「働く人たちに支えられている政党は1つでいい」
こんにちは、今朝、国民民主党の玉木代表が以下のような発信を行いました。
「働く人たちに支えられている政党は1つでいい。2つある必要は全然ない」
立憲民主党の岡田克也幹事長が、表題の発言をしたことを受けて、玉木代表のこの反応となります。
玉木代表の反応はもっともであるというのが一般的な見方だと思います。
先日、日本維新の会の馬場代表が「共産党は日本から無くなった方がいい政党だ」という発言をして問題となりましたが、考え次第では、岡田幹事長の発言は馬場発言にも通ずる発言であり、大いに問題であります。
それより以前にも、馬場代表が立憲に対して「日本に必要ない政党」であることを発言し、立憲民主党内からも抗議の声が上がりましたが、立憲民主党も「働く人たちに支えられている政党は1つでいい。2つある必要は全然ない」と言っているわけですから、これはまさしくブーメランです。
しかし、私は違和感を覚えました。確かに、岡田幹事長の発言は問題なのですが、なぜこのタイミングで、玉木代表は「改めて」岡田幹事長取り上げたのだろうと。
上の記事、今回の件を受けての記事ではありません。
2023年2月19日の記事、つまりは今年の二月の記事です。
要すれば、岡田幹事長が同様の主旨の発言を行ったのは今回が初めてではなく、いわば、「以前と同じ」発言を今回も行ったに過ぎないのですが、玉木代表は何故だか、改めて、岡田幹事長の発言を取り上げて、これを批判しました。
当時、玉木代表はこの発言を知らなかったのかもしれないし、知っていた上で改めて問題視をしたと済ませることは簡単ですが、私としては、このタイミングでここまでの反応をすることに対しては違和感を覚えました。
なにより、話題となっている玉木代表の発信には妙な部分が存在します。
いやいや、「立憲民主党に対するまっとうな批判だろ」と思われるかもしれませんが、ちょっと待ってください。
玉木代表はこの文章を、「私は安易な合流論などには与しない。党の存続そのものが代表選挙の争点だ。私は残す。」という形で結んでいますが、ここの発言が妙なのです。
岡田幹事長は、立憲民主党の幹事長です。
国民民主党の意思決定に介在する立場でもありませんし、そんな影響力を持っていると思いません。仮に岡田幹事長が合流を望んでいたとしても、国民民主党が「はい」と言わなければ、どうしようもない立場なのです。
前原氏は「合流」を主張していない
と同時に、玉木代表と代表選挙を戦う前原氏は、上の記事の内容の通り立憲民主党との「合流」を主張しているわけではありません。
玉木代表は「党の存続そのものが代表選挙の争点だ。私は残す」と結んでいるものの、前原氏とて合流を主張していない以上、国民民主党代表選挙において、「党の存続そのものが代表選挙の争点である」という事実は必ずしも存在していないのです。
百歩譲って、岡田幹事長に対する抗議自体は道理が通っていると考えても、岡田発言を論拠として「党の存続そのものが代表選挙の争点である」と結ぶことには別の作為があると考えるのが自然なのではないでしょうか?
当然、岡田幹事長に対する抗議自体は本心でしょう。そこに偽りはないと思います。しかし、その発言を存在しない代表選挙の争点に結びつける必要はないのです。
繰り返しになりますが、前原氏は「党の合流」を主張しておらず、その点は玉木代表と立場が一致しておりますし、玉木代表は「私は残す」と仰いますが、さも、代表選挙において他に国民民主党をなくそうとしている人が存在するかのような言いぶりをするのは、道理が合わないのではないでしょうか?
国民民主党をなくそうとしているのは、国民民主代表選挙とは全く関係が無い岡田幹事長のみなのであり、国民民主代表選挙の枠内において、「私は残さない」と考えている人が存在するとでも言うのでしょうか?
代表選挙に実績のある玉木代表
さて、玉木代表と言えば代表選挙巧者、これまで多くの代表選挙を勝ち抜いてきています。
「いや、いきなり話題を変えるなよ」と思われるかもしれませんが、とても大切なお話です。
直近に玉木代表が立候補した代表選挙、いずれも得点率の七割を安定的に積み上げており、圧倒的な勝利を重ねています。
このように、玉木代表と言えば代表選挙というくらいには、玉木代表は代表選挙に強いのです。
しかし、よく考えてみますと、一つの共通項が見えてきます。
玉木代表が戦って勝利した相手の中には、「格上」の候補は存在しないのです。
2017年希望の党代表選挙(玉木氏当選・大串氏落選)
「希望の党で代表選挙なんてあったっけ?」って方も多いんじゃないでしょうか。希望の党と言えば小池都知事であって、玉木代表というイメージを持つ方は多くは無いと思います。
その程度には、この選挙は注目されていません。
そもそも戦った相手の「大串」って誰だよって感じすらあるんじゃないでしょうか?
大串さんは現在、立憲民主党に在籍する衆院議員です。
衆議院議員の期数や年齢で言ったら若干、大串さんの方が上にはなるものの、知名度などを勘案しても、「微妙に格上」程度の相手であって、世代的にはほぼ変わりません。
そういった意味で、希望の党代表選挙はほぼ同格同士の戦いであったと見なすことができるのではないでしょうか?
少なくとも、格上に勝ったという印象はありません。
2018年国民民主党代表選挙(玉木氏当選・津村氏落選)
いわゆる、旧国民民主党代表選挙です。
その相手は津村啓介氏。今は「ただの人」です。
この方の肩書は「立憲民主党所属の元衆議院議員」でありまして、いまは在野の身分です。先の衆院選で落選した議員の一人です。
見ての通り、基本的には比例復活が多いです。
2009年などは小選挙区当選となっていますが、民主党ムーブはすごかったので割り引いて見るべきでしょう。
私としては、比例当選であっても凄いと思うのですが、政治の世界では、比例復活の議員よりも小選挙区当選の議員の方が発言力があるという傾向にあります。
期数としては玉木代表とほぼ同期と言えますが、先の「比例復活の議員よりも小選挙区当選の議員の方が発言力がある」という前提条件において考えれば、玉木代表の方が格上であり、津村氏は格下であると言えるでしょう、
つまりはこの選挙においても、玉木代表は格上の候補と対峙して勝ったわけではありません。
2020年国民民主党代表選挙(玉木氏当選・伊藤氏落選)
次に、いわゆる新国民民主党になってからの初の代表選挙です。
対峙した伊藤議員は現在も国民民主党に所属している参議院議員です。
伊藤議員は衆議院ではなく、参議院議員であり、現在は二期目です。
ただし、二期目の当選は2022年のことであり、2020年の代表選挙当時は一年生議員ということになります。
対して玉木代表は、先述の通り当選五回、五期目の当選は2021年なので、代表選挙当時は四期目ですが、それでも伊藤氏よりも圧倒的に格上です。
衆議院には解散があるので、一般的には参議院議員の一期の方が年数的には長いと勘案しても、政治家のキャリアで言えば、玉木氏の方が大先輩です。玉木氏は国政政党の代表等を歴任していることから勘案しても、その認識は揺るがないと思います。
2016年民進党代表選挙(玉木氏落選・蓮舫氏当選)
そして、時は遡ります。2016年、民進党代表選挙です。
この代表選挙は、玉木代表が初めて挑戦した代表選挙です。
ご覧の通り、玉木代表はこの選挙に敗北しました。
ただ、この点を以て「玉木代表が代表選挙に弱い」と言いたいわけではありません。
この選挙は初挑戦ですから、それを勘案すれば健闘した方だと思います。
ただ、最低限の事実として、「格上と対峙して破れた」ということは紛れもないことです。
蓮舫氏が勝ったのは良いとして、今月公示の代表選挙に立候補する前原氏の票にも及んでいないという点がポイントです。
前原代表の期数は衆議院の十期、実に、玉木代表の倍のキャリアの持つ方であり、代表経験がとても豊富です。
のみならず閣僚経験も持っており、前原氏は圧倒的な「格上」であると言えます。2016年民進党代表選挙において、玉木氏は「格上」と対峙した結果、選挙に破れたのです。
これまでの情報をまとめれば、「玉木代表は同格以下との代表選挙には勝ってきたが、格上との代表選挙で勝利したという実績がない」という側面が見えてきます。
直近の三選挙だけを見れば、玉木氏は代表選挙巧者に見えます。
しかし、民進党代表選挙まで含んで考えてみると、必ずしも「玉木代表は代表選挙に強い」と断言することはできません。
仮に断言するにしても「玉木代表は同格以下との代表選挙に強い」までであって、「格上である前原氏との代表選挙は玉木代表にとっては未知数の領域である」ということは紛れもないように思います。
世間的な注目度が高い代表選挙
何よりも、今回の代表選挙は国民民主党の未来のみならず、野党全体の展望にも影響する一大事です。
希望の党代表選挙は、小池さんが衆院選に敗れた時点で「死んだ政党」の代表選挙でしたし、旧国民民主代表選挙は「注目度が低く冷笑までされた」代表選挙でしたし、新国民民主党初の代表選挙は「格が違い過ぎる」代表選挙はでありました。
しかし、今回は違います。
国民民主党が玉木路線か前原路線か、それとも融合路線かによって、他の野党の立ち回りも変わってくるのです。虎視眈々と、他の野党がその展望に注目しています。
維新や立憲が注目しているということはすなわち、これまで玉木代表が勝利を重ねてきた代表選挙のいずれよりも、報道としての価値が高いということですし、世間的な注目度も上がってくるということです。
一見、盤石に見える玉木陣営
今回の代表選挙における、玉木代表の布陣はかなり盤石に見えます。
会見での絵面にはかなりのインパクトがありました。
そして、推薦人名簿を見ても、玉木陣営の盤石さは見えてきます。
いわゆる産別系の議員や党幹部が推薦人に名を連ねており、この点に限れば、今代表選挙は玉木氏に分があると考えています。
ちょっと寂しい前原陣営
対して前原氏の陣営はちょっと寂しい感じがあります、玉木代表のように仲間と一緒になっての会見というわけでもなかったことも影響していると思いますが、推薦人名簿を見てもその確信は深まります。
前原氏の布陣はいわゆる新人の議員が多く、幹部格の名前はほぼ見えてきません。
この推薦人の一覧を見た時、前原氏は厳しいと率直に思いました。
しかし、必ずしもそうではないんじゃないかなというのが、今の私の見解です。
玉木氏の本当の狙いは?
これまでの話をまとめれば、以下のような前提条件が成り立つかと思います。
➀今回の代表選挙は、格上である前原氏との対峙という点から考えても、玉木代表にとっては未知数の領域である
②今後の野党の展望を左右する今代表選挙は、玉木氏が勝利を経験してきたどの代表選挙よりも、注目度が高いものである
この前提条件と、玉木氏の「私は安易な合流論などには与しない。党の存続そのものが代表選挙の争点だ。私は残す。」という発言を照合すれば、一つの仮説が浮かび上がってきます。
「玉木氏は、単に岡田幹事長の発言に抗議するという意味合いだけではなく、前原氏との違いをアピールするために、岡田幹事長の発言を利用した可能性がある」
というものです。
玉木氏の内心は分かりかねますが、これだけ外形的に盤石な玉木陣営には焦りのようなものがあり、その結果として今回の発信に至ったのではないかと言うことです。
なんらかの焦りがあるから、今回の発信を行ったし、そのファクターの一つとして、玉木代表が「格上」に勝った実績の無さや、今代表選挙の注目度などが影響しているのではないかということです、
立憲民主党の岡田幹事長の発言は大いに問題だと考えますけれど、玉木代表の盤石さにも不安要素が存在する中で、「岡田幹事長の発言を前原氏との差別化のために利用した可能性」が全く存在しないと、果たして断言できるでしょうか?
結び
今回、岡田氏の発言の問題点ばかりが注目されている気がしますが、実は玉木代表の発信にはこういった文脈が含まれているのではないかという意味で、この記事を書かせていただきました。
代表選挙をウォッチする上で一つの判断材料として頂ければと思います!
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以上、「働く人たちに支えられている政党は1つでいい」でした!