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すすしかりけり

毎年恒例、今年の漢字。

清水寺の森貫主が揮毫されたのは、

でした。

漢字一字。

だからこそたくさんのことが伝わってくる。

そんなことを感じたりもします。

ちなみに、清水寺ほど注目されませんが
和歌山県の熊野本宮大社でも同じ時期に
漢字一字を揮毫されています。

ただし、熊野では新年に向けて揮毫されていて
今年は「」(昨年末に揮毫)、来年は「」です。

せっかくなので?自分も選んでみました。

自分にとって、今年の一字は・・・

です。

今年は、自分にとって、どうしても、

火事の後の一年」でした。

1年前に火事を出し、何もない状態でスタート
したのが今年、令和6年でした。

ほんとうに何もない中で困ることも多々あり
そのなかでも切実だったのが、

銀行のキャッシュカードでした。

通帳もキャッシュカードも火事で燃えて
現金が一切、下ろせなかったんです。

幸いにもスマホだけはありましたので
クレジットカードや電子マネーは使えましたがやはり現金がないと困ることもあります。

急ぎ、キャッシュカードを再発行しようと
しましたが、まず身分証明書が必要です。

加えて、郵送してもらうには住居が必要です。

いろいろな条件をクリアして
キャッシュカードが手に入ったのは
火事から1か月以上経過した1月中旬でした。

さっそく、銀行のATMで現金を下ろしました。

その時です。

自分でも不思議なくらい感動したんです。

もちろん、ATMで現金を下ろすことに
感動したことなんて一度もありません。

それが、不思議なくらい、感動するんです。

その時です。

昔、永平寺のお坊さんから道元禅師の歌に
ついて聞いたお話を思い出しました。

春は花
夏、ほととぎす
秋は月
冬、雪さえて
すすしかりけり


この「すすし」というのは「鮮し」であって
新鮮な感動を表しているとのことでした。
(自分はずっと「涼し」だと思ってましたが•••)

春の花夏のほととぎす秋の月冬の雪

それぞれの季節においては当たり前の情景に
対して新鮮な感動を覚えることが大事なんだ。

というお話でした。

銀行のATMでお金を下ろしたときの感動、

これがまさに「鮮(すす)しかりけり」だ!

そんなことを実感しました。

そして、それからです。

ATMに限らず、今までは感動することなんて
なかった場面で、感動を覚えている自分に
気付くようになったのは。

朝起きて、青空が見えれば、すすしかりけり

カフェで朝食を食べても、すすしかりけり

仕事場で仲間に会っても、すすしかりけり

夏の昼、汗だくで歩いても、すすしかりけり

•••

そんな感動が自然と湧き上がってくるんです。

改めて、火事のおかげなんだと思います。

確かに火事で多くのものを失いました。

ただ、こうして1年を振り返ると、

かけがえのない感動と教えをいただけた

そんなことを実感します。

来年も多くの感動があることを祈りつつ
自分にとっての令和6年はこの一字です。

宗慧

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