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『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』第17巻原作者コメンタリー
『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』第17巻の発売を記念した原作者コメンタリーです。
第16巻のコメンタリーはこちら。
第64話『俺たちの悲劇』
劇場版『名探偵コナン』みたいなことがやりたかった回です。冒頭で来島が使っているデッキはライジングウォーター。《水位の上昇》をキーカードにしたロックデッキです。
千年大祝祭予選ラウンドのスタンダードの部では、チップ獲得数ランキングで「ジャン・フィンケル」という人物の名前が出てきます。こちらはジョン・フィンケルという実在の伝説的なプレイヤーをもじったもので、同じくチップ獲得数ランキングに名前が出てくる「金子真実」は本作を監修してくださっているウィザーズ・オブ・ザ・コーストの社員さんです。いわゆる内輪ネタですね。
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土岐歩夢は不良然とした一駆と対になるイメージでキャラクターデザインをしてもらいました。第63話とこのエピソードでこいつが語っている犯行動機はぜんぶ出まかせなので、読み飛ばしてもかまいません。インクのしみだとでも思っておいてください。
「ゴロワーズを吸ったことはあるかい?」という一駆の台詞はかまやつひろしの楽曲『ゴロワーズを吸ったことがあるかい』から。
芙有楽ツインタワーは《秩序の尖塔、プラーフ》から名前をつけました。
第65話『俺たちの不協和』
ルーがはじめのスタンドと化す回です。コミックス巻頭のカラーイラストはこのエピソード収録の月刊少年エースに掲載されたもので、いくつかの要素を横田卓馬先生に提案して、「もしもルーが令和の女子中学生だったら」というテーマで描いてもらいました。Y2Kファッションのルーが久遠にそっくりな猫に話しかけている、という図ですね。
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パララクス補充はインベイジョン・ブロックがスタンダードで使用可能になるまで長らくメタの中心に居座りつづけたデッキです。本作での対戦の流れを決める上では、《パララクスの波》と《パララクスの潮流》による擬似全体除去はもとより、《退去の印章》と《浄化の印章》も悩みの種でした(はじめに自衛策がないため)。プレイングも複雑で、監修からの指摘をもとに修正を重ねているうちにどれほどスケジュールを圧迫されたことか……。「好きなデッキはパララクス補充です」っていう人とはちょっと仲よくなれそうにありません。
豆知識として、はじめが攻撃クリーチャーを指定する際の台詞には、「葬り去れ、《ファイレクシアの抹殺者》!」のように、いくつかのカードにおいて決まり文句が存在します。ひまな人は探してみてください。
第66話『俺たちの協和』
千年大祝祭予選ラウンド最後のエピソードです。赤坂泰彦風のジャッジが紹介しているエクステンデッド部門優勝予想ランキングには、第64話のジャン・フィンケル同様、実在の伝説的なプレイヤーをもじった名前が複数出てきます。
このエピソードでの久遠の内面の変化は、一読しただけでは追うのが難しいかもしれません。あえて説明を省略しました。そもそも人間の感情なんて一本道ではなく、整合性がとれないのがふつうですし、くどくどと説明するよりはライブ感を重視したかったので。とはいえ、最終巻収録のエピソードで若干の補足を入れるつもりです。
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三郷記念病院は《軍の要塞、サンホーム》から名前をつけました。
幕間のひとコママンガで描かれているチップ計量の様子は『爆笑オンエアバトル』のパロディになっています。
第67話『俺たちの一番長い夜』
本作最後の水着回です。温泉なのに水着とはこれいかに、という感じですが、最終回目前で打ち切りにならないための苦肉の策とご理解ください。扉絵は映画『パルプ・フィクション』のパロディです。
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このエピソードで燐が使用しているデッキはアデプトグリーンと称されるエンチャントレスの一種です。《祖先の仮面》を四積みしており、チーム宗男が拠点にしていたカードショップにちなんでこういうデッキ名になったそうです。
《Proposal》は実物のデザインが公開されていません。このエピソードではそういう一風変わったカードに光をあてたくて、慧美のクイズも往年の珍カードを選択肢にしました。テレビドラマに関するクイズの選択肢はキムタク縛りです。最終回目前で打ち切りにならないためにも、中◯くん縛りにしなくてよかったと心底思います……。
はじめが就寝前にぼけ〜っと観ているテレビ番組は『おネプ!』。監修から東北にはネットしていなかったという指摘を頂戴しましたが、すみません無視させていただきました。令和のコンプライアンス下ではとても放送できないような番組ですので、もし克明に描写していたら、やはり最終回目前で打ち切りになっていたことでしょう。
こぼれ話
この巻のおまけの四コママンガで、本作のネームドキャラクターが出そろいました。お気づきのかたも多いでしょうが、ネームドキャラクターは一部の脇役をのぞいて『マジック:ザ・ギャザリング』のカードにちなんだ名前になっています。
今回はそれらの元ネタをあいうえお順にご紹介しましょう。
阿久井剛(あくい ごう)/《ゴブリンの従僕/Goblin Lackey》
通称ゴブさん。英語名の音の一部をとっています。
大楠主税(おおぐす ちから)/《樫の力/Might of Oaks》
通称社長。英語名と日本語名の一部が混じっています。
神納一駆(かのう いかり)/《神の怒り/Wrath of God》
はじめの兄なので、下の名前に「はじめ」と同じ意味を持つ漢数字の「一」を入れました。
神納はじめ(かのう はじめ)/《カーノファージ/Carnophage》
最初に名前が決まったキャラクターです。
九条希望(くじょう のぞみ)/《ジョークルホープス/Jokulhaups》
赤担当エルダー。下の名前は「haups」と音が同じ「hopes」の日本語変換。異名の「レッドエンジェル」はポケットビスケッツの『Red Angel』が元ネタです。
来島卓(くるしま すぐる)/《ぐるぐる/Twiddle》
青使いにするつもりで「島」という字を苗字に入れました。
沢渡慧美(さわたり えみ)/《サルタリーの使者/Soltari Emissary》
白担当ヒロイン。二番めに名前が決まったキャラクターです。
沢渡享平(さわたり きょうへい)/《サルタリーの強兵/Soltari Trooper》
慧美パパ。下の名前は日本語名の同音異字です。
沢渡理慧(さわたり りえ)/《サルタリーの僧侶/Soltari Priest》
慧美ママ。下の名前は「Priest」のローマ字読みのまんなかをとりました。
渋山いと(しぶやま いと)/《シヴのヘルカイト/Shivan Hellkite》
赤担当ヒロインにするつもりで苗字に「山」を入れ、「のヘルカ」を切り捨てました。
渋山竜夫(しぶやま たつお)/《シヴ山のドラゴン/Shivan Dragon》
通称店長。下の名前は「ドラゴン」だから「竜夫」という安直さ。
白金久遠(しろがね くおん)/《スリヴァーの女王/Sliver Queen》
「Sliver」のつづりが「Silver」とにているので、苗字を「銀」と同じ「しろがね」の読みを持つ「白金」にしました。異名のアンファン・テリブルはジャン・コクトーの『恐るべき子供たち(Les Enfants Terribles)』から。
諏訪原八雲(すわばら やくも)/《ヨーグモスの取り引き/Yawgmoth's Bargain》
黒担当ヒロイン。中性的な名前にしたくて、「ヨーグモスバーゲン→やくもすわげん→八雲諏訪原」と音を入れ替えていきました。
辻央真(つじ おうま)/《逢魔が辻/Haunted Crossroads》
黒担当エルダー。日本語名の「が」を切り捨てて前後を入れ替えています。異名の「黒いブーツ」はSOPHIAの『黒いブーツ ~oh my friend~』が元ネタです。
土岐歩夢(とき あゆむ)/《時限爆弾/Time Bomb》
ノストラダムスの使者。下の名前を音読みすると「ぼむ」になります。
鳥居祐爾(とりい ゆうじ)/《トリスケリオン/Triskelion》
通称トリー。「祐」には「すけ」という読みがあり、「鳥居祐」まではそのまんまですが、「爾」がどこからきたのか、自分でも思い出せません。
二本木楓(にほんぎ かえで)/《基本に帰れ/Back to Basics》
青担当エルダー。日本語名の音の響きだけですね。異名の「青いイナズマ」はSMAPの同名曲が元ネタです。
藤宮彩夏(ふじみや あやか)/《サイカトグ/Psychatog》
「トグ」で「藤宮」、「サイカ」で「彩夏」です。
保野泰然(ほうの たいぜん)/《絶対の法/Absolute Law》
第64話で活躍した警視監。警察の人なので元ネタのカードもそれっぽいものにしました。
牧田師昭(まきた もろあき)/《獅子将マギータ》
白担当エルダー。「獅子将」の音の響きで名前の漢字を決めました。異名のホワイト・ブレスはT.M.Revolutionの『WHITE BREATH』が元ネタです。
湊理咲(みなと りさ)/《リシャーダの港/Rishadan Port》
来島の女。社長同様、日本語名と英語名の音が混じっています。
椋木燐(むくのき りん)/《クラキリン/Krakilin》
緑担当ヒロインにしてエルダー。「椋」は「くら」とも読みます。異名の「碧いうさぎ」は酒井法子の同名曲が元ネタです。
アンシー・トンプソン/《古えの墳墓/Ancient Tomb》
英語名をローマ字読みしてそれっぽくいじりました。
デーモン・ステイシー・デント/《問題児/Disruptive Student》
通称レイモンド。「問題」で「デーモン」、「Student」で「ステイシー・デント」となっています。苦しいですね。外国人の名前を決めるのは毎回苦労しました。
ルー=シャンタル・スカーレット・ジェラール/《知謀の将軍 陸遜/Lu Xun, Scholar General》
青担当ヒロイン。英語名の読みをちょこっといじりました。
ざっとこんなところです。
六年以上も連載をつづけていると、それなりにネームドキャラクターが増えるものですね。個人的には一駆と燐のネーミングが気に入っています。
次巻はいよいよ最終巻。『マジック:ザ・ギャザリング』のプレイヤーのみなさまとの蜜月も、残すところあと数ヶ月となりました。
気負いはありますが、さびしいかと言われるとそうでもなく、いまはとにかく最終巻を最良の一冊にしたい一心です。
最後までおつきあいのほどよろしくお願いします。