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泣きながら微笑んで ~AKB48・大島優子の懐古録~ #13

■ 2007.12.8 ひまわり組2nd初日公演

2007年12月4日。前月にひまわり組「僕の太陽」千秋楽公演を終え、2nd公演の準備を進めていたAKB48に「歴史的朗報」が舞い込む。大晦日恒例の「NHK紅白歌合戦」に「秋葉原(アキバ)枠」という括りではあるがAKB48が出場することとなった。まだこの頃はCDのミリオンセールスを出していたわけでも音楽番組に頻繁に呼ばれていたわけでもなかったが、「秋葉原」という場所がドラマ「電車男」の影響などもあり「サブカルチャーの聖地」として世間の注目を集めていた時期であったことから、その年の世相を反映したNHK側の番組演出のひとつとして「アキバ枠」が設けられAKB48に声がかかったというわけである。純粋な選出ではなかったものの優子をはじめとしたメンバー達はFCブログ等で出場の喜びとファンへの感謝を表していた。そして、紅白出場決定に合わせるかのように、ひまわり組2nd「夢を死なせるわけにいかない」公演が、AKB48劇場オープン2周年の記念日である12月8日に開催されることとなり、私は幸運にも「僕の太陽」公演に続いて初日公演に入場できることとなった。

しかし、この初日公演であるが、AKB48運営より「出演メンバーが初日前日まで発表できない」というアナウンスがされる。当時まだまだ知名度が高かったとは言えなかったAKB48ではあるが、徐々にグループ仕事やメンバー個々の仕事が増え始めてきた時期であり、メンバー全員揃って劇場公演のリハーサルを進めていくことが難しくなりつつあった。ようやく発表された初日メンバーは16名ではなく19名で、秋元才加と宮澤佐江はTXのドラマ撮影の影響で一部出演となるとのアナウンス。そんな状況でも初日の幕を上げなければいけなかったのは、公演を待ち望んでいるファンのためでも何でもなく、紅白初出場を決めたAKB48にとって重要な記念日に新公演をスタートすることをマスコミに報じてもらいたい運営の思惑以外の何物でもなかった。そんな「見切り発車」の初日公演はファンからお金を取るのが失礼と言えてしまうような酷い出来栄えであった。

まず、出場メンバーのアナウンスになかった「名前の知らないコ」が板の上に立っていた。当時まだ研究生でひまわり2nd初日が劇場デビュー戦となった小原春香、中田ちさと、近野莉菜の3名。振り覚えもままならず、時々動きが止まってしまう場面も。最初から正規メンバーが出られないと決めていれば彼女たちのレッスンに臨む覚悟も違っていただろうに・・・と思いながら私は彼女達を見ていた。そして、一部出演が伝えられていた才加・佐江以外にもCXドラマ撮影が始まっていた前田敦子はリザーブの成田梨紗(ナタリー)と半々の出演で、ナタリーの方が全然動けているという有様。AKB48は「成長過程を見せる場所」と秋元康氏は常々言っていたが、仮にも紅白に出場するようなグループが、その言葉を「免罪符」として、本来見せるべきでない内容の興行を有料で見せることに「小さな怒り」を覚えた。

しかし、そんな私の怒りの気持ちを静めさせてくれたのは大島優子だった。M1「ロマンス、イラネ」でいきなり転倒するアクシデントはあったが、その後は振りがおぼつかない他のメンバーを横目にキレの良い動きを見せ、ユニット曲M9「Confession」では篠田麻里子、板野友美、秋元才加とともにヘソ出し衣装でマイクスタンドを激しく振り回す。極めつけは本編最後の曲M13「愛の毛布」ではメンバー全員が純白のウェディングドレスで登場し、ドレスを纏った優子の美しさに私は言葉にならない感嘆の声をあげることしかできなかった。アンコール3曲が終了するまで元気いっぱいのパフォーマンスを披露してくれた優子を見ていたら、全体的な公演の不出来に対する不満を少し和らげることができた。そして、公演終了後のサプライズとして、劇場2周年と紅白初出場を祝した「紅白まんじゅう」の手渡しが行われ、私は勿論優子から受け取った。

優子「また劇場来てくださいね!」

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翌日の2回目の公演後に優子がFCブログを更新する。

   初日があって今のところ2回の出場ですが、

   まだまだ自分を出しきれません↓

   正直な話しね;

   ダンスが体に入ってないのか表情を

   作るのもなかなか出来ず…………
   何やってんだよ!!大島優子!!!

あの出来で「まだまだ」だったの?グループ全体の不出来もあったと思うが、優子自身が個人としてもっと高いところを目指していることが伺える日記の内容だった。優子がファンの人気を集める理由は、ルックスや性格を含めたアイドルとしての能力の高さ以外に、優子の「志の高さ」や「向上心の高さ」など性別や年齢を超えて尊敬できる部分を持ち合わせていたからだと思う。

そして、大晦日にAKB48は紅白初出演を果たす。当時でも40%前後の視聴率を記録していた国民的番組への出演の反響は非常に大きく、年が明けて最初のひまわり組公演が行われた1月5日の当日券購入列は早朝の時点でソフマップの交差点前まで届かんとしていた。紅白出演を境に気軽に「会いに行ける」状況を望むことは難しくなり、2月末をもって当日券販売は終了、入場権利は全公演メールにより完全抽選されることとなった。

(#14へつづく)

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