試着室で首を傾げる。
学生のときに見た、ルミネの広告コピーが鮮烈で、胸に刺さった。
多分、たくさんの女子の胸を撃ち抜いた。
この広告コピーが元になった小説も発刊されてる。
学生の頃、新しい服を買うときは心躍った。
かわいいと思うものをすぐに見つけられたし、友達ときゃあきゃあ言いながら服を買うのは楽しかった。
この服を着て、どこに行って何をしようって、思い巡らせてた。
この連休、友人との旅行、義実家への帰省、いくつかイベントがひかえている。
目下の悩みは、着ていく服がないこと。
日々、ボーダーのバスクシャツが私の制服と化していて、これを着て保育園の送り迎えにいく。
でも、あまりのヘビーローテーションで、すっかりくたびれている。これを着ていくには気が引ける。(実家はこれで帰った)
今日は一人でショッピングモールに出かけた。
じっくり試着もできるし、何かしら買って帰れるはずだと思ってた。
が、手ぶらで帰ってきた。
見つからない。
まず、試着に至る服を見つけるのに時間がかかる。
そして、いざ着てみても、買うに至らず。
シンプルに似合わないか、似合っても思ってたのと違うパターン。
後者は少し説明し難い。好きで選んで、しかも似合ってるのに気にいらないパターン。
似合ってるというか、自分によく馴染んでる。馴染んでるけど、求めた馴染み方じゃない。
「安心感」って今日よく聞いた気がする。二の腕も太ももも覆う「安心感」。
細身のマネキンが纏えば、小慣れた印象になる、長さがあってボリュームのある袖のトップスや、ゆったりしたパンツ。
私が着ると、気の抜けた印象にしかならない。似合ってる、似合ってるけど、求めた素敵さはそこにない。
試着室で誰のことも思い出さない。
ただ、過ぎた歳月を思う。
私も歳をとったなー。
明日からのお出かけ、どうしよう。