見出し画像

2002年格闘集団レックスジャパンから脱退した時の話。


「井上くん、大日本プロレスに入団しませんか?って話があるんやけど」
そうレックスジャパンとプロレス団体側との窓口になってくれている人から聞かされた時は渡りに船でボクは即答で

「‥ぜひ。ぜひ。ぜひ。」

と「ぜひ」を3回も言ったものの…
いろいろな事で不安もある。

そりゃある。

でももう状況的に切羽詰まっていたので行くしかない。

家業の特殊印刷会社「井上プロセス」は倒産へのカウントダウンが始まっていたという事実もある。

当時実は、現場関係(荷あげの会社や、大工さん、人材派遣の会社等)やある古本屋さん、CDショップとか掛け持ちで使ってもらっていて
それ+不定期のプロレスへの参戦の為、日々体をごっつくするトレーニングをしていた。

そして頭の中はゴチャゴチャ


だ。
家は倒産しかけている‥いや、

倒産する。

お金は要る。もっと働かないといけない。
トレーニングするのにもお金は掛かる。
トレーニングしても食べないと体は大きくならない‥
債権者と話しないといけない。

「は!?練習とかやっとる場合ちゃうやろ!」言われる。
確かにそうだ。

寝れなくなる、でもやる。
正しいのか?間違っているのか?
今の状態では正しくない。

そう思いながら現場の仕事を終わってジムに行く。
罪悪感でおかしくなってくる。

うごーッ!と言いながらバーベルを挙げて
アッウッ!!アァッ!!と叫びながらサンドバッグを叩く!

オレは間違っている。オレはおかしい。
お金が無い。家族は困っている。
倒産は免れない。
働かないと、イヤ、働いている。
お金が入っても右から左に流れて行くだけで‥
1人で自転車こいでいたら涙が出てくる、オレはおかしい。

なんでこんな事をやっているのか?

ある時から物凄く何かの「プロ」になりたかった。
そしてプロになっても売れないとダメだ!
売れるんだ!
売れる!!
売れないとダメだ!
プロになれても売れないとダメだ!

収入は現場関係の仕事や古本屋さんの正社員になった方が良いだろう。

何十年かかるかわからないけど負債もそれで返すといえば、債権者に話がつく。

でもなんだ!?それで良いのか?
なんで勝手に涙が出てくるのか?
なんで今 サンドバッグを思いっきり叩いているのか?

祖母のユキさん、両親、妹、弟、得意先の皆さんの顔が目の前に出てくる。

どうしよう、どうすれば‥


そして2002年の初頭、ボクは
大阪の格闘集団の「井上勝正」として応援してくれていた関係者の皆さんにこう言った、


「ボクはプロレスラーになります」





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?