#日本酒の新サービスブランドを発表するまでvol.2|お酒を小口配送できるようになると、世界はどう変わるのか?
アイディーテンジャパンが運営する「Japanpage:Sake」は、日本酒や焼酎といった日本産のお酒を、小口空輸配送によって届けるECサービスです。国内だけでなく、海外100カ国以上*からの注文を受け付けています。
*Japanpage:Sakeでは、購入目的 / 商品 / 本数 / 仕向国の輸入制度などによって配送方法を使い分けています。海外100カ国以上への配送は、純米のお酒をEMSで個人利用目的で配送する条件の場合の配送可能国です。
お酒を一本という最小単位から、飛行機で海外に届ける。
ありそうでなかったこちらのサービスは、海外で起こっている「日本のお酒が飲みたいのに、手に入れることができない」という課題を解決し、世界中に点在する小さなニーズに応えます。
この記事では、「Japanpage:Sake」の開発にいたった背景と、サービス完成までのプロセスをお話します。
欲しい人がいるのに届かない──酒類輸出が抱える課題
前回の記事「ブランディング事業出身者が日本酒ビジネスに人生を懸けようと決めた理由」でもお話しましたが、日本酒を中心とした日本産酒類の輸出は年々拡大し、世界中にファンが増えてきています。
一方で、イベントや商談会などで気に入ったお酒をいざ買おうと思ったら、実際には現地では購入できないという問題も多数起こっています。
試飲会を開催したのに、配送方法を検証していなかったため、欲しいという人へ送れなかったという事例は少なくありません。現地で輸入を行う事業者からは、試飲会を開催しようとすると、「試飲するだけで購入できないんでしょ」と揶揄されることもあるほどです。
なぜ、そのようなことが起きてしまうのでしょうか。
ひとつは、酒類の海外輸出は主に船便による大口配送でおこなわれること。
配送コストを下げることが主な理由ですが、一度に大量のお酒を取引する必要があるため、知名度があまり高くない酒蔵のお酒の場合、現地の輸入業者や販売業者に「売れ残ったら損をしてしまう」と、契約を渋られてしまうのです。
それなら、見込みのあるレストランや酒販店に直接送ればいいのではないかと思うかもしれません。しかし、レストランや酒販店は輸入のやり方を把握しておらず、輸入事業者や日本の商社に頼っているところがほとんどです。
輸入にまつわる法制度は国によって異なります。アルコールが税関を突破し、現地の流通経路に乗るまでに必要な手続きは煩雑で、専門的な知識が必要となります。
つまり、商社や現地の輸入業者とパートナーシップを結ばないことには、酒類の輸出はとても難しいのです。
また、海外需要が伸びているといっても、日本酒はまだまだ世界では知名度の低いアルコールです。日本での卸値に配送費用が加算されると、現地の販売価格は高額になってしまいます。
「知名度が低い」のに加え、「仕入額が他アルコールと比べて高い」となると、現地レストランや酒販店はなかなか手が出せません。
海外輸出部門などを持つ大手酒造メーカーはまだしも、こうした煩雑な手続きや需給関係のもたらす影響は、地方の小さな酒蔵にとっては大きな負担となります。
人手と資金が足りず、海外輸出を諦める酒蔵は少なくないことでしょう。
このようにして、現在の海外輸出では、
「イベントで飲んだお酒を手に入れたい」
「ソーシャルメディアで読んだあのお酒を飲んでみたい」
といった小さなニーズに応えられないケースが多数起こっているのです。
Japanpage:Sakeが、「届かない」を「届ける」に変える
アイディーテンジャパンは、日本の地域産品をブランディングして、世界中に届ける企業です。
しかし、どんなに素晴らしいブランドでも、届かなければ絵に描いた餅に過ぎません。
合計300件にもおよぶ酒蔵やレストランへのヒアリング、海外イベントや試飲会への出展によるリサーチを重ねた結果、日本酒のような地域産品は量産に向かないため、大量に仕入れることで配送料金を下げ、在庫を管理しながら販売する従来の輸出方法では限界があるということがわかりました。
アイディーテンジャパンのビジョンを実現するためには、ブランディングを担う企業である我々自身が、「届かない」を「届ける」に変えるインフラを構築する必要がある。
リスクを取ってでも、インフラのボトルネックを改善し、地域産品の社会的ベネフィットを最大化する──そうした使命感のもとに生まれたのが、酒蔵から直接仕入れをおこない、消費者へ直接配送するJapanpage:Sakeのシステムです。
これを確立するためには、越境EC事業者として注文を受け、酒販店としてお酒を仕入れ、商社・配送事業者として商品を配送することが必要になります。つまり、商品を届けるために必要な複数の役割を一社が担う“全対応”によって、作業工数および経費を削減するのです。
こうした越境EC + 小口空輸配送サービスを確立するため、2018年4月に酒販店免許を取得。各国ごとの法制度を解析し、手続きの簡略化をおこないました。
また、航空便で大きな課題となる破損を防ぐため、設計士とやりとりしながら独自の梱包資材を開発。50カ国を対象に配送テストをおこなった結果、常温配送において、すべての荷受先に破損なく商品を届けることができました。
Japanpage:Sakeは、酒類輸出の未来を変える
商品を届けるために必要な複数の役割を一社が担い、直接仕入・直接配送を実現することで、酒蔵さんが負担する作業工数および経費の削減が可能となります。
酒蔵さんにしていただくのは、必要情報の登録のみ。ECサイトから注文が入ったら、あとは弊社にお酒を送るだけで、複雑な手続きは必要はありません。
「購入者側が負担する金額が増えるのではないか?」と心配する方もいるかもしれません。しかし、配送コストだけをみると通常の船便は安価ですが、通関手続きや配送費用、マーケティングコストや税金などが上乗せた金額で販売されることになります。
「Japnapage:Sake」で購入すると、これらの負担が一切かかりません。そのため、商品が購入者の手元に届くまでの商品価格と総経費の合計を比較してみると、同等、または国によってはより安価になることさえあるのです。
このように、Japanpage:Sakeのシステムによって、ユーザー側の金額負担が低減し、世界一律の料金設定で日本のお酒を購入することが可能になります。
さらに、航空便は船便より短期間で届くというメリットもあります。欧州であれば、弊社から出荷後に7〜10日間、アジアであれば数日〜7日間といった短期間で届けることができます。
さまざまな検証の結果、大口の商品を安価に配送するために、既存の流通や船便による配送が優れていることを再認識しています。
その一方で、小口空輸配送は、日本酒の入口をつくる、多種少量の需要に対応する、緊急な発注に対応することで、これまで対応できなかった・届かなかった市場の開拓に力を発揮します。
少量のお酒を、安価で、簡単に、かつ素早く送ることができる越境EC + 小口空輸配送サービス・Japanpage:Sake。
最近では、海外で開催されるコンペティションの出品酒の配送や小さなコミュニティ向けに「試飲酒を配送してほしい」というお話を多くいただくようになり、小口空輸配送サービスのみを切り取った「Japanpage:Delivery」も開始しました。
私たちはさらに、こうしてお酒の配送を繰り返す中で、各国の通関事情のデータを蓄積しています。日本酒を世界ブランドにするために、世界中に日本酒を届けるために、この通関データをマーケティングに役立てていく予定です。
まとめ
国内の酒販店に卸すのと同等の作業負担で、国内を含む全世界に商品を販売・配送することができるJapanpage:Sake。世界中のどんな小さなニーズにも応えるこのシステムは、地域産品としての日本産酒類の魅力を余すことなく広めてくれます。
アイディーテンジャパンは、世界中の人々に日本産酒類をさらに楽しんでいただくため、このシステムと連動して、世界5言語に対応したスマートフォンアプリを提供しています。
次回の記事では、「日本酒を選ぶハードルを劇的に下げるアプリの話」として、弊社が開発したアプリ「Japanpage:Picks」のお話をしたいと思います。