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2015年頃、サウナに来てくれていたおじちゃんの話。

先日 愛知県知立市にある「サウナイーグル」に熱波をやりに行った。

サウナイーグルは16年ほど前にボクが初めて「ロウリュ」を体感した施設だ。

そこからのオファーだったので感慨だ。
 リニューアルされた館内は以前の姿とはガラリと打って変わっていたが
 サウナヒーターは当時のままであり、
ボクはロウリュを点てながら
「…これだ、これだ」と心の中で納得していた。

高齢の方がサウナにいらして
ボクはその方の筋肉の動きや皮膚の感じ、呼吸の深さを読みとって
「おじちゃん、クールダウンしましょう」
とアドバイスする。
頭に水をゆっくりとかけてあげると
「おわ〜…気持ち良い〜」といってくれて、
サウナ→頭に水をかける→そしてゆっくりとクールダウン
それを何度か繰り返してもらった。

イベントを終えて、
おじちゃんが近くに来てくれて
「ありがとう、ありがとう、こんな気持ち良いのははじめてだ、こんなよくしてもらってありがとう」と言ってくれた。


皆さんに気持ち良くなってもらうのは当然の事だ、
ボクはおじちゃんに
「お礼なんていりません、サウナイーグルのサウナが素晴らしいってことですよ」
と言いながら
昔 サウナで出会った 一人のおじちゃんの事を思い出していた。



当時 横浜市鶴見区の現在は
「ファンタジーサウナ&スパ おふろの国」で
毎週土曜日に「熱波強化日」として熱波を行っていた頃、2015年ぐらいかな、
まだまだお客さんからたまに
「そんなもんいらねえ!」とか
「やめろ!」と言われてタオルを投げられたりしながら熱波をやっていたそんな時代、
毎週熱波受けにきてくれる
高齢のちょっと威勢の良いおじちゃんがいた。

ボクと当時熱波一緒にやっていた
タックンジョー(日本人)とのコンビでの熱波を楽しんでくれていて
受けてくれるたんびにニコニコしながら
「熱波良いね!気持ち良いよ!」と言ってくれて毎週来てくれていたんだけどある時、パタっと来なくなってしまった。

来なくなってから2ヶ月ぐらいたった土曜日に
ボクはおじちゃんをみつけ
「あ!いた!」って声を出してしまった。

浴室に置いてあるガーデニングチェア(ととのい椅子)に座っている
その胸部から腹部には

ざっくりと手術痕が出来ていた。

それは あまりにも の傷だった、
ボクはその傷にたいしては何も言えなかった。なんとなくわかったからだ。

「…おじちゃん」とだけ言ったら

「…よう。へっへ…」と言って手術痕を指さして
「…ゴボっと取っちゃったんだよな」って言って、

「熱波受けさせてもらって良いかな?そのために来たんだよ」
って言って受けてくれて
「やっぱサウナは気持ち良いなぁ」って言ってくれてまた毎週現れるようになったが、
みるみる体が衰弱していっているのが
ボクにもタックンジョーにもわかっていて
いよいよ何週間後かの土曜日に
 熱波の時間になり、浴室にボクが入場したとき そのおじちゃんが四つん這いになって這ってサウナに入ろうとしていたので
(当時はすでにサウナに入っている人対象と呼び込みでサウナに入ってもらって熱波を受けてもらっていた)

ボクはおじちゃんに駆け寄って
ちょっともうサウナは止めた方がいいんじゃないか、おじちゃん。
と言った。

おじちゃんは
「…頼むよ、入れてくれよ、俺、あんたの熱波好きなんだよ」
と言う

けどボクは
いや、でも今日は止めた方が良いよ、
また元気になったら来てよ、その方が良いよ。
と止めたけど

おじちゃんは
「…頼むよ、入れてくれよ、迷惑かけないよ、頼むよ、俺熱波好きなんだよ」
って引き下がらない

ボクも意を決して
既にサウナ内にいるお客さんみんなに
事情を説明しておじちゃんの事を言って、
おじちゃんに熱波受けてもらって良いですか?って聞いたら

サウナ内が大拍手になった。

歓声がとんで おじちゃんのためにドアの前のもっとも相応しい席をあけてくれるお客さんもいた。
ボクとタックンジョーで肩をかしてサウナに入ってもらって最後まで熱波を受けてもらった。

熱波の最中おじちゃんはこちらを見てニコニコ微笑んでいた。

熱波が終わるとお客さんとまたボク達で肩を貸して
1番最初にサウナから出してあげて
ととのい椅子に腰掛けてもらった


「…ありがとう、…ありがとう、楽しかった。楽しかった。あんたの熱波好きなんだ。ありがとう…」と言ってくれた。

ほどよく休憩したら立ち上がって
「…気持ち良かったよ、帰るよ」と言って帰って行った。



それから2週間くらいたって
フロントに立っていたタックンジョーの前に高齢の女性が現れた

…おじちゃんの奥さんだったんだけどタックンジョーに
「先日亡くなりました」
と言うことと
「皆さんにお礼を」との事だった。


ボクはそれを聞いて誓った、

「オレはどんなことがあってもやめない、オレはやる。おじちゃん、見ててくれ」って。


この時の気持ちはずっと忘れない。






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