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【解説】経産省ELPIS 企業・大学・官庁の若手が描く未来のたたき台

2020年4月22日に、経済産業省で20代~30代の産学官の若手による提言が公表されました。これは、2019年10月より経産省内で産学官の若手が集う「官民若手イノベーション論ELPIS(エルピス)」という仕組みを立ち上げ、2050年の未来に向けたディスカッションを若手(主に平成生まれ世代)の有識者内で議論をし、まとめた文章になります。

筆者は、航空・宇宙やロボティクスの専門家、起業家として、この取り組みの立ち上げ時から中央省庁の若手メンバーとともに、コアメンバーとして携わってきました。本記事では、経産省ELPISの背景から、2050年の未来に向けての若手からの提言について資料を基に、説明、補足をしていきます。

背景

国の政策は、政治家が世の中の流れや国民の声をくみ取り、国や地域を暮らしやすくする政策を考え、官僚が政治家が考えた政策を実現するための施策を練り、実行するといった役割でつくられます。

ただ、政策を具体的に練っていくにあたっては、官僚もそれぞれの分野の専門家ではないため、その道の専門家や有識者に意見を聞きながら現状を把握する「審議会、研究会」などを開催し、それに基づいて政策を決めていくことになります。

その中の1つの取り組みとして、研究開発・イノベーション政策を検討する経済産業省の審議会「研究開発・イノベーション小委員会」というのがあります。ここでは、日本のこれからの産業技術を育てていくために、研究開発やイノベーションを促進させる環境をどのように整えていったらよいかについて議論がされています。東京大学の五神総長が委員長を務められていたり、各業界のそうそうたるエキスパートが終結して、国の未来について議論がされています。

議論されている内容を見てみると、怖くなるくらい正確にこれからの日本の現状について理解がされていて、さすが国のトップが終結して議論をされている内容だなと感じることができます。

↑ 2019年6月に公開された中間とりまとめの資料

この中で、「失われた30年」を前提に議論が進められ、

「このような現状は平成生まれに伝わるのだろうか」

と委員の一人から出た発言がきっかけとなり、経産省の若手の職員が、

「逆に未来のことを議論しているのに、その当事者である平成生まれが参加していないことのほうが問題なのでは」

と感じ、若手の有識者を集めて未来について議論をしていきましょうとのことで、ELPISという活動が始まりました。

官民若手イノベーション論ELPIS

官民の若手によって、主に科学技術イノベーション環境について議論するプラットフォームです。

今後の社会の将来像を描き、そこに至るまでの科学技術イノベーション環境について若手の感覚を政策につなげていくため、30代以下の、大学や研究機関の研究者やスタートアップ創業者、ベンチャーキャピタリストやインキュベーター、大企業の新規事業や研究開発担当といったイノベーションの現場にいる人たちと経済産業省など官庁の若手職員で集まり議論するプラットフォームをつくりました。

ELPISとはEngineers and Leaders Picture Innovative Societyの略で、ELPISはギリシャ神話で「希望の神」の名前でもあります。

これからの未来の作り方

これからの未来の作り方は、全世代型のイノベーションが必要だと考えています。

・長年の経験に基づく知恵や、リソース、権限をもつベテラン
・未来の当事者であり、機敏性・発想力・実行力をもつ若手

この組み合わせが未来創りには重要です。

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若手が必要な背景としては、

・未来への当事者である
・上の世代と価値観の違いがある
・新しい風を入れられる可能性
・グローバルでみると若者の割合は大きい
・課題解決には、若手もプロ意識で取り組んでいる

未来の創造には若手の考えも必要ですってことです。

未来に向けた5つの価値変化

個人に関する考え方、事業に関する考え方、社会に関する考え方が2050年までにどのように変わるかについて、若手で議論を続けてきました。そして、5つの特徴的な価値の変化についてまとめました。

1.コミュニティのあり方:フォルダ型->ハッシュタグ型へ

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まずはコミュニティのあり方が、フォルダ型からハッシュタグ型に変化すると考えます。

組織という考え方が古くなり、プロジェクトベースで個人が中心に社会が動きます。

複数の所属をもつ人が当たり前の時代になります。個人で何をやってるかが大切です。

企業内で新規事業と掛け持ちができる仕組みを作ったり、官民を行き来できる仕組みを作ったりする事例があります。

今後はこの動きが加速していくでしょう。

2.マインドセットのあり方:取得・所得->貢献・共有へ

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マインドセットにも変化がでてきます。
これまでの取得・所有の考え方から貢献・共有の考え方にシフトしていきます。

モノも情報もまず共有することで、誰でも選び、活動し、貢献することが主流となり、自由に活躍できる時代になります。

この未来のマインドは新型コロナウイルスで、急速に浸透してきました。

社会のために、自分のスキルやリソースを活かし、試していく。

そんな未来がやってきます。お金でない価値観が強くなってくるはずです。

3. 研究のあり方:心理探求志向->社会変化までの研究へ

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研究のあり方についても変化します。

研究者が社会課題解決に携わる企業や機関と交流して知識をオープンにしていき、企業や大学の人材・資金が循環することが当たり前となります。

研究成果が社会実装しやすい未来がやってきます。

研究成果の社会実装のためには、資本が必要となります。
日本では、ベンチャーキャピタルなどの投資の仕組みは海外に比べてまだまだ規模が小さいですが、どんどん大きくなっていくと考えています。

未来への社会の動きがどんどん加速していきます。

4.ビジネスのあり方:機能性->ストーリー性へ

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ビジネスのあり方も変化し、機能性かやストーリー性が重要視されていきます。

プロダクトの裏にあるストーリーやプロダクトを使うユーザーの体験が差別化の要因となります。

共感や感性などの軸が重要となり、サイエンスとアートのバランスが変わってきます。

機能性とストーリー性でユーザー目線のサービスを展開している例も少し見受けられます。

スマートフォンを流行らせた、iPhone。ガラケーで価格競争が激しい時代に、体験を意識した、たった一つのボタンとタッチスクリーンというシンプルさで一人勝ち。

5.社会のあり方:経済大国->持続可能な社会へ

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社会のあり方も、経済大国を目指す動きから持続可能な社会を目指す動きに変化します。

世界と争うのではなく、世界と協調してみんなで住みやすい社会をつくっていく。
これが、新しい社会のスタンダードの考え方になります。

新しい社会のあり方を進めている例として、エネルギーから生活まで持続可能な仕組みをとっているコスタリカが有名です。

また、日本でも神山町で話題の創造的過疎といった、地方での持続可能な社会づくりが注目されています。

最後に

今回の報告書では、未来に向けての最初の土台となる、基本的な考えをまとめています。そのため、すでにバリバリ活躍されている人にとってみたら当たり前の情報であるかと思います。しかしながら、これらの当たり前の考え方、方向性をまとめた文書は少なく、特に今回このように「経済産業省」の文書として公開されたことに価値があります。

今後ELPISでは、未来に向けて若手からも社会に意見を入れている仕組みを仲間とともに、創って参ります。今後の活動にご期待ください。

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