【かつらのお話:かつら師の七ツ道具⑥】
【目打ち】
【目打ち】は、地金の象りの線引きや、部品の印付け、補修のめくり、毛の押さえと色々活躍してくれます。
こんにちは。京都時代劇かつらです。
かつら師の道具ご紹介六回目。
今回は【目打ち】です。
キリや千枚通しを使う人もおりますが、私は専らこの【仕立て目打ち】を使っています。
レザークラフトや裁縫をされている方ならお馴染みの道具ですね。
なぜ、この【仕立て目打ち】を使っているのかと言えば、それはもちろん使いやすさの一言です。
キリですと角があるため、地金の象り時に角で削って型を減らしてしまいますし
千枚通しは長さがあるため、鬘内の補修で邪魔になってしまうのです。
ですので、この【仕立て目打ち】が一番使いやすく重宝しています。
国産品で材料も作りも良く、先端が曲がったり欠けたりも全くせず素晴らしい一品です。
この【目打ち】は15年程前、近所の金物屋さんで購入しました。
それまで使っていた数々のキリや千枚通しはどうも使い難く、しっかりした自分好みの【目打ち】を探すべく沢山のホームセンターや道具店を巡りました。
ですがなかなか見つかりません。
諦め掛けたそんな時、ふっと入った小さな金物屋さんの片隅に、これはそっと並べてありました。
一目見て、「ああ、これだ!」と思い即購入。
金物屋の女将さんは、
「ずーっと売れへんと残ってはったんよね~。国産品でとてもしっかりしてはる作りなんやけどね。ホームセンターに安いのようけあるから。」
と、やっと売れて嬉しいような、でもちょっと寂しいような、なにか娘さんをお嫁に出すようなそんな雰囲気でおっしゃっていました。
丈夫で良い作りでも割高な国産品を長く使うより、すぐ潰れても安価な外国製を都度買い換えたらそれでいい。
そんな世の中の流れと、跡継ぎがいないと言うことで、その後この金物屋さんは80年の歴史に幕を降ろしました。
今は駐車場となった、かつての金物屋さんの前を通る度に
「適性な物を適性な価格で」
「良い品をより長く」
「売り手よし、買い手よし、世間よし」
そんな世の中は理想に過ぎないのかなと、ふと思ってしまうのです。
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