【ロングライド】愛知から京都に自転車で行ってみた。 #1 準備編
クロスバイクエンジョイ勢22歳男が、京都を目指して自転車を漕いだ話。
そうだ、京都行こう。
皆さんもこのコピー、耳にしたことくらいあるだろう。一躍有名になったJR東海のCMだ。私は、大の京都好きである。京大に進学した友人たちを訪ねて年に3,4回は行く。コロナ禍の当時、駅前のアパホテルが1泊4000円とかだったし、夜行バスなら金曜でも3000円だった。つまり、行こうと思えば週末京都旅をいつでも敢行できたのである。東京駅は八重洲、マスク越しでも分かる疲れ切ったサラリーマンたち。飲み会自粛でリフレッシュすることもできずただ帰途につく彼らを横目に鍛冶橋バス乗り場へと向かう。4列標準の極狭シートも18,19の自分には苦でもなんでもなかった。人権最低限レベルの輸送手段に喜んで乗ったものだ。
朝、バスのカーテンから日の光が差し込むと、そこには茶色に扮したファミマの看板が見える。ああ、京都に来たのだと。八条口で降ろされた私は、京都駅の地下を通り抜ける。真っ先に向かうのは、京都タワー地下にある銭湯である。早朝のあの銭湯は、エコノミー症候群でバキバキの身体をほぐしてくれる、夜行バス勢の心強い味方だったのだ。
2023年初頭に留学から帰国してから、日本もポスト・コロナの時代へと徐々に移っていった。このこと自体は大いに結構なのだが、私の京都との向き合い方も大きく変わってしまった。河原町では車道に溢れ出んばかりの観光客。清水坂や金閣などではむしろ日本語が聞こえることの方が珍しい。祇園も先斗町も、かつての静けさを失い、昼夜構わず人で溢れている(いや、これは元々か)。観光地としてのあるべき姿を取り戻したといえばそれまでだ。しかし、静まり返った二寧坂の朝、せせらぎだけが響く哲学の道、京大に進学した親友と二人だけで散歩した南禅寺裏の疏水路、この静寂に包まれた古都の記憶は、もう戻らないのだろう。
さりとて、京都への足が遠のいた訳でもない。この前も3回生の秋に「往復夜行バス友人宅一泊弾丸チキチキ京都逃避行」を敢行したばかりだ。ただ、1,2回生の頃のような楽しみ方はしない。もっぱら旧友と飯に行き、語り、夜の鴨川を歩いて物思いに耽り、そして第一旭を食べて帰るのだ。狂騒と無関心に満ちた東京へのアンチテーゼとしての京都の重要性は、未だ自分の中で失われていない。というわけで今度の京都旅行も思いたったのである。
計画編
私は、「ご出身は」と聞かれると少々困る。紛れもなく東京育ちなのだが、厳密には生まれは東京でない。母が愛知の実家で私を出産したためだ。そのため、自らを名古屋生まれだと名乗っても嘘にはならない。盆と正月、年に2回訪ねる母の実家が自分には楽しくて仕方がなかった。モーニングも、赤味噌のみそ汁も、味噌煮込みうどんも、自分のなかのかけがえのないアイデンティティを構成している。
今は祖母が暮らすその家の横には長男、すなわち私の叔父が住んでいる。今では還暦すぎたおっちゃんだが、妹たる母によると、青年期の彼は今の私によく似ていたらしい。眉毛が太く、モサっとしていて、レコードを大きなステレオで流しながら、コーヒーを嗜む。学科のコモンルームでの私そっくりだ。おまけに、最近の私は「ローマの休日」などオードリー・ヘプバーンの映画をよく観るのだが、母曰く自分の兄もそうだったらしい。全く、遺伝子の恐ろしたるや。
そんな叔父には東海や四国などを自転車で旅行する趣味があり、良い自転車を持っていると聞いた。なるほど、叔父のエッセンスを継いだ青餓鬼としては、この機会を利用しない手はない。
愛知から京都まで叔父の自転車で行ってみよう!
120km。自転車界隈からしたら大したことない距離かもしれないが、自分にとって自転車で行くには想像がつかない距離だった。1,2回生の頃に大学の友達と木更津や横須賀まで日帰り旅をしたが、あれが確か往復140kmほどだ。総距離はそれより短いものの、今回はひとり旅だし、何より「東海」から「近畿」へと地方を跨ぐことが、いっそう特別さを引き立てていた。大好きな生まれ故郷から、これまた大好きな京へと自分の足で向かうのは初めてだ。ひと月以上前からずっと楽しみにしてきた。
準備編
自転車部の友人のアドバイスやネットの情報を参考に揃えた。マジモンの初心者にしてはそれなりに良かったのではないだろうか。
クロスバイク
グローブ(Amazon)
サングラス(Amazon)
輪行袋+エンド金具(一宮の自転車屋で現地購入)
モバイルバッテリー(10000mAh)+ケーブル
補給食
…羊羹とカロリーメイト、塩分チャージなど
自転車はものすごくカロリー消費するので、ハンガーノックを防ぐために糖質は欠かせないとか。消化に良い低脂質なものがおすすめ。空気入れ(100均)
財布(普段使ってる二つ折り)
…保険証と最低限の現金、カードサドル調整用六角レンチ
これら補給食などを入れたバッグはこちら↓
ちなみに、京都で会う友人達に名古屋土産として配るために買った味噌煮込みうどんを入れたらリュックの1/3ほどが埋まってしまった。スガキヤの味噌煮込みうどん、どえりゃーうみゃいのでオススメ。ちなみに首都圏でも買えてしまう(名古屋土産とは)。
自転車につけた装備
ヘッドライト
リアライト
…ライト類は念のため2つずつドリンクホルダー
サドルバッグ
…モバイルバッテリーと六角レンチを収納スマホホルダー(Amazon)
…ふだんUberする時に使ってるやつ
反省・補足
スマホで計測とマップ表示をしているとバッテリー消費が著しいし、交通ルール的にも望ましくないのでやはりサイコンは買うべきだった。次のライドまでには買いたいが、オススメがあればぜひ教えてほしい。
荷物はサイクリングに必要な最低限のものにするため、旅行先での着替えや化粧品などは先に宅配便で送った。
保険は楽天損保の基本プランにした。買い切り1年で3000円。
総括
出発前は不安と期待が半々だった。友人とのロングライドの経験はあるが、ソロは初めてだったからだ。だいたい、遠足や旅行の前日というのはソワソワして寝れないものなので、寝れなくても焦らなかった(いや焦ったけど)。