
頭痛と浅草
雨が降ると分かっていたけど、
ずっと新しい傘を買いたかったから
あえて持たないで行こう
数ヶ月前の証明写真があるけれど、
さすがに写真の髪が短過ぎるから
新しく撮ろう
結果、傘はギリギリにビニ傘を買うし
証明写真撮り忘れた。今ほぼ無職だから落ちる訳にいかない。
どうする。どうする。
もう一か八か履歴書の存在自体をなかったことにした
場所も相まってうっすら地面師みたいだった
傘を買わなかったのは、今日のこと
今日は浅草に行く日。
最寄りの駅から電車に乗る
雨が降り出したことをホームで確認する
神田で乗り換えるはず。
神田で乗り換えるはず。
前日の記憶を頼りに、そこまではわかっていた。
どの駅からだったか、頭痛がしていた。
神田で降りる頃、私は頭痛についてをかろうじて検索しながら、観劇が出来なかった場合についてを考えていた。観劇に向かっているので、そうなると色々必要なことがある。
気圧で頭痛かぁ~
は、
知らない地で病院に辿り着けるのか
に変わり、
浅草に到着
コンビニで傘を買う
コンビニの店員さんに薬局を聞く
カタコトの薬局の店員さんに即効性の高いものを尋ねる
こういうとき甘ったれなので、他人に不安を伝える
「今までなったことないくらい痛い」
「これが効かなかったら病院イッテネ脳ダカラ」
薬局を出ると、
浅草に初めて来たように感じた。
と、いうことにした
「へぇ~」
ひえ汗をかきながら、どこに向けてでもないポーズの浅草初めて感を出す
頭痛から気を逸らしたかったのか、こめかみを押して歩くのが恥ずかしかったのか、 何で とかももうないことをしながら歩く
こめかみを押したって無駄だけど、押してないと、多分魂だけが劇場に行くか、体だけが座席に座っているか
両方行くのは諦めようと思っていた
劇場に到着
治ってない
どうしよう…
ちょっと良くなったってことにした。
ホテルが観れる椅子に到着。(会場の座席)
後ろの席に知り合いを発見。目の前で声を2回かける。
2回とも目が合った状態での完全な無視。(しばらくしたら気づいてくれた)
全然傷つかなかった。むしろおかげで一瞬気が紛れた。
スモークのかかった舞台がみえる。浅草の劇場の椅子に座れている。
頭痛という、日常へのサプライズ。
真逆のはずなのに、両方とも、私の何でもない日常に幻想のような時間を与えてくれている。
開演した。
『ホテル・アムール』傑作でした。
哀愁を通り越してあの世みたいな空気のラブホテルで起こる、
耳鳴りみたいな出来事。
何かを感じて欲しいとか、いい教訓を与えるとか、このことを伝えたいとか
そんなものなくても上質な時間は作れる
そういう点が、ナカゴーにも画餅にも共通してある気がしている。
ほんとに粋なことやってる。
何度も、ナカゴーを観ていると錯覚する時間があって、画餅を観ているのともまたちょっと違う、
もう終わってくれという時間が繰り広げられる中、もうずっと終わらないで欲しいと思う居心地がとてもホテル・アムールでした。
舞台が終わったら、もう治ることは諦めていた頭痛が完治してて動揺して、
舞台が終わったことも、頭痛が治ったこともまだ半分理解できずふわふわしたまま劇場を出ると、雨が上がってぼんやりと霧っぽい浅草の街。
閉園した花屋敷がちらっと見える。
まだ終わらないで
こう思ってるということは、ナカゴーを観たということだと思った。
本当に大変な創作に挑んで、実現してくれた神谷さん、チーム画餅の皆さん、出演者の皆さんのおかげで、
忘れられない「ホテル・アムール」観劇体験でした。
まだ終わらないです
まだまだ終わらないです
何回もずっと観たい。もう一回観たい。
めっちゃくちゃよかったです
