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「憂鬱でなければ、仕事じゃない」は本当か?認知科学的なアプローチで考えてみた

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幻冬舎の代表見城徹さんと、サイバーエージェントの代表藤田晋さんの共著「憂鬱でなければ、仕事じゃない」という本をご存知でしょうか?

こちらの本が出版されたのは2011年と12年も前だということに少々驚きましたが、出版当時に田舎者のひねくれ学生だった私は当時この書籍のタイトルを見て、「資本家、経営者のポジショントーク乙」ぐらいに捉えていました。(青臭かったんです、すんません。)

前置きはさておいて、今回考えてみたいテーマは「ポジティブな心理状態で仕事をした方がいい説」と「ネガティブな心理状態で仕事をしたほうがいい説」の矛盾についてです。

自分が楽をしたいという浅ましい理由で「ポジティブな心理状態で仕事をしたほうが良いんだ!」と言いたくなっちゃうところですが、自分の経験則的には過去上手く行ったプロジェクトにおいてはとても常にポジティブな心理状態だったなどとは言えないなぁとも思えるわけで、実際のとこどうなんでしょうか?

さて、今回はドナルド・ノーマンの著書『エモーショナル・デザイン』の中にその矛盾に対するヒントがあったので、それについて紹介してみたいと思います。

【結論】タスクの種類によってポジティブな心理状態が向いているものと、ネガティブな心理状態が向いているものがある

いきなり結論を書いてしまいましたが、タスクの種類によって理想的な心理状態は変わると言えそうです。

まず、ポジティブな心理状態での人間の脳の処理の傾向について。

ポジティブな感情状態にあるときは、(ネガティブな状態とは)まったく逆のことが起きる。神経伝達物質は脳の処理を広げ、筋肉は緩み、脳はポジティブな感情が提供する機会をうまくとらえるのである。広げるということは、集中はやめ、割り込みに対して十分受容的になり、新しいアイデアや出来事に関心を払うようになるということだ。ポジティブな感情の下では、木よりも森を見て、細部にこだわらず全体像を好むようになる

『エモーショナル・デザイン―微笑を誘うモノたちのために』

ポジティブな心理状態においては、新しいアイデアへの関心が向上するとのこと。これはイメージ通りですね。ただ、ポジティブな心理状態では集中する力が弱くなるということも頭に入れて置くべきでしょう。

つづいて、ネガティブな心理状態について。

不安であるとか危機に直面しているなどネガティブな感情状態にあるとき、神経伝達物質が脳の処理を集中させる。集中とは、気を散らすことなく、課題に専念する能力のことであり、最後に何らかの解決策に辿り着くまで、深く深くその課題に入り込むことである。(中略)

『エモーショナル・デザイン―微笑を誘うモノたちのために』

ポジティブな心理状態とは真逆で、ネガティブな感情下において気を散らすことなく、課題に専念するようになるとのこと。

また、過度な不安について、このように言及されています。

過度の不安は「トンネルビジョン」として知られている現象を生み出す。これは、あまりに集中しすぎると、明らかなはずの代替案も見えなくなることがあることをいう。

『エモーショナル・デザイン―微笑を誘うモノたちのために』

そして、問題解決のプロセスについて具体的にこのように述べています。

デザインを含めたほとんどの問題解決は、まず創造的な考え方が必要で、その後に、専念し集中した努力の機関がかなり続く。
最初の創造性について言えば、デザイナーはくつろいで良い気分であるのが良い
(中略)
創造的な段階が完了したら、生み出されたアイデアを実際の製品へと変換しなければならない。デザインチームは細部に十分注意を払わなければならない。ここでは集中が重要であるこれを行う一つの方法はちょうど好ましいよりもわずかに短い締め切りを設けることである。そのとき、ネガティブな感情が集中した時間を生み出す。

『エモーショナル・デザイン―微笑を誘うモノたちのために』

まとめ

過去に組織カルチャーのデザインを試みたことがあるのですが、今回紹介した「タスクの種類によって、向いている心理状態は違う」という観点を取り入れられたらもっといい仕事ができたのではないかなーと思いました。

本記事のタイトルにした「憂鬱でなければ、仕事じゃないは本当か?」という点については、「全工程が憂鬱である必要はないし、あるべきではないが、何かを成し遂げるときに憂鬱と言うべきプロセスはほぼ確実に存在する(残念!)」といったところでしょうか。

ご自身のお仕事や、皆さんの周りの人を助けることに役立ちますと幸いです!

アクションリスト

  • いつも素晴らしい結果を出す人が「仕事の各工程において、どういう心理状態でいるか」を観察・質問してみよう

  • 自分の仕事が上手く行かないときや、チームメイトが困っているときは、各工程の心理状態を分析・デザインしてみよう

  • マネジメントを仕事にしている人は、オペレーションの各工程のあるべき心理状態を考え、それが実現するようにデザインしてみよう

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