澤俊之『We're Men's Dream』の表紙の秘密。そしてまた、澤俊之という小説家の手加減の無さについて。
NovelJam2019'で制作したバンド小説『We're Men's Dream』。
表紙はこちらです。
まずは、見て。
右でマイク持ってこっち向いているのが主人公のサツキちゃんです。26歳。
左で後ろ向いてギター背負ってるのが、ガールズバンド「Men's Dream」のギター&ヴォーカル、リューコちゃんです。20歳。
さて、このNovelJamの制作時間は11/2の12:00から11/3の15:00まで。27時間。27時間ですよ。で、編集者と小説家2名とデザイナー1名がチームを組んで、本を2冊作る。
事前の打ち合わせは徹底的にやってありましたが、実際に手を動かすのはこの27時間しか出来ません。そして、チームの方針として「王道、青春、キャラクター文芸」というのが決まっていたから、表紙絵は当然、キャラ絵にしたい。
ここまで考えたら、普通の著者なら「表紙は主人公だけでいいです」って言いますよね。だってデザイナーのこばじさん、ゼロから描き起こすわけで。
ではチームKOSMOSの中でのやり取りがどうだったか、確認してみましょう。
このやり取りがあったのが、11/2の16時。主人公はギタリストではない、ということが確定していたので、さすがに今回はご遠慮頂けるかと思ったら、
「はい、入れたいです」
・・・・・聞くんじゃなかった。
しかし聞いてしまった以上、却下とは言えない。自分のミスは自分で取り戻さなければならない。
解決すべき課題は二つ。
こばじさんの作画負担をいかに減らすか
主人公はギタリストではない小説において、いかにしてギターが表紙に出てきても不自然ではないデザインを考えるか
まずは向かいで『天籟日記』の表紙を真剣に描いてくださっているこばじ神さま(この時間帯には既に神として崇められていた)に
「あの、人間描くときに顔って全体の労働負荷の何割くらい?」とお伺いを。
「4割くらいですかね」
「じゃあ、後ろ向きだったら、ちょっとは描くの楽かなあ(揉み手)」
「まあ、そうですね」
(こばじ神、警戒中)
「澤さんが、出来れば表紙にギター出したいって言ってるんだけど、主人公はギタリストじゃないんだよね。だから、画面の端に見切れても良いからギタリストの後ろ姿とか、描けないかなって」
「ああ、それはカッコいいかもしれないですね」
(神だ、神)
「ギターって描いたことありますか?」
「ありますよ。ギター好きです」
「テレキャスター・・・って知ってる?」
「好きです!」
(神よ、我々のもとに神を遣わして頂いたことに感謝いたします)
というわけで、作画負担は背中とギターだけ描くということで何とか了解を頂く。
次。なんで主人公はギタリストじゃないのにギターが出てくるんだよ問題を解く。
こっちは悩みましたよ。廊下を行ったり来たりしながらエアギターを弾いて、考える考える考える。
で、30分くらい悩んだところで、閃いた。
ブルース・スプリングスティーンのアルバムジャケットで、スプリングスティーンが背中にテレキャスター背負って立ってるやつがあったのを思い出した。
このお話は、バンド「メンドリ」のギタボのリューコと、挫折した元OLのサツキ、二人の物語。そして主人公はサツキ。
だったら、スプリングスティーンをリューコにして、反対側にサツキをこっち向きで立たせたらどうだろう?
早速、澤さんに提案してOKをもらって、こばじ神さまにも「なんとか、描いてみます」と言っていただく。
結果的には、この表紙がまさにまさにまさに、『We're Men's Dream』の物語のコアそのものを表現していたわけで、
こばじさん、神か?
神だ。
というわけで、是非! 『We're Men's Dream』に投げ銭をお願いいたします。こばじ神さまの神ワークに! こばじ神さまに「NovelJam2019グランプリ」の勲章を届けるために!! だってこばじ神さま、27時間寝なかったんだよ。そして2日目終わって家帰ったら風邪引いて倒れてしまったんだよ。その頑張りに報いたいです。
ここからは余談。
「メンドリ」のリューコが弾いていたテレキャスターと同じモデルを手に入れる方法。
1) ネック
フェンダー純正ネックです。おそらくフェンダーUSAから発売されているものを使っているはずです。Amazonでも買えますよ。7万円くらいです。
仕様はメイプルワンピース、ミディアムジャンボ22フレット、ブラックドットインレイ。ヘッドパーツはお好みでどうぞ。
2) ボディ
ここがリューコの拘りです。最初に言っておきます。特注でないと手に入りません。何故ならばエルボーコンターが入っているからです。この仕様はフェンダーにはありません。だから、手に入れるのであれば「プロになってフェンダーカスタムショップにオリジナルを作ってもらう」、または「どこかの工房にボディだけ特注する」ですね。メンドリはさすがにまだフェンダーカスタムショップでリューコモデルを作ってもらえるほどではないので、どこかの工房に頼んで作ってもらったはずです。
以下、画像から確認出来る範囲での仕様は
ボディはエルボーコンター入り。おそらくバックコンターも入っているはず。ジェフ・ベックのファンなのでしょうか。
ボディ色はフィエスタレッドかその近似色。
ブリッジはゴトーのGTC201クローム。
フロントピックアップはカバードタイプ。
リアピックアップは特注のホワイトボビンモデル。
ピックガードは黒の1ピース。
皆さんがリューコモデルを再現するのであれば、ボディ材はお好みでお選びください。
特に難易度が高いのが、テレキャスター用のリアピックアップのボビンで白いものを入手するところでしょう。一見するとEMG-TCのホワイトにも見えるんですが、よく見るとポールピースが露出している。だからEMGではない。これは既製品では入手出来ないと考えて間違いありません。だから、こういうDIYキットを取り寄せた上で、上面のプレートだけ型を取ってどこかのファブラボでレーザーカッターで切り出しているんじゃないかと思います。
リューコの拘り、すげえ。
でも、これだけ拘れる子だからこそ、サツキを変えることが出来たんだと思ってます。
というわけで最後にもう一度。
投げ銭してください!!!!!
追記:こんなに頑張れる加藤さんに編集でもライティングでも設定づくりでも発注してみたくないですか? ご連絡はお気軽に akiwokuma@gmail.com まで!
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