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アマビエちゃんと加藤くんのお話 第41話『林檎劇場』

今日から林檎の行商をはじめた。
昔から林檎をそんなにうまいと感じなかった。林檎のシャキシャキ感も、あまりピンとはこなかった。りんごジュースは少し好きだったけど。

でも林檎を売ってみて、前より林檎のことが好きになってきた気がする。車にたくさんの林檎を乗せて行商に行く。

僕は運転免許がないから助手席でサポート役。林檎売りの師匠が世界の本質に関わるような、大事なことを教えてくれる。

「自分の心を開いて正直に伝えれば、相手も心を開いてくれるんですよ。」

世界の本質に関わることは、なんと林檎を売ることにもつながっているのだ。

車を走らせて、今日は練馬の住宅街の路地にとめる。

「青森産の林檎を行商で売っているので、少し見に来てください」と、たくさんの知らない人に声をかける。

すると、どんどん人が車に集まってきて、林檎やらりんごジュースやら、りんごジャムやりんご酢が、ものすごい勢いで買ってくれる。

林檎劇場だ。

売り手と買い手が一緒に劇をしている。大きなコミュニケーションの波に乗って、みんなが林檎を載せた車に集まり、喜んでたくさんの林檎を買っていく。みんな満足気で嬉しそうだ。

人はバラバラではなく、つながっている。みんなでコミュニケーションをしながら、物語を作っている。それを今日、実感できた。

林檎劇場がそこにある。


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