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アマビエちゃんと加藤くんのお話 第6話『手袋』

アマビエちゃんと僕は今日も都内を散歩する。
楽しいけど1月だから、とっても寒い。手が冷えて、少し指が痛む。

『加藤くん、私の手袋、片方、貸してあげる。』

『ありがとう。でも、それだとアマビエちゃんの片手が寒くなっちゃうよ。』

『いいの。加藤くんとおそろいだから。』

『おそろい?』

アマビエちゃんは彼女の右手の手袋を外して、僕の右手につけてくれた。

『だって加藤くんも片手だけで手袋してるでしょ。わたしも片手だけ手袋してる。だからおそろい。』

『本当だ。おそろいだね。嬉しいな。アマビエちゃんと、おそろいかあ。すごく嬉しい。』

アマビエちゃんは左手に手袋をつけ、僕は右手に手袋をつけた。
そして、手袋をつけていない方で、手をつないだ。
暖かかった。
手も暖かかったけれど、心が暖かかった。
僕の心は暗い洞窟の奥にある固まった雪のようで、まだ凍り付いていたけれど、
もしかしたら、外は少しずつ春が近づいているのかもしれないと、思った。
1月なのにポカポカした。それぐらいアマビエちゃんの手袋と彼女の手は暖かかった。

つづく

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