契約書が専門的で読みづらく、事業部門が契約業務を法務部門に丸投げせざるを得ない状況を改善します。

そして、僕自身が一人でも契約書を読解できる未来へ。。

多彩な新機能の実現とスピード感

コモディティ化する時代だからこそ、強固な基盤を整え、スピード感を持って機能を開発・実装することが重要だと考えています。 法務部門と事業部門の両方に価値を提供、つまり、組織全体で活用できる機能をリリース予定です。

  1. 高度なAIレビューとリスク分析
    GPT-4oレベルの大規模言語モデルに自社のナレッジや外部の法律・判例データを組み合わせ、安価で高精度なレビューとリスク分析が可能になります。AIが第一段階のレビューを行うことで、法務担当者の負担を軽減し、事業部門も契約リスクを直感的に理解できます。

  2. 契約内容のわかりやすい要約
    長文の契約書を平易な言葉で要約し、重要なポイントやリスクを自動で抽出します。事業部門の方々が契約内容を正確に理解し、意思決定を迅速に行えるようサポートします。法務部門も要約を確認することで、効率的なコミュニケーションが可能になります。

  3. 法務プレイブックの自動作成とメンテナンス
    Hubbleは全ての契約編集の履歴を詳細に記録しています。編集差分やコメントをAIが解析し、法務プレイブックを自動生成・更新します。これにより、属人的にならず組織にナレッジを継続的に蓄積・活用でき、新人の教育や業務品質の均一化に貢献します。

  4. 口語による自由な検索
    ユーザーは自然言語で契約書内の情報を検索できます。「来月更新が必要な契約は?」「特定の条件を含む契約書は?」といった質問に対して、AIが迅速かつ的確に回答します。法務部門と事業部門の双方が直感的に情報にアクセスでき、業務効率が向上します。

とことん追求する「ユーザー体験」

強固な基盤を持つHubbleだからこそ、LLMの活用によってこれまでにないスピードと精度で新機能を開発できます。2024年4月には、業界で最も早くLLMを用いた「カスタム項目AI自動入力機能」をリリースしました。その後も、生成AIを活用した革新的な機能開発に全力を注いでいます。

AIのアウトプットがコモディティ化していく中で、結局のところ一番重要なのは「ユーザー体験」だと思っております。冒頭に申し上げましたが、まさしくこれはHubbleがこれまで注力してきた、最も自信を持って行える機能開発手法であり、これからもそれを磨き続けてきます!

シリーズB調達完了と今後の展望

シリーズBのファーストクローズにより資金調達が完了し、チームの強化も進めていきます。優秀な人材を迎え入れ、開発体制を一層強化しています。Hubbleはこれからも顧客の課題に真摯に向き合い、最新技術を活用して契約業務の進化に貢献していきます。AIのアウトプットがコモディティ化する時代だからこそ、確かな基盤と優れたユーザー体験で他社との差別化を図ります。引き続き、ご支援とご期待のほどよろしくお願いいたします。

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