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第4回TNXRMEETUP対談レポート
自己紹介
こんにちは!
XRでなめらかな社会の実現を目指しているかっつーです。
IwakenLabというバイネームで活躍することを目標とした学生技術系コミュニティに所属しながら、TNXRという森ビルさんやTokyoNode Labさんと共同で運営しているコミュニティのリーダーをやっています。慶應義塾の大学に通いながら経済学を学んでいます。
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TNXRは好きな技術で新たな都市体験を創発すること目指した都市XR実装コミュニティです。このコミュニティではおおよそ月に1回外部から都市体験の創造に関係するような著名な学者や経営者、専門家をお招きしてイベントを開催しています。
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過去開催したイベントはこちら
TNXR 第0回MEETUP
空間コンピューティングイベント
AppleVisionPro本発売記念イベント
今回TNXR MeetUP vol.4ということで東京大学特任教授で人工知能研究者の三宅陽一郎先生をお呼びして、AIは都市体験と街作りをどう変えるか?~都市に知能が溢れ出す~というテーマでイベントを開催しました。
この記事では、このイベントで対談した内容などを詳しくお伝えしたいと思います。
イベントの開催目的と背景
Apple Vision Proの登場により、空間コンピューティングが加速し、さらに人工知能が都市や空間の中に浸透し始めています。これを背景に、ゲームAI技術とデジタルツインの応用が新たな都市体験の鍵を握る可能性が見えてきていると考えています。ゲームAI技術を都市体験に応用するための学びを得ることやゲームAIと都市の融合という視点から、スマートシティを実現するための現在の課題を深ぼることを主目的としていました。
そこで、スマートシティを実現するうえで国内で人工知能の中でも特にゲームAIという視座から研究しているのは三宅陽一郎先生だったため、先生をお呼びしたところ快くイベント参加に承諾してくださいました。
※研究内容をご紹介してもらう中で、パワーポイントを見ているとなんと600枚以上作成されていて、研究を誰にでもわかりやすく伝えることを身をもって実践されていて本当に感銘を受けました。こちらが身が引き締まる思いでした。
※この記事の内容は僕が少し補完しながら説明しています。
ここからはイベントの内容をレポートしていきます!
イベントではまず三宅先生に自己紹介と研究内容についてご紹介いただきました。
ゲームAIの進化
先生はゲームAIの歴史的背景と大まかな種類についてまず説明していました。先生は2004年からゲーム業界にいらっしゃったのですが、ゲームは40年以上前から遊ばれていました。そして、ゲームAIについて業界できちんと考えるようになったのは、1990年代なかばだったそうです。
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その契機となったのが、ゲームの3D化です。ゲームが3D化しゲームワールド自体も巨大化していきました。その結果、一人ひとりのキャラクターにすべて論理でプログラミングすることが難しくなってきたのです。〇〇の状態になったら××の攻撃をしてください。といったプログラミングをすべてのキャラクターや状態に行うのが難しくなりました。
そして、敵の動きはあらかじめプログラムされた同じ動きをするだけだった1970年代位のゲームでは、徐々にユーザーがそのゲームに単調さを感じ、刺激を求めるようになりました。
その結果、キャラクターやゲーム空間に知能を宿すという方向性の研究が活発になってきました。
その起源がパックマンです。※1
物理イベント内では、パックマンが独自のアルゴリズムによって追いかけたり、攻めなかったりする動画を見せてくださいました。このパックマンはゲームAI研究の原点だったんですね。
パックマンでもずっと敵キャラクターが強すぎると、勝てなくて面白みがないですし、弱すぎると緊張感がなくて楽しくなくなってしまう。そういった緊張感の緩急はゲームの面白さの本質なのですが、その緊張感の緩急をゲームAIが制御しているんです。パックマンは二次元ですが、それが3DのRPGのゲームが1990年代なかばから作られ始めると、ゲームAIもそれ相応に複雑な対応をしてもらう必要がありました。
オープンワールドのゲームだと、プレイヤーがいつどう移動して攻撃し、戦闘してくるのかゲームキャラクターからするとわかりませんし予測もできません。そのあたりから、ゲームAIは、敵キャラクターに知能を与えるだけでなく、空間やゲームマップにも知能を与えたり、ゲーム全体のバランスを見ながらレベルデザインを制御するメタAIが登場するようになりました。
空間に知能を与えるというのは、そのゲームマップの土地の特徴を抽出しながら、プレイヤーの居る周囲の地形を常に解析してもらうということです。
空間AIにキャラクターを制御させたり、宝箱のようなオブジェクトを操作する知能を与えることで、プレイヤーがある場所に来て敵を攻撃してきたら、ボスをその場所に配置するといったことを可能にしました。
これはキャラクターにすべての知能をもたせると複雑な条件分岐が実現できないため、空間の方に知能を与えることでキャラクターの動きを保管しようという考えに基づいています。
この宝箱のようなオブジェクトやマップ、空間に知能を与えることをスマートオブジェクトやスマートスペースと呼びます。※2
オブジェクトや土地マップ、空間に宿る知性がゲーム世界を制御するということです。
上記のようなキャラクターAIや空間AIは協調し合いながらゲームが進んでいきますが、さらにそのゲームのバランスを見ながらレベルデザインを制御するメタAIも登場するようになります。俯瞰してゲームを見ることで、敵キャラクターAIや空間AIに指示を与えてよりゲームを楽しくする役割があります。
その3つのキャラクターAI、空間AI、メタAIの3つを動的に連携させる、MCS-AI動的連携モデルに関する研究を三宅先生は行っているとのことでした
※1 ちなみに、パックマンはゲームの中で一番売れてギネスレコードにもなっているそう。
※2実際のイベントではゲームの動画を見せてもらいながら、空間AIやスマートオブジェクトの理解を深めました。
※3ちなみに、メタAIを最初に提唱したのはあのSimCityの開発者ウィル・ライトです。当時はDirectorAIという名前でした。
メタバースとデジタルツインの役割
次に、上記で話してもらったゲーム業界で培われたAI技術が他の分野へ応用できる可能性について話してもらいました。
その分野こそ都市だということです。
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対談の中で、三宅先生は「メタバース」と「デジタルツイン」の違いについて明確に言及しました。メタバースが人間の体験を中心に据えた仮想空間であるのに対し、デジタルツインは現実空間をデジタル上で忠実に再現し、シミュレーションや管理に利用されるものです。
例えば、メタバースは人間同士の交流やエンターテインメントの場として活用されることが多く、ゲームやバーチャルイベントなどの体験型コンテンツが主流です。一方、デジタルツインはスマートシティにおいて重要な役割を果たします。都市全体をリアルタイムでデジタル上に再現し、次のような利用が可能になります:
災害対策:地震や台風といった自然災害が起きた際に、リアルタイムで被害状況を把握し、迅速な対応が可能になります。
交通管理:交通量や混雑状況を分析し、適切な信号制御や迂回路の提案を行う。
犯罪防止:都市内の動きを監視し、不審な行動を察知して迅速に対応する。
具体例:奈良の鹿を用いたデジタルツイン
対談では、奈良公園の鹿を例にデジタルツインの可能性が語られました。すべての鹿にGPSタグを装着し、メタバース上でリアルタイムに動きを追跡することで、現実の状況を可視化するアイデアです。このように、デジタルツインを通じて現実の動物の行動や生態を知ることで、観光業や動物保護への応用が期待されます。
三宅先生は「現実を知るために仮想空間を活用する」という逆説的な価値を強調しました。従来、現実を見るには現地に行く必要がありましたが、デジタルツインを通じて仮想空間で現実以上の情報を得られる可能性があるというのです。
よりわかりやすく補完すると、例えば物理的なお店に行くとします。その際にお店に行く前に多くの人はウェブサイトでそのお店の情報を調べてから見に行きますよね。それが3Dかつ高精細でリアルタイムになると、物理的な現実を知るためにメタバース空間上で先に見るということが行われるという話をしています。
こうして、デジタルツインとメタバースが持つ現実を仮想空間で再現し、更に拡張するという役割について話してもらい、そのデジタルツインの応用例として奈良の鹿にGPSを装着し、全体の動きを監視する話題が出されました。そうすることで、仮想空間の情報が現実の状況を把握するために有効であるという認識を共有してもらいました。
この段階で、都市や環境の管理におけるリアルタイムの情報活用の可能性が議論されました。ここから、現実空間における課題として、「空間の複雑さ」をどう扱うか?という話に移りました。
空間AIとロボットの未来
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三宅先生はこの話題で人間とロボットの違いに焦点を当てながら、AIやロボットが持つ空間認識能力が非常に限定されている話をしてくださいました。
人間はある空間に行ったときに、その空間全体を覚えています。ある街に行くとその街の地図を頭の中で作り、対応することが出来ますよね。
しかし、ロボットはそうは行きません。
AIは未知の空間での動作が苦手であり、しかも人間のように一度訪れた空間を即座に把握する能力を持っていません。SLAM技術で空間をある程度把握したとしても、それを別の場所にすぐに応用することは困難だとおっしゃっていました。つまり、ロボットに空間を把握させる知能をもたせるのには限界があるということです。
そこで、現実空間把握をサポートするAIである「空間AI」が必要だという話をしました。空間AIは特定の空間に埋め込まれたAIであり、その空間の情報(レイアウトや障害物、動線など)をリアルタイムで認識します。(ゲームの中では色々なアルゴリズムがあります。A*経路探索など)その情報を活用して、空間AIのほうがロボットが効率的に活動できるようにサポートします。
例えば、掃除ロボットが初めての部屋に入った場合に、空間AIがその部屋の地図やルートを提供することで、ロボットがまるで経験者のように動作できるという未来像が語られました。
ここで勝信から、今まで人類も同様に知能を環境の方に押し付けて社会制度や法律体型を作ってきたことを話しました。
人類には認知限界が存在しています。認知限界によって組織を作り人々は共同して活きてきました。すべてをたった一つの身体の中に記憶したりとどめておくことは出来ません。経済学のノーベル賞を受賞したハーバードサイモンは40年ほど前からそう言っていました。
人間には認知限界が存在することから、人類は世界の複雑性に対してどうしたのかというと、社会制度を建築してきたのです。人類は認知限界の分の複雑さを社会制度に押し付けることで、人口や組織、技術が発達しても問題ないように文明を発展させてきました。
それと同じように、ロボットもおそらくすべての情報を小さな機体にとどめておくことは難しいと思いますし、そもそも空間認識能力が低いためSLAMやVPSの技術が発達しても今のところ、ロボットの知能を増幅させる方向性では、ロボットは物理的な環境では適応で来なさそうです。
環境の知能化とノンヒューマンエージェントとの共存社会への移行
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この後、話題は「ロボットと環境の共存」へと進みました。
具体的には次のようなことを話しました。ロボット自体を高度に進化させるような方向性ではなく、ゲーム産業で扱われているように、環境側に知能をもたせるような研究や実証実験をしていく必要があるという話を三宅先生はされていました。
そこで、先程話したデジタルツインとメタバースが必要になります。デジタルツインは現実空間の情報をデジタル上に反映することによって、物理空間の状況をリアルタイムで把握することを可能にするものです。(どこまでリアルタイムに物理空間をすべて把握できるかは今後のカメラやセンサー次第です。)
また、ロボットには基本的に空間認識能力がないため、デジタルツイン上に作られた仮想的な空間内で何回もシミュレーションすることで現実での動作に応用します。予測される問題に迅速に対応する準備もできるようになるのです。そして、空間内の情報をリアルタイムで取得できるほどカメラやセンサーが配置されれば、その情報を測量され作られたデジタルツイン上からロボットを操作し、空間Aとして物理空間の情報を提供することで新しい空間での即時対応が可能になります。
上記のようなセンサーやカメラを使って測量を行い、デジタルツインとしてメタバース空間を作り上げることを家やオフィスの部屋だけでなく、ビル、都市全体へと広げていくことで、最終的には「ロボットが動きやすい環境を作ること」が大事だとおっしゃっておりました。
逆に言えば、現在の都市にSF映画のようにロボットがいないのは、都市はロボットや人工知能にやさしくない街作りがなされているからと言うのが一つの理由かもしれません。
人間以外の生命や人工生命も含め、ノンヒューマンエージェントとの共存が可能な建築や街作りが今求められているのでしょう。脱人間中心主義的な考
えを持って街作りについて考えていきたいと僕は思いました。
日本文化とエージェント型AI
三宅先生は、日本文化が「エージェント型AI」の発展に適していることを指摘しました。日本人はAIやキャラクターを「存在」として受け入れる文化を持っており、たまごっちや初音ミクといった事例がその象徴的な例です。こうした文化的背景から、日本ではAIが単なるツールではなく、「仲間」や「存在」として扱われることが期待されます。
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一方、西洋ではAIはあくまで「機能」として扱われる傾向があり、東洋のアプローチはより包括的であるともいえます。こうした特性は、日本がエージェント型AIの分野で優位性を持つ可能性を示唆していました。
また、話は更に広がり、宇宙時代の都市についても言及されていました。
宇宙時代とスマートシティの未来
未来の都市像として、宇宙都市や月面都市も議論に挙がりました。
これらの環境では、メタAIが都市全体を監視・管理し、安全性や効率性を確保することが不可欠です。都市計画や運営をAIが支えることで、限られたリソースの中で最適な環境を提供できるようになると考えられます。
また、地球上の都市においても、同様にメタAIが導入されることで、都市全体をより効率的に管理し、人々の生活の質を向上させることが期待されています。
例えば、月面に人々が生きるためのドームが出来たとして、そのドームが何かしらの理由で故障するとします。その故障したときに人間が直しに行くのではおそらく間に合わないかつ、すべてを過酷な宇宙環境で治すのは困難です。そこで、その月面ドームの状態や環境を常にモニターする空間AIをゲーム産業から応用します。その空間AIとキャラクターAIとしてのロボットが協調しつつ、メタAIがそのドーム全体を管理することができれば、月面ドームや月面都市計画においても、都市全体をより効率的に管理し、人々の生活の質を向上させることが期待できるとおっしゃっておりました。
勝信の感想
対談で出てきたロボットと比較して、人間がなぜこんなにも空間認識能力が高いのかというと、実は2014年にノーベル賞を受賞した研究が明かしています。そして、「失われゆく我々の内なる地図」という本では、人間も空間認識能力を便利なマップツールによって失いつつあると説明していました。
人間の空間認識能力に関わっているのは、おそらく場所細胞と格子細胞だと言われています。
個人的には、この場所細胞と格子細胞の活動をモデル化することができれば、もしかしたら空間認識能力は高まるのではないかと頭の中で想像しています。いやあどうかなw?
CNNももともとは視覚を司る単純型細胞と複雑型細胞をモデル化したところから始まっていますし、ニューラルネットワークも脳のシナプスをモデル化したところから芽が出たと思うと、抽象的に考えればなんとなく行けているような気もします。
はあぁ、楽しすぎました。
三宅先生の考え方の根底にはどうやらサイバネティクスが香ってきます。
サイバネティクスの源流はノーバート・ウィーナーと精神科医であるウィリアム・ロス・アシュビがコアの思想に影響を与えて、ホメオスタットという均衡を保つ恒常性を意味する機械をアシュビが作っていました。そこから、サイバネティクス的な考えは多岐にわたる分野に浸透していきました。グレゴリー・ベイトソンやJ.C.R.リックライダー、ダグラス・エンゲルバート、マンフレッド・クラインズとネイサンクラインなどなど。彼らから、フィードバック機能やヒューマンマシンインターフェースの基盤ができ、サイボーグが着想されていきました。更に広げていくときりがないのでやめておきます。
僕はなめらかな社会とその敵という本を読んでから社会的なシステムや社会制度など、「社会を生命化」できないかと考えるようになりました。上記でも説明したように、社会制度を建築していくことで人々は認知限界を超え、世界の複雑さを乗り越えてきました。
そこで、複雑さを押し付ける対象というのは目に見えない社会制度という環境だけでなく、物理的な都市建築も同様です。知能や重要な情報を人間の身体やロボットの機体に詰め込むのではなく、環境に対して押し付けて建築していくことが今後求められていると考えています。
三宅先生の書籍を読むと、先生からは都市は人工生命のようなものだという考えが見て取れますし、実際にそのように記述されています。
都市環境に対してサイバネティクス的な考えを持った人はそこまでいないように思います。(僕の知識不足だったら大変申し訳ありません🙇♂️🙇♂️!!
都市も社会制度もどちらも同様に、人間の中にある心や意志、考えから染み出して生まれてきたものです。より具体的には、人間がこういう制度があったら嬉しいな、こういう機能が家や建築にあったら嬉しいなという心が先にあり、その意志が民衆の中で集合して合意が取れるとそれがときに法になり、社会制度になり、そして物理的な建築物になるのです。
都市も社会制度もどちらも生命の内側では抑えきれない意志や心、機能を外側に押し付けてきた結果作られたものであり、一人ひとりが生成していくものなのです。
しかし、社会制度でも都市でも同様に、最近では自分たちで世界を変えられる、社会制度をアップデートできるんだという気持ちは薄れてきているように思います。僕自身投票しても本当に意味があるのかなあなんてふと思ってしまうこともあります。
三宅先生の研究されているMCS-AI動的連携モデルを都市に応用することができれば、人間の活動もノンヒューマンエージェントの活動もどちらも都市に反映することが出来、そして都市側からフィードバックを受けることが出来ます。それが適切な形で運用可能になれば、未来では自然災害や犯罪が起これば、メタAIから指示が出てロボットがそこに駆けつけ、直ちに解決したり、もっと巨大な時間軸からメタAIが人々にARグラスごしに都市の恒常性を維持するべく情報を提示してくれるでしょう。
家から都市、都市から地球全体へと共鳴していけば、人間も動物も、ノンヒューマンエージェントも含め地球は一つの生命のように振る舞うようになるはずです。
ガイア理論を提唱したジェームズ・ラブロックはノヴァセンという書籍で、近未来では人間の知能を遥かに超えた超知能が誕生し、新たな生物圏を作り出すと予見しました。産業革命以来、トマス・ニューコメンが蒸気機関を発明し、それをワットが改良してから、おおよそ300年間ほどがアントロポロセンの時代だといいます。それがAIによってノヴァセンという超知能と人類が地球に共存する時代がやってくると言っています。ガイアの恒常性を維持するべく人々は生きていくといいます。そして、ミラーワールド(僕がメタバース業界に入ることになった理由の一つ)を書いたケヴィン・ケリーも同様にミラーワールドが作られた未来ではホロスという全体を意味する、一つの生命体のように人類は連動し合いながら生きていくということも記述していました。
ノヴァセン時代にミラーワールドはつくられ、ホロスになっていく過程なのだと捉えれば、三宅先生の研究は今後ますます重要性を増すと考えています。そして、僕自身TNXRから何かしらの形で携われないかと思いました!
デジタルツイン環境でシミュレーションをすることに関して個人的に考えることがあります。「シミュラークルとシミュレーション」では哲学者のジャン・ボードリヤールがホルヘ・ルイス・ボルヘスの寓話を引用し、国家の姿を鏡のように写した地図という虚像が実物を凌駕してしまうという主客逆転のパラドックスを説明しています。
ある国の皇帝が、地図師に極めて正確な実物大の地図を作らせた。すると地図が帝国を覆ってしまい、やがて地図がボロボロになると帝国も一緒に滅亡した ホルヘ・ルイス・ボルヘス
ボードリヤールは現代社会をシミュレーションの時代として位置づけており、メディアやテクノロジーが現実に先立って私達の認識を作り上げていると主張しています。
上記の地図と帝国のおとぎ話はただの寓話として説明されていますが、現代のIT産業やデジタル社会を見渡すと、どうやら寓話では済まされない現実味を帯びて来ているように思います。
三宅先生との対談でも、デジタルツインを作り上げシミュレーションすることで都市環境に知能を与えていくことを話しました。おそらく、僕らは未来で現実に先立ってシミュレーションされた未来を生きて行くのかもしれません。できれば、シミュレーションとは別様の可能性を提示するように生きていきたいですけど。
そして、話は少し変わりMCS-AI動的連携モデルはもしかすると、東京23区や都道府県などの区画を変える可能性があるかもしれません。そのためには、おそらく社会制度や貨幣システム、お金や税の流れも考慮したモデルを作る必要があるかもしれません。まだ自分の中では抽象的になってしまっていますが、もし都市側から街の境界や都道府県の区画を仮想化することができるならば、国境も仮想化可能かもしれません。無思考なアナーキー的な発想ではなく、世界の境界は滑らかになれば、人々の心のなかで内面化された気持ちが氷が解けるように溶解していくかもしれません。もともとロシアで生まれてもウクライナ人として生きていくことも出来ますし、日本で生まれながらインドネシア人でもあるような、社会制度や国境が内面化されすぎずに生きていくことができるかもしれません。
都市環境から人間が複雑に、自在に生きていくことが可能になれば、社会はなめらかになっていくと思いました。
ここらへんで、僕の感想や考えたことはとどめておきます!
とにもかくにも、三宅先生という知性の塊のような方と対談できて大変光栄でした。僕は三宅先生の本はファンとしても勉強としてもほぼ全て読んでおります。
都市に人工知能が溢れた未来をテーマにイベントを企画しましたが、抽象論から具体的な実行方法まで三宅先生は研究と実学を交えながら思考を織り重ねており、今回の時間では先生自身も話したりない部分もあったかと思います。まだ新設されたばかりのTNXRコミュニティに快く赴いてくださったことに改めて、感謝申し上げます。🙇♂️