平成生まれの私が初めて「平成レトロ」で胸を痛めた理由。
令和になった今、1980年代から2000年代当時のファッションや音楽、物などが「平成レトロ」として再評価されています。
平成の世でブームを生んだポケベル、たまごっち、
2000年前後に流行した「Y2Kファッション」や
当時のアニメ、ドラマ、音楽、ファッションが再び流行に取り入れられているようです。
しかし平成のころから「平成に生まれた産物を懐かしむ動き」はすでにあったと記憶しており、
平成を生きた人だと、意外と心の底から平成レトロを「懐かしい」と感じる人は多くないのではないのでしょうか。
常に懐古されていた平成トレンド
平成トレンドは昭和トレンドと比較する形で、平成の頃から頻繁に振り返られており、
とくに平成から令和の改元で、
平成の世を総決算する機会がたくさんあったかと思います。
また幼少期に遊んでいたゲームも
発売から数年後にオンラインコンテンツとして配信され、
聞いていた音楽も「平成ベストソング〇〇選」「平成のアニソンランキング」などの形で思い出させてくれる機会が多々ありました。
なのでありがたいことに、
平成の記憶が忘却の彼方へ飛ばされることはほとんどなかったと思います。
「平成レトロ」に残る空白。「昭和レトロ」への憧れ。
それにもかかわらず、いわゆる「平成レトロ」にはどこか空虚さを感じます。
平成レトロと対比される「昭和レトロ」は、
本当の昭和を体験のしたことがない私が、
手放しかつ無条件で懐かしさを感じられる、
数少ない昭和との接点なのに対して、
注目される平成レトロは「何か」に欠けていると感じてしまうのは私だけでしょうか。
喫茶店、駄菓子屋、居酒屋、純喫茶・・・・
令和の世では、
昭和レトロを体験できる場所が未だ存在している一方で、
物に溢れた平成を象徴するかのように、
平成レトロで象徴されるものの多くは、
「体験」よりも「モノ」にフォーカスされていることが多く、
事実、茨城大学の高野光平教授は「平成レトロには『空間』が欠けている」と指摘しています(※1)。
昭和レトロに存在するような、
空間、ひいては空間に漂う匂いを感じられる平成レトロ的な場所はどこにあるのでしょうか。
あの頃の匂いを思い出させてくれる「平成レトロ」
そんなことを思うなか、
YouTubeを見ていると以下の動画がおすすめ欄に挙がってきました。
※サムネイルは少し怖いですが、全然怖くないので安心してください。
「ヴェイパーウェイブ」と呼ばれる音楽ジャンルのようですが、
細かい説明はしなくても、
平成を生きた人たちであれば「圧倒的な平成」を感じられる音楽だと共感いただけるかと思います。
父親にイヤイヤ休日に連れ出された中古PC販売店の匂い
デパートの埃っぽいおもちゃコーナーで一人待たされた経験
退屈しながら見させられた理科の実習動画
留守番中に一人で見ていたVHSのオープニング映像
ハンバーガーが59円だった頃の時代、
戻りたくても戻れないあの頃に戻ってしまったようで、
早く現代の匂いを嗅がないとどこか遠くに行ってしまいそうな気分になりました。
映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』で、
敵の“イエスタデイ・ワンスモア”の放つ「懐かしい匂い」により現実から逃げ、
子供の頃に戻ってしまった野原ひろしの気持ちが初めて理解できた気がします。
苦しい……。
平成の世を席巻したB’z、SMAP、安室ちゃんも、
現在でも耳にすることの多いアーティストなので、
懐かしさとは程遠いんですよね。
思い出す理由がなかったけど、
記憶の片隅にあった音の方が、
懐かしさを真に感じるんだなと思った発見の共有でした。
(俺たちの平成って最高だったよな)