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四賤業

4、5年前、あるセミナーでの講師の話を思い出しました。
以下、その要旨です。

昔は四賤業と呼ばれてる職業がありました。
賤とは「いやしい」との意。

その4つの職業とは、
・金融屋
・株屋
・保険屋
・不動産屋
だそうです。

「~屋さん」ではなく、単に「~屋」だけだと「蔑み感」がありますね。
特に上記4つに関しては。
「金融屋のくせに」
「おい、株屋!」
「おたく不動産屋?」
とか、名前を呼び捨てされた感じです。
この語尾に「さん」が付くと全然感じが違いますし、普通「金融屋さんのくせに」とは言いません。

また、最近はそれらの呼び名も変わり、一般に以下で呼ばれます。
金融屋⇒金融機関
株屋⇒証券会社
保険屋⇒保険会社

ところが、不動産屋は相変わらず不動産屋。

さらに、最近では名刺の肩書に横文字も増え、イメージアップしています。
金融機関⇒ファイナンシャルアドバイザー
証券会社⇒ファンドマネージャー
保険会社⇒インシュアランスプランナー

ところが、不動産屋はこれといって思い付きません。

結論として、地面師詐欺などの世を騒がせる事件も未だに多く、不動産業は世間的に立派な職業としてなかなか認められにくい状況になっているのではないか、そしてそれが相変わらず「不動産屋」と呼ばれる原因では、とコメントしていました。

そう言えば、約30年前、私がこの業界に転職した時に親戚から「不動産業?それってやくざでしょ?」と言われた記憶があります。
今はその時と比べて少しはイメージが良くなったでしょうか。

ところで、アメリカでは、不動産屋=リアルター、営業マン=セールスエージェントと呼ばれ、弁護士と同等の地位にあるそうです。
えらい違いですね。
また、アメリカでは、物件の過去の取引事例や修繕履歴など、ほぼすべてにおいてディスクローズ(開示)されていて、誰もがネットで閲覧できます。
日本では一般に開示されているのは登記情報くらいです。
さらに言うと、日本の場合はまだまだ実務がアナログ的です。
未だにFAXでのやり取りが見られますし、ハンコ主義も未だに主役で、取引に関してもまだデジタル化に着手して間もないです。
なので、データを残さずに抜け道から逃れる方法がまだまだあるのだと思います。

ただ、不動産屋は他の3つと違って良いところもあります。
それは「現物資産」を扱うのだということ。
なので、実際に見て、触れて、買ったり借りたりの判断が可能なのです。
他の3つの取り扱いは金融商品です。
悪く言えば人間の造り出した「虚構」ですよね。
実体がありません。
‟モノ”を売ってません。
何も無いところから創造した商品を編み出しお金を儲けているのです。
そして取引はほぼネットの中で終結します。
これは「実業」でしょうか。

また、不動産屋は必ず対面(オンラインを含む)で重要事項説明をしなければなりません。
あと、現地での内見があり、不動産屋が案内します。
そういった人同士が触れ合う機会が不動産屋にはあるのです。
ネット内で取引のすべてが終結することはありません。
モノがあり、関わる人がいる。
そう考えると何となくですが、人やモノが見える分、不動産屋の方がより「実業」に思えませんか。
まぁ、そもそも他の3つと比べること自体がナンセンスですけど。

さて、最近政治の裏金問題が騒がしいですが、彼らに比べれば不動産屋の賤しさなど屁でもありませんね。
これからは、「壱賤業=政治屋」とでも呼びましょうか。
ホント、嘆かわしい限りです。