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浦島太郎を考察する

お金が貯まったら日本全国旅行してみたい。
最近はそんな漠然とした夢に想いを馳せながら日本の文化を学んでいる。
そんな中、福井県の若狭という地域を見つけた。北陸についての知識はない。
どうやら古くから都への街道が発達し、食材や物資を運んでいた地域らしい。
最短ルートとして峠を越える道があるらしく「針畑峠」と呼ばれている。
写真で見る限り、神聖な森のようなイメージである。
ここには兄弟神である海彦・山彦の伝説が残っているとのこと。
”伝説”という言葉に強く惹かれる。自分も気持ちはまだまだ少年だ。
とりあえず海彦・山彦について調べてみることにした。

海と山の伝説

峠を越えた山彦が若狭に鎮座し、街道沿いの神社に奉られているらしい。
しかしながら、この兄弟神を調べていると別の話がよく出てくる。
そちらの話の方が興味深いので、きっかけをくれた若狭とはここでお別れだ。
諸説はあるものの、要するにこういう話が言い伝えられている。

昔、海彦と山彦という兄弟がいた。
海で魚を獲って暮らす兄・海彦。山で獣を狩って暮らす弟・山彦。
お互いの道具(釣り針と弓矢)を交換してみるものの、上手くいかず…
元に戻そうとするが、山彦は兄から受け取った釣り針を無くしてしまう。
浜辺で落ち込む山彦。その姿を見ていた潮の神。
潮の神は可哀想に思い、山彦を海の宮殿へと招待する。
彼は宮殿で海の神の姫と恋に落ち、3年もの間、幸せに暮らした。
宮殿の人たちのおかげで無くした釣り針も見つけることができた。
しかし、山彦は海彦がまだ怒っているのではないかと躊躇している。
心配した海の神と姫は山彦にお土産を渡す。
「潮満玉」と「潮乾玉」という満潮と干潮を操作できる宝玉。
もし海彦がまだ怒っていたら、これを使って懲らしめろとのこと。
浜辺に帰ってから海彦に釣り針を返したものの、許してくれず。
山彦は宝玉を使って兄を懲らしめましたとさ。

まんが日本昔ばなし「海彦と山彦」参照

現代と伝説の関係性

上記の話を聞いてどう思うだろうか。私はこう思った。
「海界隈の思想危ないだろ」
いろいろ調べてみたが、結局海彦が懲らしめられる。
山彦と仲良くなったからといって海彦を懲らしめるのは違う。
そもそも借りた物を無くしているのは山彦なわけだし…
都合の良い部分を切り取って叩く海界隈。危険な第三者視点。
この話にまつわる文献を全て読んだ訳ではないので、多少の話の相違はあるだろうが、なんだか不思議な話である。事実の異なる部分があれば誰か教えてほしい。

そして、この話を読んだ日本人なら必ず思うことがあるはずだ。
なんだか浦島太郎と似ていないか?
海で長い年月を過ごしてしまうとか、海の姫とか、お土産をもらうとか…
一説によると、時代を越えて形を変えて「浦島太郎」になったとも言われている。
浦島太郎は誰でも幼い頃に通っている義務教育のようなものだ。
改めて考えてみると面白い話だと思う。

現代社会における浦島太郎の教え

日本の有名な昔ばなしには教訓のようなものが込められている。
良い行いの人が幸せになって、悪い行いの人が苦しむ。
多くの昔ばなしはこうした教訓を子どもたちに与えている。
浦島太郎には主役と対照的な性格の敵役はいない。
最終的には主役を反面教師として、「約束を守らないこと」の重大さを子どもたちに知らしめる。浦島太郎は理想とすべき人格の持ち主ではないことがわかる。
一般的に言われている浦島太郎という話の教訓は二つ。
①良いことをすると自分に返ってくる。(亀を助けて竜宮城へ)
②約束を守らないとその報いを受ける。(玉手箱を開けて老化)

当たり前のように受け取ってきた教訓。今では他の教訓も見えてくる。
私は今改めて考えると、これらの教訓が頭に浮かぶ。
①良い話には裏がある。
②知らない団体に深く関わってはいけない。
③知らない物を所持してはいけない。
この三つの教訓こそ、よりリアルかつ人生に適しているかと思う。
浦島太郎から時間を搾取したのは紛れもなく竜宮城のメンバーだ。
そしてこの三つを考えなかった浦島太郎の過ちが招いた結果だ。
この話の亀は、もはや美人局か歓楽街のキャッチみたいなものだ。
亀を助けただけで終わっていたら浦島太郎の評価ももっと上がっていただろう。
結局は欲望に負けてしまう弱い人間であることを証明してしまった。

今の世の中だったら、お土産がヤバいだの、最初に聞いていた料金と違うだの散々SNSに書き込まれて、竜宮城はすぐ経営状況に影響が出る。
浜辺にいた子どもたちは亀には見向きもせず、家でオンラインゲーム三昧。
アンチエイジング医療の発展で浦島太郎は玉手箱効果なし。
乙姫様は竜宮城の給料を推しの魚に貢いだりと。

こんなありもしないことを想像している暇があるなら金貯めて旅行にでも行けという話だ。せっかく調べたから若狭にでも行こう。
怠惰な人間は浦島太郎と一緒。若さなんてあっという間だから。

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