トランスカップルの就活!準備編
僕はトランスジェンダーで、Xジェンダーまたはノンバイナリーのジェンダーアイデンティを持っています。ホルモン治療などはいまのところ行っていません。見た目は「男か女かわからない」「どちらにも見える」と言われます。
僕の彼女はシス女性で、見た目はおそらく女性に見えます。
ふたりは同じ大学で同じ学科・同じサークルの先輩後輩として出会い交際しました。僕が学生サークルの設立・代表者で、彼女は次期代表として活動していました。そして、在学中に同棲をスタートしています。
僕が休学などを経ているので、彼女とは同じ年に就活を行いました。
なお、僕の場合の就活失敗談はこちら↓
あわせて読むと何が起きたかわかりやすくなると思います。
また、この文章は
こちらの運動に賛同した上で書くことにしました。
就活シーンでの性差別が少しでもなくなるよう、ご協力お願いします。
ここからは、トランスジェンダーの僕とシス女性の彼女のふたりがそれぞれどのように就職活動の準備を行ったか、そこでどんな困りごとがあったかを書いていきます。
僕の場合①
サークル活動と改名まで
回り道をしたかもしれないけれど。
まず、学生生活の中で出生時に付けられた名前で呼ばれることが苦痛だったため、学生課にふたつの要望を出すことに。
戸籍上の名前でなく通称名で学生生活が送れるように改善してほしい(学籍簿や学生証、在学証明書を通称名に変更させてほしい)
名簿などの性別欄をなくしてほしい
始めは検討しないとの返答だった。
そこで、学生サークルを立ち上げた。「セクシュアルマイノリティについて知る・考える。セクシュアルマイノリティが過ごしやすい大学にする」が目的。当事者にかかわらず多くの学生や教職員を巻き込んで活動した結果、教職員内にセクシュアルマイノリティ理解や配慮のための委員会が発足した。
学内で「ダイバーシティ・インクルージョン推進宣言」が出され、学生課に出した要望が通った。
通称名への変更や学籍簿の性別欄の削除にあたっては学内のシステム改修が必要になるため、すぐにという話ではなかったが、ようやく「セクシュアルマイノリティが過ごしやすい大学にする」の目的が少し叶ったことになった。
僕自身は、休学して働いているあいだにシステム改修を待ち、大学で通称名を使用したうえで、戸籍上の改名を済ませてから就活に臨みたいと考えていた。
復学後、通称名で学生証を作り、通称名の在学証明書やこれまでの使用実績を持って家庭裁判所へ。改名の申し立てが受理され、晴れて戸籍上の名前を変更できた。
ここまでがトランスジェンダーの僕にとっての就活のための準備であり、0歩目だった。
彼女の場合①
大学のキャリアセンターへ相談
いきなり就活が怖くなっちゃったけど。
聞いた話だとすでにキャリアセンターの評判は悪く、公務員志望の友人が「え、公務員?なれるわけないじゃん」と脅された(その後区役所職員として受かった)とか。
彼女も例に漏れずひどい対応をされたようだ。
職員に「どうしたいの?」と聞かれたため、正社員を希望すること、放課後等デイサービスの児童指導員になりたいことを伝えた。すると、「なんで非正規じゃだめなの?」と。(え、就活セミナーでは安易にフリーターにならないよう教えてくれたよね…?)
彼女は将来子どもが欲しい。しかし今のパートナーと自然に子どもが出来ることはないため、それ相応の医療福祉(体外受精など)を受ける可能性がある。すると、お金はかかるし、しっかりと産休や育休の制度がある会社で正社員として働いたほうがいいのではないか、と思っていることを口にする。
職員からは怒涛の反撃。
「パートナーが正規で働いたらそのお金ですればいいことでしょ」(パートナーが正規で私が非正規だといつ決まった?)
「ふたりで協力すればいいんだよ、子どもはひとりではできないんだよ?」(私はひとりだったとしても子育てがしたい)
「なんで起こっていないことを不安視するの」(将来への備えが必要だということを心理的な不安として片づけたのはどうして?)
「とにかく正社員は勧めない、正社員なんてぜいたく」(どうして喧嘩腰なの?ここは学生の希望に沿った支援をするところではないの?)
なんなんだこの人。学生を使って憂さ晴らしがしたいだけ?
何が言いたいのかわからないし、支援してくれないならもう帰ります、と言って出ようとしたところで「どうして次の面談の予約を取っていかないの!」
恐ろしく、そそくさと帰ってきたのであった。
僕の場合②
ハローワークに行く
ちょっといい気分にさせてもらえたけど。
良い求人はないものかと探すために新卒応援ハローワークへ。改名したてのホヤホヤであることを伝えると、「男性名から女性名?女性名から男性名?」と混乱させてしまい、他者から見た中性力がアップしているのを感じた。
履歴書の性別欄を彼女のアイビス(お絵描きソフト)で消してもらってとても助かった。履歴書の内容は「かなり良い」「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)がしっかりしている」と褒められ良い気分。特に直されなかった。
面接の練習をし、話すのに苦手意識はないようなので自信を持てば大丈夫だろうと言われた。
ハローワークには福祉系の求人が少なく、「自力で探してくるように」とのこと。知人からの仕事の紹介や就活サイトでの職探しと並行しながら相談に乗ってもらうことにした。
通うのに少し時間が空くと「最近どう?」と気にかけて電話をくれる優しい担当者さんだった。
彼女の場合②
ハローワークに行く
なんだか誤解があるようだけど。
キャリアセンターでの相談で傷を負った彼女。「もう誰かに不安を打ち明けるのはやめる」「具体的に決まってからしか話してはいけない」との思いを胸に、面談を滞りなく済ませる。履歴書の添削をしてもらい、面接の練習を行い、求人票の見方を教えてもらった。
履歴書にはセクシュアルマイノリティの権利運動を行うサークルで活動したことが書かれている。彼女は一見セクシュアルマイノリティには見えない姿なのだろうか。「当事者じゃないのにこんなに活動してすごいね!」といった感想を持たれている。(僕は他人に同じ履歴書見せると「自分の権利にうるさい厄介者」扱いです)
僕の場合と同様、福祉系の求人は少ないので企業を自力で探すことに。
僕の場合③
服装を決める
男女二元論にひっかかりはあるけれど。
性別を意識したくない。どちらでもないと思っている。でも、就活のマナーに「どちらでもない」はない。
トランスジェンダーとしてサークルや講演活動を行ってきたことを武器にして就活したいと思っていた。だから、パッと見でトランスジェンダーであることを示すには、男性の格好のほうが説得力があると思った。男性として働きたいわけではないけれど。
今もそうだが当時もお金がなかったため、弟のメンズスーツを借りて、基本的な就活のマナーは男性のものを適用することに。
でも、髪を短くそろえすぎると顔の輪郭が目立ってやや女性らしくなってしまう。
マスクをすると、目だけが見えるので少し可愛らしくなってしまう(目が嫌いなわけではないけれど、ぱっちり二重なんだよねー。)
私服であればメンズやレディースにこだわらず体型を隠せるものを選んでいるのに、就活においては男女二元論的な服装に押し込められることによってそれが通用しなくなる。
なにより、就活という行為が性別(広義)を意識させられすぎてつらかった。
彼女の場合③
服装を決める
そもそもスーツを着たくないけれど。
シス女性ならよくあるリクルートスーツでいいんじゃない?と思うのが一般的な感覚かもしれない。でも、彼女はそんなに画一的な身体をしていない。
就活用のスーツにはあるべき規格がある。そして、それに合わない人もいる。
身長、肩幅、骨格…女性的ではない身体。それに無理やり押し込めれば、不格好になってしまう。見た目で落とされるのではないかと不安になる。あまりに似合わないこの格好のほうが失礼なんじゃないだろうか。だったら似合う格好のほうが良いのではないか。
メイクができない。
肌が弱く、荒れたり、かゆくなったり痛くなったり。してこなかったから今やろうとしてももちろんできない。ただ不器用さが目立つだけ。
毛をそることができない。
肌が弱いから脱毛ができずにいたが、タイトスカートを履くなら毛を剃ったほうがいいとされている。しかし、やったことのほとんどないカミソリで脚は血まみれの傷だらけに。余計に脚を出したくない…。
ヒールの靴で歩けない。
身体のバランスが取れない。
スニーカーで面接先まで歩いて、パンプスを持っていって直前で履き替える。でも靴は就活用のこんな薄い鞄に入らないし。ビニール袋を持参したが、面接先で袋を抱えているのはおかしいと思ったので、袋に靴をしまい、道端に置き捨てて向かった。(面接後に無事回収)
僕の場合④
動きやすい服とはなにか
実は胸をつぶしているだけでも少し動きにくいけど。
児童を対象とするからか、施設見学の際「動きやすい服」で来るように言われる。
しかし、動きやすい服とはなんなのか。本当に「動きやすい服」を着てきてほしいのか、保護者や職員に失礼のないように「動きやすそうに見える服」を着てきてほしいのか。それらは似ているようで少し違うのだ。
面接と見学が同日だった場合もあり、ウィンドブレーカーの中にシャツとネクタイ、チノパンのスタイルで通していた。それが正しいのか、失礼ではないのか、今となってもよくわからない。
これも涼しい時期だったからできた格好であって、夏だったらポロシャツだろうか。ネクタイはしなくていいのか。そういうことこそ大学のキャリアセンターに相談に乗ってほしかったな…。
彼女の場合④
動きやすい服とはなにか
動きやすさなんて人それぞれだと思うけど。
毎日スカートを履いているのでズボンよりスカートやワンピースの方が動きやすい。
ぽっちゃりさんあるあるなのだろうか、股ずれもあり、パンツスタイルだと動きづらい。物が詰まってパンパンになった袋が曲がらないように、中身がいっぱいのズボンは曲がらないし痛いし座れない。
……ということを先方に理解してもらえるかわからない。
本当は自分にとっての動きやすさがあるのに、相手にとって動きやすい服と思われるものを着なければならないのが面倒だった。
結局は、ある会社ではジャージ、別の会社ではオフィスカジュアルっぽい襟付きのブラウスにロングスカートを合わせて行った。後者に受かったので、あまり考えすぎなくてもよかったのかもしれない。
僕と彼女で語る就活の怖さ
就職のためならなんでもしなさいという風潮を感じるけど。
彼女「とにかく就職活動に関する相談先がないよね。キャリアセンターでもハローワークでも不安なことを相談できない。働け働けの一点張りでダメなところを指摘してくる。応援してほしい人に常にジャッジされるのがつらかったな。」
僕「就活自殺という言葉もあるほど就活の苦しみで人は死ぬのに、そのケアをする先がないのはおかしいよね。大丈夫だよ、と励ます人はどこを探せばいるのだろう?人を死に追いやるほど追いつめている自覚をしてほしいと思う。」
彼女「大企業向けの就活マナーばかりがネット上にあふれていて、大学でもそれしか教えてくれないのもどうにかならんかなって思う。福祉系だとほしい人材やマナーや服装も変わってくるんじゃないかな。働く服装と面接の服装違うわけだし」
僕「企業は本当にリクルートスーツにこだわっているのかな?なんでもいいから身ぎれいにすればそれでいいんじゃないの?マナーを作っているのは誰なんだろ。」
彼女「服を揃えるのだって大変だよ。お金がないから就活をするのに、どうしてこんなにお金がかかってしまうのかな。ここまで学生に負担させるのは本末転倒すぎやしない?」
僕「個性を出したいわけではない。自分に合う格好で、かつ失礼にならないものを選びたいだけ。それがどうしてこんなに難しくなってしまうのだろう。お互いに気持ちのいい服装を目指したいだけなのに。」
続きはありますがここで再度紹介です。
こちらの活動に賛同しています!
署名よろしくお願いします。
SNS等のリンクもあわせて紹介します。
なんとか就職までこぎつけたけど。
そんなわけでふたりとも難航したわけですが、就職につながった方法やそのゆくえは有料にしました。
福祉・児童・障害分野の方には特に役立つ可能性があります。
また、ふたりの友人であるシス男性(子どもに関する業種で就職活動を経て最終的に教師になった)にも就活がどんなものだったか聞いてみました。こちらも有料にしておきます。
ご支援の程よろしくお願いします。
僕の場合⑤
リタリコキャリアで就職活動
プロモーションではないけれど。
企業とのファーストコンタクトが電話だと困る。女性的な声が出てしまうと、第一印象が女性として位置づけられてしまうためだ。そこからトランスジェンダーの話にもっていくのは少し心が重い。そのため、求人サイトに登録した。
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