オンラインワークショップをデザインする時のポイント
以前からオンラインワークショップは実施されていたものの、現在の状況からオンラインイベントが一気に増え始め、それに伴いオンラインワークショップの実施も増えていると見聞きしています。
私自身も必要に迫られて企業内で実施しているワークショップや、一般向けのワークショップイベントがオンライン化して実施しています。
その中で先日開催したオンラインワークショップのふりかえり記事が以下になりますので、ご参考までにどうぞ。
ここ数週間で実施・参加した場から気づいた、オンラインワークショップをつくる上で念頭に置いておいた方がよいことをいくつか共有させてもらえればと思います。
オンラインでしかできないことをデザインする
これはオンラインミーティングも同様なのですが、どうしても「オフラインの場をオンラインで代替する」という思考になっているように思います。
既存の体験をもとに考えるので、それは致し方がないところではあるのですが、オフラインの体験をオンラインで実現しようとすると劣化版になってしまうことがほとんどです。
(それだけオフラインの体験の印象が強いということですね)
オフラインの代替ではなく、「オンラインだからこそ得られる体験」にフォーカスしたプログラムをデザインすることで、参加者の体験はとても豊かなものになり得ますし、その新しい体験から見えてくるオンラインの価値もあるかと思います。
例えば、zoomのブレイクアウトルームの密室感、miroを使った複数人の同時編集(表示)などはオンラインならではの体験であり、ある意味ではエンターテイメント性を持っているのではないかと考えています。
↑ワークショップ中のmiroの画面(動画)
例えば以下のようなオンラインでしか得られない体験があります。
・映像/音声とテキストを併用するコミュニケーション
・リアルタイムに同時編集できるツールで一緒に作りあげる
・場所や距離を選ばずに参加できる
・エフェクトやアバターを使った仮想空間での参加(Snap Camera等)
・ブレイクアウトルームという少人数での閉じた空間での対話(zoom)
このような体験にフォーカスして考えることで、オフラインでは実現できなかったワークショップが実現できるかもしれませんし、オンラインワークショップはそういった方向を目指した方が、より楽しむことができるのではないかと考えています。
そう考えることで「オンラインでの制約」が「オンラインならではの体験」として捉えることができるかもしれません。
ツールに依存する、場のデザイン
オンラインにおけるコミュニケーションはどうしても利用するツールに依存する部分が大きいです。ですが、ワークショップのデザインをツールの機能・仕様に縛られないように留意する必要があるとも考えています。
ツールの機能や仕様に合わせるのではなく、ワークショップの中で実現したいことに適切なツールを使い分けること、逆に言えばツールの機能や仕様から「できることを」考えないようにすることが大切です。
例えば先日開催したEthical UX Workshopでは、当初50人弱の参加者が見込まれていましたので、そのワークの様子を可視化、アーカイブ化する目的でmiroのボードに以下のようなワークシートを用意しました。
↑Ethical UX Workshopで使用したmiroのボード
ボードの上から順に、
・事前課題の書き出し
・チェックイン(4マス自己紹介)
・ワーク1〜3
をそれぞれ、グループごとにワークできるエリアを設けておき、順番に取り組んでいきました。
(このグループはzoomのブレイクアウトルームのグループNoと連動させています)
このオンラインワークショップでは、個人ワークとグループワーク主体であったのですが、後半やイベント後に他の人やグループがどんなアウトプットを行ったかを確認できるようにしています。
ワークショップのプログラムでも、他のグループのアウトプットを眺めて、コメントを付ける時間を取りました。
これも「参加者同士が一緒に取り組める」「後で他の人やグループのアウトプットを見たい」という点から発想したアイデアでした。
この場合、発想の起点はツールではなく、「どのような体験を実現したいか」が起点で、それを実現するためにツールの機能を利用しました。
ワークショップの前後もデザインする
これはオフラインのワークショップも同様ですが、ワークショップだけではなく、その前後もデザインすることがワークショップの成果を高めることにつながります。
ワークショップの前のデザイン
ワークショップの前のデザインとしては、例えば「事前課題」があります。
ワークショップで取り組む準備としての事前課題や、反転学習としての事前動画の視聴があるでしょう。
また、ワークショップ直前の時間や冒頭の時間を使って、参加者全員で取り組む課題やアイスブレイクがあるとその後のワークに入りやすくなります。
オンラインの場合、最初の導入部分のハードルがオフライン以上に高くなりますので、例えばビデオチャットならではの発言する時のアクション(手振り身振り)や、他の人が発言した時のアクション(うなづきやハンドアクション)の練習をしてもいいかもしれませんね。
また、「ワークショップの前」ということであれば、ワークショップで使うツールをどのように参加者に導入してもらうか、という点についても検討しておく必要があります。
URL一つで共有できるものもあれば、事前にアプリのインストールが必要なツールもあります。
zoomも初回はアプリのインストールを促されますし、miroやSlackについては事前登録が必要となりますので、その点についての案内も必要でしょう。
(miroの利用には事前登録とホスト側の承認が必要です)
ワークショップの後のデザイン
これは正確に言うと「ワークショップ後に続くデザイン」なのかもしれませせん。
ワークショップで行った体験をその後に続けるため、グループごとのふりかえりの時間を確保したり、コミュニケーションできる方法を示したり。
また、個々人でふりかえりができるようにふりかえりの手法やツールを用意しておくことを想定しています。
このワークショップ前後をデザインすることで、ワークショップの時間内で取り組むことをさらにフォーカスして考えることができるかと思われます。
「参加者がリアルタイムに一緒に取り組むことは何か」、その時間を十二分に生かすためにはどのような問いや仕掛けが有効なのかを考えます。
運営体制をデザインする
ファシリテーター以外に少なくとも1〜2人の運営メンバーが必要と考えていますが、その運営メンバーの役割や振る舞い、コミュニケーション方法についてもデザインしていく必要があります。
ツールが増えてしまうのですが、SlackやDiscordのようなツールを用意しておくことで参加者の様子の把握や柔軟な対応が可能になります。
(Discordはzoomとの使い分けが混乱しそうですが、音声での連絡の方が早い場合がありますので、うまく使い分けできればと考えています)
ツールを駆使して、事前準備しておけばファシリテーター1人でもがんばることできるかもしれないのですが、オンラインの場はより一方通行になりがちなので、複数人の運営メンバーがいて、そのやりとりの様子(掛け合い的な)を参加者に見せることで参加しやすい場がつくられていくとも考えています。
チャットでワークショップを実況する
ワークショップの最中に「いま何が話されているのか、何をする時間なのか」がわからなくなってしまうことがあるかと思われます。
進行用のスライドがあるものの、オンラインでのコミュニケーションでは音声とテキストを併用することができますので、テキストチャットを使ってその場の様子を実況中継したり、発話しづらい時にテキストで質問をもらってそれに答えることで参加者をフォローすることができます。
オンラインワークショップのタイムテーブルでは、以下のようにシーンごとにテキストチャットに投稿するテキストを事前に用意しておき、チャット担当はこれを参照しながら投稿していきます。
↑ワークショップのタイムテーブル
運営メンバー間でのやり取りで注意すること
運営メンバー間のワークショップ中のやり取りをSlackやメッセンジャーで行っていることは多いのではないかと思いますが、その時の注意としては、通知音を切っておく(ミュートにする)か、zoomをミュートにしておくことです。どちらも気になる通知音ですからね。
私はワークショップのプログラムをDropbox Paperで作成して、運営メンバーと共有しているので、そこでコメントのやり取りをしてしまうこともあります。
今後もアップデートしていきます
このnoteに記載した内容は2020年3月17日時点の内容ですので、ここに記載しているポイントは今後も適時アップデートしていきます。
(2020年6月7日に一部追記しました)
読んでいただいた皆さんの参考になればと思いつつ、皆さんの実施・参加してみての気づきや学びも教えてもらえると嬉しいです。
またオンラインワークショップについての疑問や質問について回答したnoteも参考までに置いておきます。