MLBのMVPのはなし
プホルスが700号を達成したってことで、かこつけて、MLBの話をします。知っている人は知っているでしょうが、ALのMVP争いがジャッジか大谷で、ま、ジャッジが受賞するんじゃないか、って報道が多数派ですけれども。ヤフコメで見たんだっけかな、ジャッジが「正統」で、大谷が「異端」という表現をしている人がいて、その表現はとても面白いなと感じたんです。
一応、基礎知識として、ジャッジはニューヨーク・ヤンキースの外野手で、ヤンキースといえば巨人よりも巨人的な、MLBの顔というべきチームです。で、そこのセンターを守っている、しかも生え抜き、国籍はアメリカ。ってことで、誰がどう見ても正統派ど真ん中です。その選手が、ステロイドにまみれた記録は抜きにして、MLB記録であるシーズン本塁打61本を抜こうという勢いです。で、一方の大谷さんは、ご存知の通り二刀流で、打者と投手でダブル規定到達するんじゃないか、というマジきち記録を打ち立てています。
記録としてのレア度で言えば、明らかに大谷選手の方がレア。でも、その他の対比が色々と面白い。片やヤンキースという人気球団で、大谷選手のエンゼルスは不人気球団。巨人とオリックスぐらい違う。本拠地も、伝統的にマスコミや政治の中心地の東海岸と、エンゼルスはカリフォルニアの西海岸。で、ジャッジの記録はホームランという、マッチョなアメリカ人の魂というべき記録。一方の大谷選手は二刀流とかいう、誰もやっていない、ちょっと意味わからないような記録。で、アメリカ人と日本人。
MLB的には、今年、ジャッジがMVPを取らなけりゃ、あと数年は大谷選手が「普通の大谷選手」である限り、延々とMVPを取り続けるだろうから、このあたりで、他の選手に──せめてシーズン本塁打記録を塗り替えるぐらいの選手に取らせておかないと、先がヤベェぞ、とは思うでしょう。そして営業的にも、ヤンキースのスター選手にMVPという箔を付けたいのも分かる。ってことで、MLBのニュースとかを見ていると、どうもジャッジ選手が受賞する雰囲気づくりは、しっかりと行なっているな、と思います。
ただ、意外と分からないぞと思うのは、MVPの投票は30人の記者が行うんです。MLBには30球団あるんですが、それぞれの本拠地の記者が行う。となると、いくらマスコミの中心のニューヨークとはいえ、そして東海岸が強いとはいえ、投票するのはアメリカ全土の30人ですから。ニューヨークの人ばかりでも、ありません。タンパベイとか、ミネアポリスなんかの人もいるわけです。ジャッジじゃねーの、という雰囲気づくりは十分わかるけど、蓋を開けてみるまで分からないよね、と、本当に思う。
どうせ、この結果が出るのは11月ですから。1ヶ月以上も先の話ですが。これ、ジャッジが受賞したら、アメリカだなぁ、という気がする。まだ「アメリカ」が根付いているな、と。でも大谷選手が受賞したら、アメリカという概念が崩れるのがリアルで感じられる。まさに「異端」が「正統」を上回る、いわば、アメリカという宗教の終焉になるのかな、と。大袈裟ですけど。野球が好きだから、大袈裟に言いますけど。アメリカという宗教が立ちはだかる、という感じがするんですよ。という意味で、文化的な観点からもMVPがどちらになるか、超面白い。
野球というアメリカ文化か、それとも、データか。魂か、数字か。冷静に考えれば、どう見ても、大谷の方がすごいんですよ。もう、ほとんどの人が分からなくてもいいと思って書きますが、WARもジャッジがちょっと上だけど、そもそもロースターを1人あけているなんていうのはWARで換算できないでしょう。実質、野手か投手をもう一人、ベンチに入れられるっていうことなんですから。そんなもん、WARだったらプラス10ぐらいしてもいいと思うんですけど。
だから、数字で言えば明らかに大谷選手が上。で、感情の問題です。アメリカ人の伝統的なスポーツである、野球。でも人気は下がって、アメフトやバスケに客を取られて「老人が見るスポーツ」みたいにも、なっている。その中で、右の大砲という、しかもヤンキースのセンターという、ど真ん中のアメリカ人。一方でマジきち記録を出し続ける外国人。ジャッジがMVPなら、アメリカという文化はまだまだ強く、でも、強いからこそ、変わるタイミングを失うのかなとも思う。この先、何年か大谷選手が受賞すれば、野球それ自体の底上げになるかも。
保守と革新、という言い方も出来ますよ。ま、いずれにせよ、たった30人の投票ですから、ランダム性が高いです。いくらマスコミが騒ごうとも、分からない。ってことで、youtubeでMLBニュースを追うのが楽しみの一つです。また明日。
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