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アマビエちゃんと加藤くんのお話 第35話『異界への道路標示』
僕が調布の街を歩いていると、気になる道をみつけた。
「スピードおとせ」という道路標示のある道の端に、
とても小さな道があり、「ここから先、異界」と地面に書いてある。
ここを歩いて行くと、世界を変質させてしまう不安定な緊張感を感じた。
ここを歩かなければ、僕のいままでの日常は続いていくのだろう。
とはいえ、異界に進めば、何か新しいことがはじまるかもしれないと思った。
そういう道が必要な時もある。
僕はそちらを選び、異界へと進んだ。
老人がいた。いや、本当に老人かどうかはわからない。人間かどうかもわからない。生物かどうか、わからない。
「こんにちは。」
日本語をしゃべった?いや、日本語に聞こえるだけかもしれない。
「来たね。」
緊張感が強くなる。
「加藤くんだね。」
つづく