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ふつうのコピーライター。

先日、LANCHのウェブサイトをリニューアルした。大阪のスピッカートさんという素敵な会社にお願いしたので、想像以上に素敵になった。こちらです。

なんだか、すごくちゃんとした会社みたいだ。もちろん、普段から真面目にしているつもりなんだけど、クリエイティブに関して僕一人で担っているとは思えない規模に見えるという意味でね。デザインの力、感じるわ。

今回のリニューアルで一番時間をかけたのは、自分自身の仕事のスタンスの言語化だった。どんな姿勢で、どんなクライアントと、どんなゴールに向かうのか。そういったひとつ一つを、なるべく丁寧に言葉にしたつもり。文章ボリュームもずいぶん増えてしまった。でもいいのだ。ちゃんと読んでくれる人だけと仕事をすればいいのだから。

そして、オープンして少し経って、改めて読んでみたんですよ。自分の書いたものを。ふんふんふんと。で、思った。すごく「ふつう」なこと言ってるなって。

突飛なところなく。大言壮語なく。必要以上にカッコつけることなく。僕自身にとって、ごく当たり前がそこにあった。

よき。

続いて実績も眺めてみると、こちらもやっぱり、ちゃんとその会社のふつうになっている。え?この切り口どこから持ってきたの!?みたいな驚きはどこにもない。社会のふつうと、各社のふつうが、ちゃんと重なる言葉になっている。

よきだ。

そしてしみじみ、僕はこういうタイプのコピーライターなのだと思う。というより、そう成った、のだなと。

コピーライターはラブレターの代筆者である、という言い方がある。依頼者の切実な想いを、伝えたい相手に、受け取りやすく、届きやすく代筆する。その担い手がコピーライターであるという。実にロマンチックな表現だ。でも、いつの間にか、というよりもうずいぶん前から、誰もラブレターなんて書かなくなってしまった。愛の告白はデジタルだ。チャットだ、LINEだ、zoomもある、たぶん。

それが、人と人がデジタルで常時接続になった現代の、新しいふつうなんだと思う。そのふつうの世界で、コピーライターの、というより、僕の仕事のふつうも変わっていったように思う。

ラブレターの代筆のような一発勝負の仕事はほとんどなくなった。つくるのは広告ではなく、対象である商品の開発や、運営体制の整備、企業活動の指針づくりになった。納品は案件の終了ではなく、あくまで長い活動のひとつのマイルストーンに過ぎなくなった。

オリエンに出ることも、プレゼンをすることもなくなった。Slackやチャットワークでクライアントと常に進捗を共有し、一緒になって正解を探していくようになった。

成果のふつうが、いいコピーを書く、から、事業にポジティブな変化を与える、に変わってきた。

この変化は、クライアントとも常時接続になったというふつうの変化と、僕自身が小売事業をはじめたことで、ビジネスのふつうが拡張されたからだと思う。言葉の力は無限だということに異論はないが、コピーで人の意識や社会をどうにかしようと考えるのはふつうじゃない、のだ。


……なんてことをね、ぼんやり考えている日曜日の午前中。昔は、自分の凡庸さに辟易したものだけれど、ふつうだったから、自分の常識を変えながら歩いてこれたんだなと思う。さあ、次はどこにいこう。

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加藤 信吾|LANCH Inc. 左ききの道具店
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