あなたは、どこにいくの?
数年前に退職した前職の人からFacebookの友達申請があって、久しぶりにメッセージのやりとりをした。前職は社長も変わり、知っている社員はみんな辞めてしまった。彼はHRテック系の大手でマネージャーになったらしい。出世で何より。こうして繋がったのも、奇跡みたいなもんだよね、また次のミラクルがあったら飲みにいこう、なんて、たぶん果たされることのない約束をした。
今思えば、あれは最後の青春のようなサラリーマン生活だった。夢に誘われて、朝から朝まで働いて、折れて、去った。巨大なクライアントの直案件を経験できたし、ミートアップイベントで発表したり、投資家向けの資料が生まれるプロセスを間近でみる経験もできた。東京のITスタートアップ企業で働くという、欲とか金とか野望とかいろんなものをぶち込んで煮詰めたような一年だった。いい経験をしたもんだ。
その中でも、一番記憶に残るというか、学びがあったのは人の出入りの激しさだ。僕がそれ以前にいた会社は多くて15人ぐらいだったから、人を入れることには慎重だった。何しろ入社して2,3年はトレーニング期間。人間関係も密になるから社風とフィットするかがとても重要だ。
でも、スタートアップ企業はそうではない。ガンガン人が入る。そしてガンガン辞めていく。気がつけば知らない人が増えて、気がつけばいなくっている、この光景はかなり新鮮だった。と同時に、どうしてこんな出来たばかりの会社に、これほど人がやってくるのだろう、と不思議に思ったりもした。誰もが名前を知っている大企業から転職してきた人もいたし、フリーランスを辞めて来た人もいた。
その疑問は、自分を省みると氷解した。僕らはみんな、社長と同じ夢を見たんだ。いや、正確にいえば会社の「どこにいくか?」に興味を持って、人生の一部を賭けた。スタートアップ的な言い方をすれば、バスの行き先は決まっていたんだ。
翻って、いま、僕のメイン業務である受託制作業をしていると、そして周囲の制作会社を見渡してみると、つくづく「どこにいくか?」が作りにくい仕事だなぁと思う。「なにをつくるか?」と「どうつくるか?」はいくらでも語れるのにね。
でも、たぶん「どこにいくか?」は決定的に重要で、それを決められるかどうかが会社の寿命に関わってくるんじゃないかしら。そんなことを考えながら、LANCHの行き先を言葉にしようとしています。来年の春ごろには発表したい。
それにしても、もう完全に秋だね。サンマが最高にうまい。