わたしがアイドルの恋愛発覚に正直ガックリしてしまう理由
―有史以来、数多くの論戦が繰り広げられてきた「アイドルの恋愛禁止論争」。
興味のないアイドルの恋愛が発覚し、自分が台風の目にいるときは「フーン」と鼻をホジホジできても、いざ自分が推しているアイドルのスキャンダルが発覚すると動揺してしまうもの。
いつものようにXを見ていると、流れてきたのは推しの異性との親密そうな写真。
彼氏なのか、誰なのか分からないが、ラブリーな雰囲気で写っているのは事実。
のちに本人発表があり、その方は「友達」とのことでしたが、その写真を見た際に覚えた不安感の理由を、アイドル市場(とりわけ女性アイドル)という特異なマーケット構造をもとに整理してみました。
なぜアイドルは恋愛すべきではないのか
「なぜアイドルは恋愛すべきでないか」という議論のなかでも、自分が一番しっくりきている答えは「アイドル自身がおかれている市場環境」にあると考えています。
大前提として、アイドル、アイドルではないに限らず、客商売の原則は顧客のニーズを理解し、そのニーズを満たすことで、利益を最大化することです。
アイドル市場においても、自分たちアイドルがターゲットとするユーザーを深く理解し、ユーザーの期待に応えることが求められます。
明石家さんまが道重さゆみに送った言葉から考える、アイドルのありかた
上記はモーニング娘。時代の道重さゆみさんに、明石家さんまさんが贈った言葉です。
さんまさんは恋愛を隠すことを、「ファンへの誠意」という言葉で表しています。
裏を返すと、彼氏がいることがわかった途端に、飛んできてくれるファンを失うぞ、なので絶対に隠せよという警告でしょう。
アイドルファン全員が疑似恋愛的な楽しみ方をしている人ばかりではなく、さまざまな応援する理由があります。
しかし少なくとも恋愛発覚が、アイドル自身のマーケットシェアを失う理由になるのは事実でしょう。
そのためアイドルにとっての恋愛禁止というのは、
「効果がでなければ全額返金」
「24時間安心カスタマーサポート」
など、リスクを最小限にサービスや製品を試すことができる、ビジネスの保証戦略そのものだと思っています。
つまり、事実はさておきアイドルにおける「恋愛をしていないという設定」は、低リスクでアイドルを応援できる保証ということです。
アイドルファンにとってのリスクとは?わたしがアイドルの恋愛にガックリする理由
ではアイドルファンがアイドルを応援する際のリスクとはなんでしょうか。
一言で表すなら、「喪失感を覚えること」だと思います。
先に述べた、わたしの推しの写真流出が発覚した際、
「自分たちファンより、一人の男を取ったのか」
「そもそも恋愛禁止なんだから、ルール違反だろ」
「ルールを守っているほかのメンバーや過去のグループの先輩たちに失礼」
など、アイドルのプロフェッショナリズムの文脈から、否定的な意見がSNS上では見られました。
また、お金だけでなく、時間や感情の大部分をアイドルに投資し応援してきたため、心理的なサンクコストとして、応援自体が無駄だった(≒ほかに「プロ意識」のある人を応援すればよかった)と感じた人もみかけました。
そうした意見を理解できなくはありません。
一方で、私個人がとくに抱いたのは「喪失感」を得てしまうのではという恐怖心でした。
ファンが不安で不安で仕方がない理由……
アイドルのなかには恋愛発覚後にグループを追われる形となり、そのままフェードアウトする方も少なくありません。
アイドルファンにとってアイドルの恋愛発覚というのは、楽しんで見ていたテレビ番組が臨時ニュースで突如中断されたときのように、不可抗力的にスパッと人生に区切りが生まれてしまう可能性がある一大イベントだと感じています。
それは、「脱退」か「別れるか」を迫られた際に、アイドル本人がファンにとって最悪な選択肢を取る恐れがあるため、
もっといえば、突如一人のアイドルがアイドルではなくなる可能性があるため、
もうその姿を再び目にすることが叶わなくなることがあるからです。
生きる活力の源が、急に世界から消える。
膝から崩れ落ちるような喪失感そのものが、アイドルファンにとってのリスクだと個人的に考えています。
そもそもビジネス構造的に大々的な「恋愛解禁」は難しいのでは?
もしも事務所の売り出し方として「恋愛OK」、「プライベートと芸能活動は別」という棲み分けをしているグループであれば、恋愛発覚時に脱退や卒業の選択肢を取られる可能性が少ないと想定できるため、その売り出し方自体が強固な安心材料となります。
賛否は生まれるはずですが、喪失感を覚えるリスクは少なくなるかと思います。
しかしながら、保障のような形で暗黙に恋愛禁止がうたわれることは変わらないと想定でき、急遽の脱退やフェードアウトも、今後も発生する可能性は十分にあります。
そのため現時点においては、自分の好きなアイドルに関しては、「お願い、恋愛してもいいけど絶対にバレないで!」もしくは「悔いのないタイミングで卒業して」というのが個人的に思っていることです。
とはいえ応援しているアイドルには、今後もよい人生を送ってくれたらうれしいのがいちばんの本心です。