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ここ数日を含む出来事

報道があったように、我が師匠雀々が11月20日深夜にあの世へ旅立ちました。
残念ながら立ち会えなかったのですが、臨終の様子を伺うと師匠らしく最後まで人を笑かして安らかな旅立ちだったようです。
享年64歳、私が師匠の弟子になり15年と7ヶ月と20日長いようでやっぱり短い時間でした。

今年に入り身体のあちこちから不調を訴え、春先は声の張りもなくなった期間もあり
「師匠はこれから枯れていくのか?」
「片棒のパロディとボカして遺言など聞いておいた方がいいか?」
と思った時もありましたが、夏前には声の張りも戻り
「まだまだ私や皆さんが思ってる桂雀々!!!!!」
と言うところまで戻ってきましたが、病魔はどうやら身体を着実に蝕み続けていたようで先月倒れ再び入院。
一時は集中治療室に入るくらい危なかったですが、再び復活。
一般病棟に移りリハビリを始め、転院場所をどこにするか相談できるくらいまで回復。
11月1日、このご時世には珍しい公衆電話から電話があり出たら師匠でした。
スマホのパスワードを間違いロックがかかってしまい病院の公衆電話から連絡したそう。
仕事の事、病院の事、倒れた時の事など色々話して下さり通話時間は30分近く。
元気そうな声の様子に安心したと同時に、
「公衆電話で30分話すって10円玉どんだけ準備しとったんや。」
思わず突っ込みを入れたくなるくらいでした。

翌日、翌々日も連絡があり、出れない時は留守電が入っていたので、
「師匠、まだまだ大丈夫やな。今年末には復帰やろ。」
と思っていたら再び倒れる。
面会に伺うと少し痩せたけど、顔色もしっかりして問題ないかと思っていたらお医者さんの説明はそうではなく。
そこから時間を作り何度も面会に伺う。
意識がはっきりしているが呼吸器をつけてるので、上手く話せず。
なんとかこちらが汲み取って話をする。
「足が痛い。」
「喉が渇いた。」
そして、
「いつになったら退院できる?」
この言葉を聞くのが本当に辛かった。

親族しか面会ができない中、
その願いは叶わずに20日深夜志し半ばで亡くなりました。

20日の午前中から葬儀場に向かいご対面。
本当にただ寝ておられる様で今にも起きて、
「おう!きたか!」
と言う声が容易に想像できる寝姿でした。
少し前歯が見え口角も上がっており、笑っているようないつものお顔。
ただ触れてみると冷たく、覚悟はしていたが病気が治ると言う奇跡を最後まで信じていたので、亡くなったと言う現実を受け止めるしかなくただただ涙が溢れるばかり。
無念で仕方がない。

師匠の奥さん、マネージャーさんとこれからの対応を決め、枝雀一門とごく数名の関係者のみ連絡をし、私とマネージャーさんは師匠の衣装や棺の中に入れるものを探しにご自宅へ。
何度か伺った師匠のマンションは、家主不在のため時が止まったまま。
衣装を決め棺の中に入れるものを探していると引き出しから師匠が使っていた私も見覚えのある数珠。
マネージャーさんが
「せっかくだからそれ持って行ってあなたが使えば。」
師匠その方が喜ぶかと思い荷物を持って家を後にする。

翌21日
朝から再び葬儀場につめる。
混乱を防ぐため師匠が亡くなった事がごく一部の方以外は伏せておこうと決めたはずが、どこからか情報が流れている。
せめて葬儀が終わるまではと願うも22日深夜1時ついにネットニュースになってします。
ここでも無念と力を落としてしまう。

どこからもれたか犯人捜ししても仕方がない。
とりあえず滞りなくお葬式を終える事を念頭に朝を迎えた。

会場につき黒紋付に着替えお出迎えをし、お経に耳を傾けご焼香、不肖ながら唯一の弟子なので一言話もさしてもらった。
途中、喪主の長男さんが泣いてるのを見て、私ももらい泣き。
出棺前に一昨日ご自宅から選別してきた遺品をいれ、花をつめる。
ここでも途中から涙が止まらない。
最後に3房の花を入れ、その後は棺の蓋を閉める。
蓋を閉めたら最後、もう師匠の顔を見る事はできない。
最後の三房の花を奥さん、長男さん、私に渡された。
もうボロボロだったので思わず、
「耐えられない。」
と言ったら奥さんが
「耐えなあかんのやで。」
と励まして下さり最後の花を三人で入れた。
改めて言う、棺の蓋が閉まればもう師匠の顔を見る事はできない。
ご列席の皆様で棺桶の蓋を足元から閉めていく。
閉まっていく蓋、起きてくれないかと思い、屈みながら最後まで師匠の顔を見ていたが目を開ける事はなかった。
蓋が完全に閉まり合掌。
一昨日師匠の部屋から持ってきた数珠を手にかけた瞬間、なんと数珠の紐が切れ散乱した。
引っ張たり、どこかに引っ掛けたりもしていない、本当に優しく手にかけただけ。
「うわっ!」
と声を出す参列者の方もいれば、ただ息をのみ静観する方、中には瞬時に拾って下さる方も。

超常現象とか心霊現象を信用しないで生きてきた私にとっては衝撃、けど師匠からのメッセージかな。
「俺はここにいるで!」
なのか、
「泣いてんとしっかりせい!」
なのか、
「勝手に俺の数珠使いやがって!」
なのか。

最後の最後まで人を楽しませてくれる師匠でした。

正式に師匠がなくなった事を公開し、滞りなく火葬まで無事終わり。
ご住職に伺えば数珠が切れたのは縁起の悪い事ではないとのことだったので火葬までご一緒して頂いた方に一つづつお配りしました。
東京まで送って下さる方がおり、奥さん、長男さんと共に同乗させてもらう。
昔話に花が咲き、先ほどまでの涙が嘘のように笑いながら東京まで。

奥さん、長男さんと品川駅でおり、しばらく師匠の事を話さない方がいいだろうかと相談すると、
「何を言うてんの!優々兄ちゃんが唯一の弟子なんやからあんたが積極的に言わんでどうするの!今日もドラマみたいな事があったんやから、しっかり発信していき!それが一番師匠が喜ぶ事やから。」
そうですよね、師匠。
芸人やから発信していかないとダメですよね。

けど、とりあえず今日はここまで!

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