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泣きながら微笑んで ~AKB48・大島優子の懐古録~ #8

■2007.3.11 「ちょっとだけ全国ツアー」東京公演

2007年3月から4月にかけてAKB48は東名阪・福岡の4か所を回る「ちょっとだけ全国ツアー」を開催。私は3月11日の東京厚生年金会館夜公演に参戦する。この日は人気メンバーである篠田麻里子の誕生日当日だったこともあるが、大島優子が映画「伝染歌」の主演を務めることとなり、この日の東京厚生公演を逃してしまうと撮影終了まで優子の姿を見ることができなくなる可能性が高かったため、当時4月からの転勤を言い渡され、残務整理やら引越準備やらで忙しい時期ではあったが自分の首を絞めること覚悟で会場に馳せ参じた。前年11月の日本青年館コンサートでは2階席の大部分が空席で、目立たないように黒い幕が被せられていたが、この日は2階席にも結構客が入っており、徐々にではあるがAKB48の人気が高まっていることを実感した。公演内容は、既にスタートしていたチームK「脳内パラダイス」公演と2月にスタートしたばかりのチームA「ただいま恋愛中」公演(A4)のいいとこ取りといった感じ。A4公演の楽曲については、初日だった2月25日以降公演が行われていない状況下でセットリストに組み込まれたが、ツアーを通してA4楽曲を多くのファンに披露することで、ファンの劇場公演に対する欲求を増幅させ、更なる人気上昇に繋げる役割を果たしたと思う。そして自己紹介MC中には麻里子の生誕セレモニーがサプライズ的に行われた。当時の彼女のお気に入りキャラクターだった「とっとこハム太郎」があしらわれたバースデーケーキが用意され、秋元才加からファンへのコメントを促されると「19歳になりました!」と茶目っ気たっぷりに年齢を詐称する麻里子(※実際は21歳(当時))。この生誕セレモニーで私の参戦目的は達成されたと思ったが、公演が進んでいく中で個人的な「至福の時」がこの後訪れようとは思いもよらなかった。

コンサート13曲目。聞きなれたピアノのイントロが流れると、ステージ中央から優子が登場。勿論「泣きながら微笑んで」である。普段は収容300人の劇場で展開される「優子の世界」だが、この日は2,000人収容の大舞台での披露ということで、歌の序盤は表情に緊張感がうかがわれ、少し音を外してしまうミスもあったが、優子はそれさえも歌詞の世界観を表現するための手段としてしまっているかのような印象を受けた。そして曲の最後に「去り行く愛しき人に対して、悲しみを飲み込んで目一杯の微笑みを見せる女の子」を立派に演じてみせた優子。やっぱりこのコは「只者ではない」と再確認する私。そして優子がステージ奥に下がるのと入れ替わりで登場したのが「夢見るスター」星野みちる(ちる)だった。シンガーソングライターを目指す彼女が自作した曲に秋元康氏が歌詞を付け、「tgsk殺人事件」(※AKB48チームAメンバーと劇場スタッフがシャレで作成した「内輪ネタ」満載のドラマ。)のエンディング曲として限定的に公開された「ガンバレ!」がついにコンサートホールにて観衆の前で披露されたのである。たった1曲の披露ではあるのだが、ちるにとっては夢の実現に向けた大きな第一歩であった。透明感のある声ではあるが力強く歌い上げたちるの姿に私は感動を覚えずにはいられなかった。「女優」という夢を抱く優子と「歌手」という夢を抱くちる。お互い目指すところは違うけど、人々の心を震わせる「表現者」としては共通するものがある。「AKB48劇場でパフォーマンスをしながら自己の夢の実現を目指す」という本来のグループの活動目的を体現していた二人の共演は今でも思い出深く私の心に残っている。      (#9につづく)

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