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ちいさいお店の店長考 その①
オンラインショップ「左ききの道具店」を開店して丸3年と少し。僕はコピーライターとして日々の仕事に追われながら、ずっとこのお店を見てきた。
見てきた、というと少し他人行儀かもしれない。仕入れの原資を担ってきたし、運営のために手も動かしてきた。今となってはほとんど四六時中お店のことを考えてもいる。でも、このお店の発案者は店長で、すべての矢面に立つのが彼女であることを十分に理解しているので、やはり「見てきた」という表現が正しいように思う。その上での印象をごく簡潔に言えば、、、
ちいさいお店の店長はたいへんでおもしろい。
という、こどもみたいな感想だ。でも、本当にそう思うのだ。
類は友を呼ぶというのか、ちいさいお店の店長は、別のちいさいお店の店長を引き寄せる。いつのまにか、うちの店長の交友関係のほとんどは店長だらけになっている。会話に出てくるTwitterのアカウントも大体どこかの店長だ。
そんなわけで、僕もいろんなお店の店長を知ることになり、タイムラインが店長ばかりとなり、ときどき直接お話しもさせてもらったりしている。そんな時間を積み重ねていくと、店長経験のない僕の中にも少しばかり「ちいさいお店の店長像」とも呼べるものが生まれてくる。
正しいか正しくないかは分からない。ただぼんやりと輪郭が出てきたそのイメージを、ちょっと整理しようと思ってこのnoteを書き出そうと思います。たぶん数年後には変わってしまうと思うので、“その①”というエクスキューズも添えて。
僕が想像するちいさいお店の店長について
ちいさいお店の定義を考え出すと、つい規模の方に話が進んでしまう。売上月○百万円未満がちいさい規模だよね、とか。でも僕はそうは思わない。だって商品単価で違いすぎるもん。大事なのは店長の権限だと思う。具体的には「棚」と「接客」の最高責任者を兼ねているかで判別できる。
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「棚」とは、お店に並ぶ商品すべて。つまりお店の主役である商品の発注・選別の全権を握っているかがポイントになる。
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もしお店に専属のバイヤーがいれば、ちょっと大きなお店に近づいていると言える。規模拡大の基本は権限委譲なのだ。
ちいさいお店の「接客」は広い。来店されたお客さまとの会話はもちろん、メルマガひとつ、LINEメッセージひとつ、Twitterのつぶやきだってそうだ。
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つまり「お店としての外部コミュニケーション」はほとんどすべて接客に含まれる。
「採用」と「経理」についてはどうだ? とも思ったけれど、ちょっと理解が複雑になるのであえて外した。どちらもお店の根幹に関わるので、当然のように店長が関わる。でも、結構なケースで分担(社長とか)や外注(特に経理は)している。ぜんぶやっている人は、店長というより1人社長も兼ねているので超大変だなと思います。
お店に並ぶ商品は、すべて店長の目利きで選ばれたもの。お店との会話も(オンラインもオフラインも)ぜんぶ店長を通して行われる。つまり、ちいさいお店と店長は限りなくイコールに近づいていく。
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とりわけ、今はSNSを中心としたネット上の発信行為がちいさいお店の生命線とも言えるほどになってきて、この傾向に拍車をかけているように思う。
なにしろ、お店としての発言であっても書いてるの自分だし、店長としてと但し書きしても自分だし。お店のあらゆる発信が自分を通して行われる。さらに、ネット上には個人のスペースもあるのがまた厄介で。この辺り、お店との距離にバグが出ているケースもあって、本当に大変だなと思ったりしている。
ここ、もう一歩踏み込んでみます。
多くのちいさいお店の店長には、ネット上に大きく3つの人格があります。お店としての公式情報を発信する「オフィシャル」。お店の責任者であると公表して発信する「プロフェッショナル」。そして最後は肩書きを外した個人である「プライベート」です。
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発信の際は明確にアカウントとして分けられているケース(公式○○と、山田太郎|○○店 的な)もあるし、店長とお店が一緒のケースもある。でも、投稿する瞬間の人格は別というもの。
ただ、ネット上では「別人格」として受け止められますが、店長にとっては「使い分けた自分」でしかない。ゆえに、厳密に分割することは難しく、おそらく感覚的にはこのような感じになるのではないでしょうか。
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お店と店長は溶け合い、店長と個人も溶け合う。それぞれの発信内容は大小あれど影響し合い、なんらかの化学反応を起こす。店長の中で。そう。あくまで店長の中で。
これ、外から見ると、この3つの人格は完全に別のものなんですよね。でも本人は人格が溶け合っているので足を引っ張りあってしまうことがあって。
たとえば、SNSでお店アカウントより店長アカウントがすごく強い(フォロワーが多い)ケースで、店長が炎上してしまったり一時離脱した際にお店の活気そのものが失わたように見えたり。店長アカウントの強さと個人の境界が曖昧になって、いつの間にか「私すごいアピール」に走るアカウントになってしまったり。
店長は3つのアカウントを自由に行き来できるゆえに、最高責任者であるゆえに、この辺りを相当に意識しておく必要があるんじゃないかと思ったりします。
つまり、店長の戦略としての「信用の置き場」を考えるということ。ここについて、僕が今考えていることをもう少し整理してみます。
3つの人格には固有の関係性がある。
お店、店長、個人。どれがどのぐらい影響力を持っているのかをまずは意識する必要があって。これを分かりやすく「信用」と置き換えます。外から見える信用には差がある。各人格ごとに発信内容が違い、かつ受け取る人が違うために起こるものです。これはお店ごとに違った固有の関係性が生まれます。
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他の人格に引っ張られて、信用は拡大する。
それぞれの信用は、他の人格に多大な影響を及ぼします。たとえば、何の実績もない個人でも誰もが知る有名店に就職すれば信用を得やすい。逆にまだ商品すらないハリボテのお店でも、有名人がやると言えば強烈な信用が生まれたりもする。基本的には、影響力のちいさい人格の信用は、大きい方に引っ張られるように拡大します。
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始まりは、常に「個人」か「お店」の信用が先行する。
店長は、原則としてお店あってのものなので、お店より先行することはありません。開店当時、周りが気にするのは「どんなお店」か「誰のお店」か。そこに影響力があるのは個人とお店です。
スター型
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コンセプト店型
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店長の信用は、個人とお店を行き来し、ときに最大化する。
店長は接客の責任者なので、店長につくお客さまは時間とともに増えていきます。また個人としての「思想」や「哲学」を語ることで個人的なフォロワーを獲得することもできます。
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場合によってはお店の信用すらも凌駕して「あのお店」→「あの店長のお店」となり、良くも悪くも強力な影響力を持ちます。
といった特徴がを理解した上で、どのように自分の人格をコントロールすればお店の「長期継続」に寄与できるかを考えるのが重要なんじゃないかと思ったりします。
……そう、ちいさいお店のゴールって「長く続ける」なんですよ。強烈に成長させて大儲けしたいという人は早い段階で組織化と分業を進めるし、そもそもちいさいお店の形態を選ばない。長く続けたい。そのために一歩ずつ、着実に成長していきたい、というのがちいさいお店の成長戦略なんだと思います。
その戦略の中で、SNSを中心としたネット上での接客は重要度を増し続けているわけで。それをなるべくブレずに運営するためには、自分たちの立ち位置や目指す方向を定めていく必要があるのではないかと思ったりします。
ちなみに、左ききの道具店の場合は、公開からこんな感じで進んでいます。
①お店の信用先行(左利き市場というブルーオーシャン)
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②お店に引っ張られるように店長拡張
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③イベント等での直接接客の手応えからさらなる店長拡張を推進
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④オリジナルブランドHIDARI、さらに海外アカウントを増やしお店の信用領域を拡張中
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という感じです。
弊店長は「個人」のアカウント運営には一切興味がなく、一時期までは自分の顔を出す意義すら疑っていました。だからひたすら店長アカウントに注力できたのはよかった気がします。
現在は③と④を精力的に進めていて、具体的には、
インスタライブで顔出しだったり
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ラジオでちょっとプライベートの話もしたり
全商品情報に店長コメントだしたり
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そうそう、最近はYouTubeチャンネルも始めたんです。
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特にYouTubeは手応えを感じて、これからさらに注力していく予定です。もちろん顔出しです。当初、ここには社内議論がありました。個人が出過ぎることへの懸念です。でも、いろいろ考えていくうちに「商品を仕入れ、販売責任を負う店長こそが伝えるに相応しい」という結論になりました。
基本的には商品を愛を持って紹介する。それだけです。ここについては目標となる人がいて、それはジャパネットたかたの高田さんです。
テレビショッピングを見て購入したことがある人はわかると思うんですけど、「高田さんみたいになりたい!」という憧れで買う人はいないんですよね(失礼かもですが)。
あくまで、高田さんの深い商品理解、明確なベネフィット、お買い得なタイミング、そういったもので商品を購入する。商品を伝えるプロ中のプロだと思います。彼のように左ききの道具を伝えていきたい。そんな思いで引き続き運営していきます。
最後にもう一度シェアしておきますので、チャンネル登録よろしくお願いします!
追伸
かなり長くなってしまいました。ちいさいお店の店長さんの頭の整理や、これからちいさいお店を始めようと考えている人の参考になったらいいなと思います。ただ、書き終えてみて、まだ考えたい領域がたくさんあるので「その②」も書くかもです。興味ある方はフローいただきつつのんびりお待ちいただけたら幸いです。
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![加藤 信吾|LANCH Inc. 左ききの道具店](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/87920328/profile_c7dbd7077e71ab9eef618700b4dc3351.jpg?width=600&crop=1:1,smart)