ブルーロックから学ぶ海外院留学スピリット
青い監獄(ブルーロック)とは?
絵心甚八は,「サッカーは相手より多くの点を取るスポーツだ.」「革命的なストライカーたちは皆,稀代のエゴイスト.」「世界一のエゴイストでなければ,世界一のストライカーになれない.」「日本サッカーに足りないものはエゴ」だと喝破する.
青い監獄(以下,ブルーロック)とは,日本サッカーがW杯優勝するために革命的なストライカー(エゴイスト)を誕生させるための実験施設である.
全国から集められた高校生FW300人がU-20日本代表FWの座をめぐり,様々な選考を通して「ストライカーのエゴイズム」を試される.
なぜブルーロックに心を動かされるのか?
小学校1年生からサッカーを始め,高校では静岡のサッカー強豪校とされる清水東高校において,フォワードのポジションでサッカーをしていた白鳥.
週6での練習や試合,先輩後輩関係ない過酷なレギュラー争い,サッカーだけでなく勉強での成果も求められる環境,公立中学部活出身で入試ギリギリ合格の白鳥には思い悩むことがたくさんあった.
その頃の自分がブルーロックを読んでいたら,いくつかの悩みが言語化され,解決のための真っ当な努力がなされ,もっと楽しく熱いサッカー人生をおくれていたのではと忸怩たる思いである.
しかし,ブルーロックを何度か読んでいて,悩める高校サッカー部時代だけではなく,アメリカで大学院留学を開始してから現在までの経験,そして今抱えている問題についても思い当たる教訓があることに気づいた.
本記事では,漫画ブルーロックを参考に,白鳥の海外大学院留学を振り返りつつ,海外大学院への挑戦するスピリットを言語化し,将来の自分に対する熱いメッセージとしたい.
ブルーロックからの教訓集
ゴール=パブリッシュ
博士号(Ph.D.)を取るためには論文をパブリッシュする必要がある.
「サッカーにおけるゴール」は「大学院留学におけるパブリッシュ」と考えると,ブルーロックにおけるゴールをめぐるさまざまな議論が,他人事に聞こえなくなってくる.このアナロジーを前提に,ブルーロックからの教訓を考察していきたい.
(インパクトが)一番強いやつっしょ♪
研究者たるもの,誰しもインパクトのある研究をしたい.なんだったらインパクトファクターの高いジャーナルにパブリッシュしたい.
ただ,大学院生として未熟さ,そして留学生としての立場ゆえに,「どうせ自分の研究は」と弱気になってしまうことがある.
そんな時に思い出したいのが蜂楽のこの言葉.
合わせて,潔のこの言葉も覚えておきたい.
快適な日本をわざわざ抜け出し,文化も言語も異なる環境を自ら求めた海外留学生に刺さる内容だ.
ゴール(パブリッシュ)の匂い
Ph.D.を持つ者はその分野において,対象の研究がどの程度重要であるかを評価できることが求められる.
自他問わず,あらゆる研究内容に見聞きする上で,それらがパブリッシュ(ゴール)可能であるかを見極める嗅覚が重要である.
自分や同僚の研究内容に「ゴールの匂い」がするか常に意識をしていきたいところだ.
自分だけの武器をもて
どの研究室のPrinciple Investigators も,彼らをPIたらしめている,何者にもない唯一無二の武器を持っている.それが「0を1(パブリッシュ)」にすることを可能にする.
自分だけの武器を言語化し,他者を説得し,実績を積み重ねていくことこそ,海外大学院のみならず,あらゆるステージで生き残るための本質である.
事実,ブルーロックに出てくる主要なキャラは自分の武器を言語化している.彼らがブルーロックで生き残るために実践していることは,海外大学院生活にも応用可能だ.
その武器を突出させろ
ある研究室を軸に論文をいくつか読んでみると,「研究室・PIの武器」と何かを掛け算することでパブリッシュが産み出されていることに気づく.
そこで,研究室の武器に自分の武器を掛け算することを常に考えていきたい.自分の武器が突出したものであればあるほど,パブリッシュの可能性が高まる.
自分の武器を突出させるための日々の努力は欠かさないでいきたい.
ただ上には上がいるもので,ひょっとすると自分は戦える武器を持っていないかもしれないと思ってしまう.
そんなとき,「所属」すること自体が武器になることを忘れないでおきたい.
ある大学のある研究室という範囲において,使用可能な限られたリソースへのアクセスさえ,自分の武器となりうるのだ.
パブリッシュを産み出すための方程式
博士論文のみならず,論文を執筆するにあたり,分野の理解と限界,自分独自の問題の捉え方とその仮説,検証するための自分だけの武器などなどを盛り込んだ一連のストーリーが重視される.
このストーリーのレシピこそ,己のゴール(パブリッシュ)を産み出すための方程式だ.
うまくいってしまった成功体験を分解し,言語化し,再現性を高めていきたい.
絵心のこの言葉を借りるなら,パブリッシュするべくしてパブリッシュしろ.
絶対絶命ってやつはビビる局面じゃない
研究においてうまくいかないことはしばしばある.それに費やした時間や労力などのサンクコスト(埋没費用)を考えると心苦しくなる.
そんな絶対絶命の局面の自分に言い聞かせたいのが,蜂楽のこのセリフだ.
失敗から学び,前に進み続ける勇気を常に持ち合わせていきたい.
死線(締切)を超えて余儀なく進化する
指導教官からのフィードバックはあればあるほどプロジェクトは前に進む.
フィードバックを得るためには,コンスタントなアップデートが必要である.
自らに死線(デッドライン)を与え,進捗報告することで,パブリッシュ(ゴール)を狙うストライカーとして,進化を余儀無いものにしていきたい.
客観的に何かを教わるというよりかは,定期的なフィードバックを通して,「指導教官ならこう考える」という「内なるPI」思考パスを強制的に作ることができる.
これこそが,プロフェッショナルに追いつき追い越すために大学院生活で身につけるべきことである.
他人(共同研究者)との化学反応
他人(共同研究者)の力を借りることで,自分1人ではできないパブリッシュが可能になる.
これは,自分の武器を言語化し,実績を重ね,他者への理解を諦めず,地道なコミュニケーションを続けることで生まれる「化学反応」である.
他者の研究内容を聞く際には,「自分は彼らと化学反応を起こせるか」と常に考えていきたい.
運は落ちる場所にいる者にしか舞い降りない
指導教官に雇っていただくシステムであるアメリカの研究室では,プロジェクトに研究費がついてることが多く,指導教官からプロジェクトにアサインされ,その責任とともにプロジェクトを発展させることが求められる.
自分で選択したとはいえ,前任者や分野での蓄積の有無など自分ではコントロールできないことに加え,プロジェクトを進めていく過程で「その仮説がうまくいくかどうかわからない」という不確定性に耐えしのびつつ,合理的な打ち手を考えていかなければならない.
自然科学では避けようのないことではあるが,やはり「運」の要素がある.
そんな時に思い出したいのが,絵心の言葉である.
運が良かったと思えた時は,落ちる場所に準備して待っていた自分を褒めていきたい.
挑戦的集中:FLOW
留学生である自分がアメリカにいてもいい理由は「研究」である.それ以外は「研究」をスムーズに力強く継続するためにレジリエンスを高めるプロセスである.
本当の本当に重要なことに対する集中力をここぞという時に発揮するために,意識して,挑戦的集中への没頭状態である「FLOW」を身につけていきたい.
フロー状態への鍵は「退屈と不安を誤魔化す受動的な夢中から自分だけのオリジナルで能動的な夢中」である.
研究における能動的な夢中は,「この世界の誰も気づいていない真の課題を言語化し,誰も思いつかない自分だけの仮説と検証で,世の中の常識を更新していくこと」であると肝に銘じていきたい.
〇〇という目標は「退屈か」?「不安か」?
「U-20日本代表に勝つ」の部分を,今の白鳥をフロー状態に導く「明確で身の丈に合った目標」に置き換えて,自分自身に問いていきたい.
自分の挑戦を自分で見つけ,自信をアップデートしていくことも以下の絵心の言葉をともに忘れてはならない.
「現実的に可能」と「理想的にやりたい」が交わるギリギリを狙え
プロジェクトには様々な制約が付きものである.
限られた時間や資源の中で,自分の能力の限界を出すことを求められ,あらゆる可能性に途方に暮れてしまうことがある.
そんな時に思い出したいのが,糸師冴のこの言葉.
研究においても,自分の理想と現実が交差するギリギリを狙うことで,自分の中での最高のパブリッシュを想像していきたい.インスピレーションを止めるな.
ストライカー(First Author)とはその全責任を負い最後まで戦う人間
自分の博士論文を充実させるためには,第一著者(First Author)の論文をパブリッシュする必要がある.
執筆・査読段階では「神は細部に宿る」と唱えながら,パブリッシュされる最後の1秒まで論文にまつわるあらゆる責任を負い,対応せねば(戦わなければ)ならない.それがFirst Author(ストライカー)であることを肝に銘じていきたい.
理想の自分はなんて言うか?
あらゆる思考と経験の末に「ありうる理想の自己像」が見えてくる.
プロフェッショナルは「自分の理想像との対話」を欠かさない.いくつか例を挙げたい.
理想の自分を明確にもち,「弱音を吐いたり怖気付いたり自信を失いそうな瞬間」に「理想の白鳥ならなんて言うか」を問いていきたい.
留学生としての主人公感
アメリカには様々な国からの留学生がいる.日本人が白鳥1人なんてことも多い.
その意味で,一人ひとりが国を代表しているし,日本人の先達が積み重ねてきたモノの延長線上に今の自分がいると思うと身が引き締まる.
そういった使命感のようなものが留学生としての「主人公感」であり,それを信じて,何かを成そうと自分を突き動かしていきたい.
自分のコトをワクワクさせる
好奇心はサイエンスに不可欠である.
ありとあらゆるしがらみを取り払ったとき,最後に自分を突き動かすのは,やはり「これまじでどうなってんの?」という好奇心である.
さらに,「自分ならできるかもしれない」という期待(ワンチャン)を掛け合わせることで,自分をより強く突き動かしていきたい.
立ちはだかる壁こそが喜び
白鳥の大学院留学におけるマントラは「楽な道を選ぶためにアメリカに来たわけじゃねぇ」である.
いつも思いだす他の言葉に,ケネディ大統領が1962年に我が母校Rice Universityでした有名なスピーチの一節がある.
自分の前に立ちはだかる壁はお金を払ってでも欲しい「喜び」と心得ていきたい.
結果として示なきゃストライカーとしては無能
どんなに凄い発想を持っていても,論文をパブリッシュして,この世界に科学の言葉で表現できなきゃ,証明できなきゃ,Ph.D.は得られない.
絵心が言うように,ゴール(パブリッシュ)を量産するストライカーとしての才能は,自分の能力を証明することであると心得ていきたい.
眼の前の届きそうな目標だけは誰かと比べちゃいけない
海外Ph.D.生活の長い年月において,誰かと自分を比べないというのは大変難しい.
「負けてられない」と多少は奮えても,動かしようのない現実を前に「どうして俺は」とネガティブになってしまうことがある.
そんなときに,自分の届きそうな,自分なりの目標は誰かと比べてはいけないし,比べようがないということを思い出したい.
自己独創性(オリジナリティ)とは飢餓(ハングリー)
心の底から本当に自分が知りたいと飢えていることこそが研究の独創性,そして「自分が何者になりたいか」につながっていく.
長いようで短いPh.D.学生の間では,自分を何者であると定義することは難しいかもしれないが,自分の研究関心だけでなく,日常生活や人生においても,「お前は何に飢えているか?」を常に自問していきたい.
具体的に”世界一”(Ph.D.)を思い描ける
よくPh.D.は自分の研究テーマについては”世界一”であるべきと言われる.
その漠然としたものを,パブリッシュを目指すストライカーとしてどんな風に研究室で立ち回りすればいいのかとか,限られたリソースの中でどう研究を進めればいいのかとか,指導教官ならこうするイメージとか,具体的に思い描けるように努めていきたい.
潔が言うように,それが白鳥の”自己独創性”で,白鳥の人生が渇望する白鳥の”飢餓”となるのだから.
肩書きもプライドも捨てろ
研究室の中で先輩になってくると,わからないことや理解できないことを素直に聞きづらくなってくるように感じる.
それは他人からバカだと思われたくないという気持ちからだ.
変に気負うことなく肩書きもプライドも捨てて,素直になって勉強することが大切だ.
不自由に感謝を
白鳥は人生のポリシーの一つとして「コンフォートゾーンはできれば抜けておく」というものを掲げている.
心のどこかで不自由を望んでいるかもしれない.
例えば,米国大学院生としての白鳥は言語の不自由や知識の不自由をいくばくながら感じている.
これらの不自由を克服することが今の白鳥をかりたて成長を促すと信じて,以下のカイザーの言葉を思い出しながら不自由に感謝していきたい.
おわりに
白鳥の人生は様々な漫画やアニメから影響を受け,様々な局面で精神的に支えられている.そう感じるたびに日本に生まれて本当に良かったと思う.
論文を読んでいて「自分のために書かれたかのような一文」を見つけた時のように,漫画の一コマが自分の曖昧な心の状態に輪郭を与えることがある.
漫画ブルーロックは,自分の経験をわざわざ引っ張り出してきて,「心得ておきたい」ことや「肝に銘じておきたい」ことを言語化して,公開しておく価値があると信じている.
ここでまとめあげたブルーロックからの教訓集が,ひょっとして弱ってる?将来の白鳥へのメッセージとなり,同じ志を持つ人たちの心に火をつける一助となれば光栄である.
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