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東京フレンドリー結婚⑥−①

私達はいわゆる「仲良し夫婦」である。

「すごい仲良しですね、喧嘩とかしないんですか?」
いやいや……めちゃくちゃ喧嘩するに決まっている。むしろ遠慮なく言葉でぶん殴れる相手など配偶者ぐらいしかおらず、散々殴り合ったあと肩を抱き合って「オメェ、強ェな。」なんて言えるのは積年のライバルか配偶者に限る。

それでも、この急に始まった結婚生活超初期は前途多難だった。
夫は優しい人であったために、怒らない人でもあった。夫が私のワンルームに転がり込んできてすぐの頃などは、価値観やルールの些細な違いにブチ切れる私をなだめる夫の図があった。そしてなだめる夫を見た私はさらにブチ切れる。服従させたいから言葉を投げかけているのではなく、理解してもらった上で新しいルールを作るための説明をしているのだと。「そうだね、ごめんね」と内容に触れぬまま優しい言葉をかけてこようとする夫のことは、正直嫌いだった。

怒っているなら怒って欲しい。違うと思うなら言って欲しい。
言い合いを放棄してはいけない。

きっかけや内容の大小は様々で、ありとあらゆる喧嘩を重ねた。お互いが、もしくはどちらかが納得のいかない結果を残して、遺恨が生まれる未来だけは許せないと、私は思っていた。

ちょっと続く。

東京フレンドリー結婚①
東京フレンドリー結婚⑤

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