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『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』第14巻原作者コメンタリー
『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』第14巻の発売を記念した原作者コメンタリーです。
第13巻のコメンタリーはこちら。
第53話『俺たちの世界の終わり(後編)』
†クラウド†零式と†アンゴルモア†による中二病決戦の後編です。コミックス巻頭のカラーイラストはこのエピソード収録の月刊少年エースに掲載されたもの。「もし慧美が令和の女子中学生だったら」というテーマのカラーイラスト(第12巻口絵)の続編として、横田卓馬先生に「ゲーミング八雲」をテーマに描いていただきました。
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史実では、ツイステッド・ブラックが台頭したのはこのエピソードの時期よりも少しあと、『メルカディアン・マスクス』発売後の環境になります。作中で取りあつかうデッキやカードが変わり映えしないとゲーム展開がどれも似通ったものになってしまうため、予定を前倒しして採用しました。
このエピソードを語る上で重要なトピックは、なんと言ってもGLAYの四人の登場でしょう。一年以上前に担当さんを通じてダメもとで所属事務所にオファーしたところ、まさかのOKで『とまどい』ました! 小学生のころから聴いていますとしたためた僕の『pure soul』が届いたのかもしれません!
TERUさんのMCは『GLAY EXPO'99 SURVIVAL』での実際の発言をそのまま引用しています。DVDをお持ちのかたは確認してみてください。
第54話『俺たちの世界は終わらない』
全九話、休載や分割掲載を挟んで一年がかりで描いた7.31終末編のクライマックスにあたる回です。そんなタイミングで担当さんが新型コロナウイルスに感染してしまい、横田先生とふたりであれこれ相談した記憶がありますね。
神納一駆のキャラクター造形は、『シング・ストリート 未来へのうた』という映画のあるキャラクターに影響を受けています。連載初期は不良警官にするつもりだったのですが、僕の《精神錯乱》により、いつの間にか少女マンガを愛する天才ハッカーになっていました。
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九十年代はまだカリスマ的なロックスターがいた時代で、僕が資料目的一割趣味九割で集めている当時のファッション雑誌でも、清春さんを筆頭に、不良性の強いロックミュージシャンがたびたび特集されているんですよね。一駆にはそんな時代への憧憬をこめました。この作品は横田先生との共著なのであまり僕の思想を持ちこまないようにしているのですが、一駆の台詞においてのみ自分にそれを許しています。
一駆を7.31終末編のキーマンとして登場させること、そしてその名前の元ネタ(『マジック:ザ・ギャザリング』に通じている人にはわかると思います)は、僕的には小粋なサプライズのつもりでした。お気に入りのキャラクターのひとりです。
第55話『俺たちの再出発』
このエピソードから世界選手権99編に突入します、と見せかけてラブコメに振りきった水着回です。それもこれも、ひとえに「最終回までにヒロインを全員水着にした」という実績を解除するためです。ついでだから、本編では僕がんほってる人妻(理慧)にも水着になってもらいました。
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コミックスのカバーイラストにも描かれている『ゲームぎゃざ』は、前身の『RPGマガジン』がより『マジック:ザ・ギャザリング』に比重を置いた誌面にリニューアルするかたちで創刊しました。毎号表紙を飾っていた田中久仁彦さんの「ぎゃざガール」がいまでも愛されていますね。僕は当時思春期だったので、レジに持っていくのが恥ずかしかったです。そんなやつがいまでは美少女が表紙を飾るマンガの原作を書いているという事実!
初登場の少し前に書いたキャラクター設定によると、当初、沢渡享平はトーキング・ヘッズのデヴィッド・バーン(主にこの時代)や和山やま先生の作品に出てくる眼鏡男子のようなビジュアルをイメージしていたようです。損な役まわりをあたえてしまいましたが、彼を父親として不適格な人物に描いているつもりはございません。この話を掘り下げると、「でもおまえ子育てしたことないじゃん」と、マンガ家は経験したことしか書けない論法でつっこまれそうなので、やめておきます。
こぼれ話
この巻で本作は「1999年7の月」という重要なメルクマールを越えました。ミシェル・ノストラダムスの『百詩篇』(ノストラダムスの大予言)をあつかった物語は古今東西たくさんありますが、オチらしいオチをつけた作品はさほど多くないと思います。「そして俺たちは、1999年8の月を迎えた」というモノローグを書いたときは脳汁ドバドバでした。
企画段階から連載初期にかけては、ここまで大々的に「1999年7の月」を描くつもりはありませんでした。物語を盛り上げるスパイス程度の認識でいいだろう、と。ですが巻数が増えるにつれて読者のみなさまの期待値が上がり、単なるスパイスでは許されない雰囲気になってしまいました。つまり、人工衛星を墜落させたのも、カルト集団に暴動を起こさせたのも、あなたたちなんですよ! リアリティラインを考えろって? 『マジック:ザ・ギャザリング』をやっている女の子がいっぱい出てくる時点で、この作品にそんなものは存在しないも同然です。
冗談はさておき、読者のみなさまのあと押しを受けて、そして歴代の担当さんと横田先生の手を借りて、自分でも当初想像しえなかった物語を書けたことを誇らしく思います。ただし、物語はまだおわっていません。
はじめ、慧美、八雲、ルー、久遠。それ以外のキャラクターについても、これからどうなるか気にされている読者のかたも多くいらっしゃるでしょう。次巻以降はそのへんの疑問も解消しつつ、『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』というタイトルの意味に迫っていくつもりです。
今後とも変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。
ギリギリ年内にこの原作者コメンタリーを書きおえることができてほっとしています。
次巻はいよいよ第15巻。『幽☆遊☆白書』で次元刀が出てきたあたりまで漕ぎつけたと思うと勇気とPOWERが湧いてきますし、Netflixの実写版も許せる気がしてきますね。
ではみなさま、よいお年を!