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アトランティスZERO【舞台用台本@90分】

アトランティス ZERO

※パソコン閲覧推奨。
 

【タイトル】アトランティス ZERO


作/演出 香取 大介 
 【登場人物】◆男性 ◇女性 ◎どちらでも 
       男性4名 女性4名 計8名  
 
◇コウ(井部小羽)/ アトランティスにいた女
◆ジユウ(堀仁友)/ リーディング予言者 
 
◇エフェメラル / やたらとミーハーで純真なアトランティス女子 
◆クレアチオ / 失意の破壊者(アンドロイド) 
◎メタ / 神の法則の子供達の神子・古代人種。両性具有する者 
◆グロフ / 神の法則の子供達の末裔。信仰哲学者 

◇ ニヒル / ポセイディアの女神(アトランティス国家の象徴)
◎ナキ / アトランティス国将軍防衛隊長官 
◆アヌン / 悪魔の息子の末裔・アトランティス国将軍 
 
【注意】 
※本役以外にアンサンブルとして登場。
 →本編最後にアンサンブルの配役を明記(参考までに)
※言葉で世界観と擬音を表現する。

序文ーーー

― ―― 人間たちはいつどこで誕生したのだろうか

 遠くはるか昔に、そんな物語の一つ、アトランティスの物語がある。この地では今から五万年前より三度の地殻変動を伴う大災害があった。それらはすべて、人災であった…。
人間がこの地球に現れたのは1000万年余り昔のことである。霊体と言われる魂が肉体を持ち始めたのが始まりである。人間が地上に現れてから度々、変化が起こるようになった。多くの土地が消え、また多く現れ、そしてまた消える。地球はまるで生きているようにこんな事を繰り返していた。当時地球上には一億三千三万の人間の霊魂が存在した。人類が地球上に、その惑星の支配者として現れた時、人々は同時に五つの場所に姿を現した…。
現れた当時の人間たちは、物質的な肉体ではなく、想念体として存在していた。その人間が思考を通すことによって、ものを実体化するなど、数々の能力を開花させていった時代であった。この想念の投射体であった者はアトランティスの地にも居た。肉体を持つ者たちは、一つの体に両性を具有していた。そしてその者は、500年から700年の寿命を生きた。

何度もあったアトランティスの破局

アトランティス大陸の最初の破局は今からおよそ5万年前。この頃、人間たちの間に不穏な動きがあった。霊的な事柄を、物理的な肉体を持つ人間たちのわがままに使ったことで、この大陸の最初の沈没をもたらした。この実体は、悪魔の息子たちと、唯一なる神の法則の子供たちだ。この二つの間に、戦いが生じたのだ。唯一なる神の子供たちは、魂とは神からの賜物であると信じ、種族が動物の特徴や付属器官を持たずに純潔のままに保たれるように務めた者たちだった。彼らは、物質世界に深く取り込まれてしまった人たちを助け、神の創造物としてその役目を取り戻す手助けをしたいと考えていた。一方悪魔の息子たちは、模範も道徳も持ち合わせない人々で、他者の犠牲の上に自己の感情を満足させることを良しとしていた。彼らは自分たちのような者ではない魂たちを、奴隷か機械のように扱っても良いとしていた。「物」として見下していたのだ。そして前者は500年から700年間生き、後者は50年から70年間生きた。しかし互いに正義を突きつけ合い、生涯にわたって戦い続けた。こうして最初の破局が訪れた。種族や人々を純粋なままに守り抜いていた人々が軽視され続ける中、人類は破壊的な力を持ち込み、指導的立場にあったものがこれを使った。そしてこの力は、地底の中の天然の資源と相まって、地上に火山噴火を引き起こし、最初の海底沈没が始まった。当時すでに、各主要都市に高エネルギー宇宙線と呼ばれるレーザー兵器が設備されていたのだ。まさに死の光線であった。
 
それから2万2000年後、二度目の破局が訪れた。一度壊滅状態にまであった人類は、引き継がれた高度な文明でまた同じことを繰り返したのだ。二度目の破局において、アトランティスは、今回の舞台となるポセイディア島といくつかの島々に分断されてしまった。
 

アトランティス文明のイメージ


三度目の破局。最後のアトランティス人と呼ばれた者たちが、今でいうところの人間の姿をとり始めてから、だいぶ長い年月が経っていた。この頃にはほぼ人類の全部が50年から70年の年月を生きる者として存在していた。身長も170から180センチであり、体重も70キロから80キロで体躯も良かった。しかし、悪魔の息子たちと、神の法則の子供たちの対立は変わらず繰り返され、後者は労働者階級も低く、圧政の下に、大きな負担を負わされ、虐げられ、交際の楽しみや労働の成果の楽しみなどどんどん奪われていた。その中に希に自分の特別な才能を伸ばし、この最後の破局の時代をそれぞれの正義の下に生き抜いている者たちもいた。
紀元前1万1千年から1万年の間に、特殊な力を備えた(霊的な)者たちの何人かは、残されたこの島々が崩壊して沈没する日が近いことに気づくに至った。そしてこのアトランティス国から逃げ出すよう促す者も現れた。国力低下を恐れた国家指導者たちは、それを阻止し、むしろ、資源不足などの理由から他国(他の大陸等)を侵略できる力を備え始めた。

古代人の希望

アトランティス最後の消滅を迎える時、一人の女神は一つの希望を予言した。この美しいポセイディア本土において、この国を消滅させる者が現れる。そして彼自身によって平和の子供を見出すであろう。そしてこれは、未来、一万年後に私たちの前に来られる平和の君の前の話である。
 


恐るなかれ、信仰を持ち続けよ。
汝と共にあるものは、妨げになるものよりも偉大だからである。
まさに天は落ち、地は変わり、天空は消滅するとも、
主にある約束は確かであり、揺るがない。
かの日にそうであるように、汝の同胞の命と活動の証として…
そう、私たちの魂はこうした体験を通じて続いていくのだ ――――
 

高次元からのメッセージ


今日一日の汝の務めを果たせ。
明日のことは明日自身が思い煩うであろう。
主はなんと言われたか?
「義人は地を継ぐであろう」と言われたのである。
我が同胞よ、汝には受け継ぐものがあるだろうか?
 

アトランティスZERO【本編】

プロローグ

――― 暗転より音楽。そしてオープニングダンスから始まる。
舞台は西暦2037年日本から1万年と少し前のアトランティス国、ポセイディア島へ移り変わる。当時のアトランティスの中心都市は荒んでいた。支配する側とされる側と明確に分かれ、後者は人間扱いされずただ支配する側のために使われていた。
―――ある日。突然ジユウのところに訪れたコウ。この7年間彼女の中に抱えていた違和感を打ち明けにきたのだ。彼女の纏うオーラから不思議な波動を感じたジユウは彼女にリーディング治療を施す(チャネリング)そして見えてきた世界はなんと、10000年前のアトランティスだった。澄んだ海、天空を貫くように見える壮大な山。輝く水路に囲まれた天然の宝石のような島に、黄金で埋め尽くされた建物たち。その大自然は心を和ませ自然と肉体が融和するかのような感覚になり、その人工物は荘厳で見るものを魅了し圧倒的な存在感を放つも、どこか逃れられない威圧感を人々に与えていた。神が人間を象ったと言われる所以となった頃から続く三度目の戦いの終焉の頃、圧倒的な力量差が返ってこの大地の消滅を招こうとしている。その時代の変わり目に人々は恐怖とも歓喜ともとれる表情で舞い踊る。合一とバランス。集合的魂の調和と輝き。希望の光。そして分離と断絶という不協和音。絶望の闇。まさに夜が開ける直前の闇が最も濃くなり、そして言葉を失うような夜明けの陽光を表現するダンス。

一幕〈捕捉〉

とある都市のスラム街。雑多な建物の影にコウとジユウは降り立つ。
二人はあたりを見回しながらお互いの無事を確認する。
するとそこに、直属の兵士C 、D、G、H(軍隊)を引き連れたナキが突然侵入してきた二人を捕捉するために現れる。兵士たちはごっついレーザー銃の様なものを両腕に抱えてそれぞれに現れる。兵士たちの襲来に一瞬慌てる二人だが、瞬時に冷静さ取り戻し、蹴散らしていく。兵士たちは引き金を引く暇もなく逃げられる。「追え!」とか「逃すな!」とかそれぞれに声を掛け合いながら、一旦引くナキ達。
 

スラム街のイメージ


ジユウ  「奴らは原始人なのか、未来人なのか。圧倒的にぶっ飛んでるぜ。」
コウ   「ジユウ先生がリーディングしてくれた通り、1万年前は今と変わらず、むしろもっと未来的に文明が進化してるみたい。」
ジユウ  「いくら科学文明が発展してても、扱ってる人間がゴミみてぇに救えねぇ暴力者だったら、そりゃもう世界は終わるわな。」
コウ   「それにしても、あいつらあのまま私たちを見過ごしてくれるのかしら。」
ジユウ  「さぁどうだろうな。とりあえず歓迎されてなさそうだ。こっちは舐めてかかられてた分脅かすことができたが、またすぐに戻ってくるかもな。」
 
突然ナキが一人で現れる。結構堂々と。
 
ナキ   「そこまでだ! 奇妙な侵入者め!」
ジユウ  「やっぱり来たか!」
ナキ   「お前! しばらく黙ってろ。」
ジユウ  「(雰囲気に一瞬気圧される)うぅ、」
ナキ   「ここ、機械みたいなボコボコがいっぱいある壁。そして掴むところが大っきいレバー。(レバーを下げる動作)ガッコーン!」
ジユウ  「わ、なんだなんだ?」
ナキ   「ギーン、ガシャーン。柵が降りた。お前たち逃げられなーい。」
ジユウ  「(柵があるマイム)わ、くそ、しまった。」
ナキ   「ふっふっふ、(客席に向かって説明)私の肩に四角くて硬くてがっしりしてる箱みたいなの付いてる感じ。その箱の先にはビーンてなんかビリビリした光のようなのが今にも飛び出てきそうなアンテナみたいなのが立ってる。(取り外す動作)ガッシャン。」
ジユウ  「わ、やべえ、すっげえごつい武器みたいなの取り出しやがった。」
ナキ   「(不適な笑みをジユウたちに向ける)ふん。」
ジユウ  「こ、殺されるのか、ここで? 早速?」
ナキ   「(取り外した箱のアンテナ部分をジユウたちに向け)。貴様ら、さっきはよくもやってくれたよな?覚えてろよ。」
ジユウ  「(怯えながら)わ、ごめんなさい、とりあえず誤解です。話を聞いてください。」
ナキ   「(箱を耳に当て)あ、もしもし将軍ですか?」
ジユウ  「って電話かよ!」
ナキ   「ええ、そうなんです。早速男1名、女1名捕捉完了いたしました。どうやら神の法則の子供達ではなさそうです。他国からの侵入者でしょうか? …わかりました。では、今から二人を将軍のもとへお連れいたします。(電話切る音)ガチャ。ふぅ。」
ジユウ  「ふぅって!」
ナキ   「それでは、お前たち二人を連行する。名前は?」
コウ   「私は、…コウ。」
ナキ   「まぁいい、後で聞く。」
ジユウ  「結構自由だな、」
ナキ   「(いきなり裏拳でジユウを殴り飛ばす)」
ジユウ  「(横っ面を叩かれて吹っ飛ぶ)っう! なんだよ、強えじゃん、」
ナキ   「いいからついてこい。スーンガチャ(コウに手錠はめる音)(ジユウを起き上がらせて)スーンガチャ(手錠をはめる音)」
コウ   「ジ、ジユウ先生…」
ジユウ  「ここは大人しくついていこう。」
ナキ   「行くぞ。抵抗すると危険だ。静かに着いて来い。」
 
ナキはコウ、ジユウを先導して防衛軍本部につれていく。
ナキ達が見えなくなってから物陰よりエフェメラルが入ってくる。
ナキ達の様子を確認し、街中へと消えていく。

二幕〈回想・母との別れ〉

回想シーン。

舞台は赤と金がきれいに混ざったような茜色になる(以後回想シーンは茜色)。人影A、B、C、D、E、F、G、H、がそれぞれに舞台に入って来て、ザワザワと蠢きざわめいている。そこに、子供時代のコウが入ってくる。

コウ   「ママ! ママ!」

人影GはFに捕まり襲われている。他の人影は客席からちょうど良い感じでその様子を隠している。

コウ   「ママ、どこ? なんの音? 何があったの?」
人影G  だめ、こっちに来ないで!
コウ   「ママ、どこ?
人影G  コウ! 来ちゃダメ!」
コウ   ママ! ママ!
人影G  逃げて! (息が詰まる声)うぅ、(掠れた声で)逃げて、生きて…、
コウ   ママ! (ようやく人影Gを見つけたが、すでに事切れている)!
人影F  邪魔者は消せ!
 
スローモーション気味に動いていた他の人影たちが激しく動き始める。そのまま子供のコウに襲いかかる。その間に人影Gを連れて人影Fは上手奥から去っていく。一つの人影ずつ、コウに襲いかかる。コウは一つ一つの攻撃をなんとか掻い潜るが、最後は力尽きて倒れ込む。その傍にただ立っている人影H。

二幕その1〈国家防衛軍本部〉

場転。国家(将軍)防衛軍本部の司令室。
コウはそのまま横たわって休んでいる状態で板付き。

ジユウとアヌンがナキを伴って談笑しながら部屋に入ってくる。
照明が変わり場面が移ると同時に人影Hは消えるようにはけていく。
 

 
ア&ジ  「(談笑しながら)、、、」
ナキ   「アヌン将軍! いいのですか?このような輩とそんな楽しそうに会話されていて、」
アヌン  「いいんだよ、未来からの客人だ。面白いじゃないか、Mr.ジユウ。大歓迎だよ。」
ジユウ  「ありがとうございます。」
ナキ   「はぁ、」
アヌン  「ナキ長官も少しはマイルドになった方が男にモテるぞ?」
ナキ   「自分には必要ありません。」
アヌン  「私たちはなんでも手に入るのだ。遠慮はもったいない。」
ナキ   「(休んでいるコウに)いつまで休んでいるのだ! 起きろ!(叩き起こす)」
アヌン  「八つ当たりはやめるんだ、長官。」
コウ   「(気がつき)う、うう、」
ジユウ  「大丈夫か? コウ。」
コウ   「ジユウ先生? …あ、無事だったのですね。(両手を確認しながら)手錠もない。」
アヌン  「未来からの客人たち、すまなかった。手荒な歓迎をしてしまったことを許していただきたい。えっとー、コウさんだったかな?」
コウ   「コウで大丈夫です。えっと、」
アヌン  「アトランティス国、ポセイディア防衛軍、アヌン将軍だ。」
コウ   「アヌン将軍。」
アヌン  「で、どうでしたか? お二人から見た、一万年と数百年前のこの地球は?」
ジユウ  「驚きました。我々の時代のどの地上世界よりも発展してて、そしてどれもこれも、見える景色が金色の建物ばかりで、すごい世界です。」
アヌン  「アトランティス大陸が約4万年かけて脈々と受け継いできた科学技術の成果だよ。これが人間の力だ。」
ジユウ  「勉強になります。」
ナキ   「(ジユウに)君は科学者か?」
ジユウ  「いえ、私は科学者ではありません。なんと言いますか、心霊診断家と言いますか、リーディングで人の疾患を治療していく仕事をしています。」
ナキ   「心霊診断家?」
ジユウ  「催眠治療と言いますか、霊的に人の心の病やそれに伴う身体的疾患を治療したり、カウンセリングをしたりしています。」
アヌン  「なるほど、しかもリーディングも可能ということですか? ジユウさん。」
ジユウ  「はい、主にそういった手法で治療させていただいております。」
アヌン  「それはつまり、あなたは予言者ですか?」
ジユウ  「え? ええ、まぁある程度は、」
アヌン  「なるほどなるほど、それであなたはこの時代にやって来たわけだ。いや、やって来れたわけだ。」
コウ   「ジユウ先生、」
ジユウ  「(コウに)シッ!(黙ってろ!の意味)」
アヌン  「未来ではそういったことはよく行われているのですか?」
ジユウ  「い、いえ、自分の知る限りほとんどいないと思います。」
アヌン  「ほとんどとは?」
ジユウ  「…一つの国に一人いるかいないかくらいかと。」
アヌン  「なるほど。未来は安心できる良い社会ということですかね。」
ジユウ  「ええ、まぁ、確かに僕の国では戦争とかありませんし。軍隊もありません。」
アヌン  「軍隊もない?」
ジユウ  「ええ、一応、」
アヌン  「フッフッフ、それは素晴らしい。」
コウ   「あの、将軍! 私たち、この建物から出て街を見てみたいのですが。」
アヌン  「それは困りましたねぇ、(客席に向かって)っとその時!この広い司令室の向こう側の扉がウイーンと開いたと思ったら、その向こう側から、神々しい光が! なんかスモークみたいなモクモクした煙がバンバン焚かれている感じで、真っ白な光のその奥から、ちょー素敵な人影がー!」

二幕その2〈ポセイディアの女神〉

物凄い神秘的な音楽とムードの中、ポセイディアの象徴女神、即ちアトランティス国のシンボルであるニヒルが司令室に入ってくる。

アヌン  「アトランティス国、ポセイディアの象徴女神! ニヒル様だー!」

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