稲を戦略的に考える
お米の生産において、収量と品質は反比例すると言われています。どちらかが上がればどちらかが落ちる、というのが定説です。
でも僕は稲が健全な生育をすれば収量も品質も両立できるのではないかと思っています。根拠はありません(笑)
味や品質を優先して生産量を落とせば、当然売り上げも落ちます。減少分を単価に乗せられるならOKですが…。
僕は食べても美味しい、出荷しても高品質、それでいて生産量も多い、というところを目指しています。
日本で最も研究が進んでいる作物の一つ
お米は弥生時代から作られている謂わば日本のソウルフードということもあって、日本では最も研究されている作物の一つになっています。そのおかげで、稲という植物はどのような生育経過を辿るのかがちょっと調べればよくわかります。詳しくわかれば、稲の生育コントロールもある程度可能になってくるということにもつながります。
稲の生育をスケジューリングする
品質と収量の両立のためには一株の稲からどれだけの量のお米を実らせるのか、そしてそのためにはどのくらいの量の栄養素が必要なのかの計算が必要です。そして、必要な栄養素をどのような形でどのタイミングで供給するのか、綿密なプランニングが必要になります。そこにその地域の季節性や気候を加味して、生育のスケジュールを組みます。いつ種を蒔いて、いつ芽が出て、いつ生殖生長を始めるのか、いつ穂が出てくるのか…人間が確実にコントロールできるのは種を蒔くタイミングだけですが、栄養状態や管理のコントロールで、それ以降の生育ステージの調整の多少は可能になります。
果たしてマニュアル化は可能?
こうなると、マニュアル化できれば誰でも上手く作れるんじゃなか?と思うかもしれませんが、実はそうもいかないんです。
田んぼ1枚1枚それぞれ栄養状態のクセが違いますし、田んぼの場所によって気象条件が微妙に変わってきます。隣り合っていても違うんです、不思議ですよね。
これが、工場で作る製造業とは大きく異なる部分なんです。
田んぼ1枚それぞれのクセや条件を見極めて、それでいて毎年毎月毎日変わる天気や気温に対応しながら、プラン通りの生育経過を辿らせる。
ここがいわゆる匠の技の呼ばれるような経験に裏打ちされた技術の根幹です。
雪国での米作り
僕が住む北海道は11月には雪が降り始め、3月下旬(下手すると4月中旬)まで田んぼは雪の下になっています。
稲が適切に生育できるのは5〜10月の半年間程度しかありません。短いシーズンの中で更に田んぼの整備や準備、後片付けなど様々な作業が詰まっています。
限られた期間の中で常にベストタイミングで作業を行い、稲にはベストな生育をしてもらう、そのためにもやはりプランニングは絶対に必要な作業だと僕は思っています。