マガジンのカバー画像

アマビエちゃんと加藤くんのお話

44
アマビエちゃんと加藤くんが一緒に手と手をとりあって、この時代を楽しく生きていくお話です。
運営しているクリエイター

2021年1月の記事一覧

アマビエちゃんと加藤くんのお話 第15話『富士山』

アマビエちゃんと加藤くんのお話 第15話『富士山』

「今日も天気いいね。」

「加藤くん、富士山が見えるよ。」

「わあ、すっげえ。」

「東京でも富士山見えるんだね。」

「うん、アマビエちゃんに見せたかった。」

「うん。見れて良かったよ。」

「うまくいかなくて、落ち込んだ時も富士山を見たり、調布飛行場の周りを歩くと、少し元気がでるんだ。」

「いいね。また散歩しようね。」

「うん。」

「調布飛行場のカラス、元気かなあ。」

「きっと元気

もっとみる
アマビエちゃんと加藤くんのお話 第14話『強くなりたい』

アマビエちゃんと加藤くんのお話 第14話『強くなりたい』

『加藤くん、キツネがいるよ。』

『本当だ。ここにキツネもいるんだね。』

『わたし、キツネ大好きだなあ。』

『アマビエちゃんはキツネとネコとどっちが好き?』

『どっちも好きだよ。』

『じゃあ、アマビエちゃんにキツネコちゃんって
あだ名つけてあげる。』

『嬉しいなあ。私、あだ名に憧れてたんだ。
誰かつけてくれないかなって。』

『そうなんだ。良かった。』

『加藤くん、元気?』

『あんま

もっとみる
アマビエちゃんと加藤くんのお話 第13話『ずっとそばに』

アマビエちゃんと加藤くんのお話 第13話『ずっとそばに』

「調布飛行場、俺は毎日ここでスクワットしたり、ラジオ体操してるけど(笑)、アマビエちゃんと一緒に来るの2回目だよね。」

「加藤くん、前にもいた飛行機の真似しているカラスがいるよ!!」

「ほんとだ。飛び方が飛行機みたいだよね。」

「この辺り、私好きだな。ずっといられる。」

「アマビエちゃん、あのさ。」

「うん。」

「去年の12月のことだけど、ここにいつもの散歩にいったわけ。」

「うん。

もっとみる
アマビエちゃんと加藤くんのお話 第12話『アマビエちゃんが好きな街』

アマビエちゃんと加藤くんのお話 第12話『アマビエちゃんが好きな街』

今日はアマビエちゃんが好きな街を二人で歩いた。
アマビエちゃんの好きな街はキラキラ輝いていて、僕が住んでいる三鷹とはだいぶ違う。
素敵な画廊をまわって、アート作品がいっぱい飾ってある、本屋もいって、楽しくて楽しくて。

「加藤くん、私のお気に入りの喫茶店があるんだ。はいろう。」

「うん。」

「このお店の紅茶もね、デザートもすごく美味しいんだよ。」

「あのさ、アマビエちゃん、こんなこと言いたく

もっとみる
アマビエちゃんと加藤くんのお話。第11話『アマビエちゃんの帰還』

アマビエちゃんと加藤くんのお話。第11話『アマビエちゃんの帰還』

「ただいま。」

「おかえり。」

「加藤くん、元気だった?」

「元気じゃなかった(笑)。」

「うん、私も元気じゃなかったよ(笑)。」

「でも。」

「うん。」

「今、元気になった(笑)。」

「私も(笑)。」

「あのさ。」

「うん。」

「俺、アマビエちゃんが帰ってきた時に、これだけは言いたかったんだ。」

「なに?」

「俺は君を信じているから。」

「うん。」

「君がすることを

もっとみる
アマビエちゃんと加藤くんのお話 第10話『加藤くんのひとりごと』

アマビエちゃんと加藤くんのお話 第10話『加藤くんのひとりごと』

今日は雪が降るといっていたけれど、雨だった。
用事があって、根津に行って、それから上野まで歩いた。
不忍池でユリカモメ達がのんびり、棒の上にとまっている。

「生きていくのは、大変だなあ。」

やっぱり一人だと元気でないな。
アマビエちゃんがいれば、いっぱいお話して、笑って、励ましあえるのにな。
ユリカモメは活き活きしていて、うらやましかった。
きっと彼等も本当は大変なんだろうけど、そんなそぶりは

もっとみる
アマビエちゃんと加藤くんのお話 第9話『加藤くんの一日』

アマビエちゃんと加藤くんのお話 第9話『加藤くんの一日』

雨がふっている。
アマビエちゃんは元気かなと、思う。
アマビエちゃんのことばかり考えている。
はやく絵本を描かないと。
イベントの企画を考えないと。
あれもしなくちゃ、これもしなくちゃ。
でも、
やっぱり、アマビエちゃんのことを考えてしまう。
アマビエちゃん、寂しくないかな?
ちゃんと仕事してるかな?
夜はしっかり寝ているかな?
様々、心配になる。
アマビエちゃんと出会ってから、
僕の毎日は大きく

もっとみる
アマビエちゃんと加藤くんのお話 第8話『ネブラスカ(後編)』

アマビエちゃんと加藤くんのお話 第8話『ネブラスカ(後編)』

「ただいま。」

「おかえり。」

「ネブラスカにいってきたよ。」

「すごいね。自転車で行ったんでしょ。寒くなかった?
暖かいお茶を飲みな。」

「うん、ありがとう。ネブラスカにいったら、常連のお客さん達がいてさ、
信さんを偲んでいたよ。」

「そう。みんな彼のことが好きなんだね。」

「うん、みんなから、信さんのことを大好きな気持ちが直接伝わってきたよ。ネブラスカという飲み屋をなんとか残したい

もっとみる
アマビエちゃんと加藤くんのお話 第7話『ネブラスカ(前編)』
 

アマビエちゃんと加藤くんのお話 第7話『ネブラスカ(前編)』  

「アマビエちゃん。」
 
「うん、どうしたの加藤くん?」
 
「さっき友達から連絡があったのだけど、僕がお世話になった高円寺のバー、ネブラスカの信(しん)さんが1月12日に亡くなったらしい。
僕が愛知県から東京に出てきて、高円寺の風呂無しアパートに住み始めた時、徒歩1分の近所に、ネブラスカはあった。信さんには、たくさんお世話になった。
つらい。」
 
「昨日だね。そうか、寂しいね。」
 
「うん、

もっとみる
アマビエちゃんと加藤くんのお話 第6話『手袋』

アマビエちゃんと加藤くんのお話 第6話『手袋』

アマビエちゃんと僕は今日も都内を散歩する。
楽しいけど1月だから、とっても寒い。手が冷えて、少し指が痛む。

『加藤くん、私の手袋、片方、貸してあげる。』

『ありがとう。でも、それだとアマビエちゃんの片手が寒くなっちゃうよ。』

『いいの。加藤くんとおそろいだから。』

『おそろい?』

アマビエちゃんは彼女の右手の手袋を外して、僕の右手につけてくれた。

『だって加藤くんも片手だけで手袋してる

もっとみる
アマビエちゃんと加藤くんのお話 第5話『散歩』

アマビエちゃんと加藤くんのお話 第5話『散歩』

僕とアマビエちゃんはよく、長い散歩をする。
どこまでも歩く。
三鷹から出発して、永福町、新宿、市ヶ谷、お茶の水、東京、両国、2人はどこまでも歩き続ける。
歩きながらいつまでも話し続ける。
1時間、3時間、5時間、8時間、10時間をすぎたあたりから、時間の感覚はなくなって、いったい今どこを歩いているのかもわからくなる。
でも散歩のいいところは目的地のない所だから、迷ってもいいん

もっとみる
アマビエちゃんと加藤くんのお話 第4話『一緒に星を見る』

アマビエちゃんと加藤くんのお話 第4話『一緒に星を見る』

今晩は、空気が澄んでいる。
アマビエちゃんと僕は一緒に星をみに行った。
 
『加藤くん、あの星はなんていうの?』
 
『ええと・・・わからないなあ。』
 
『じゃあ、あれは?』
 
『ええ、たぶん、太陽じゃない星だと思う』
 
『それは・・・私でもわかる(笑)』
 
『ごめん、星の名前とか、ほとんど知らなくて。今度勉強しておくね。』
 
『ううん、別に決まっている名前じゃなくていいから、加藤くんが

もっとみる
アマビエちゃんと加藤くんのお話 第3話『焚き火』

アマビエちゃんと加藤くんのお話 第3話『焚き火』

2021年1月の、どこまでも青く晴れ渡った
ある日、アマビエちゃんと僕は焚き火をした。

『加藤くん、火と薪が音を出してるね。』

『うん、とってもきれいだね。』

『いつまでも見ていたいな。』

『うん、ずっと見ていたい。』

『加藤くん…』

『アマビエちゃん、何?』

『どうして泣いてるの?』

『え…』

『どうしたの?』

『ごめん』

『なんで泣いてるの?』

もっとみる
アマビエちゃんと加藤くんのお話
第2話『母親と猫』

アマビエちゃんと加藤くんのお話 第2話『母親と猫』

『ねえねえ』

『なに?アマビエちゃん?』

『加藤くん。はやくお話聞かせてよ。』

『うん。そうだな、僕の母親の話をしよう。』

『わあ、楽しみだな。』

『僕の母は岐阜県の山奥で生まれたんだ。』

『へえ。岐阜県の山奥!!遊びにいってみたいな!!きっと素敵な葉っぱがいっぱいあるよね。』

『うん。アマビエちゃんが気にいる葉っぱがたくさんあると思うよ。』

『わあ!!岐阜県、遊びに行く。』

もっとみる