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かとちん
2023年5月6日 19:35
タイトルの通り、自分の小説の読み方に疑問を覚えてしまった雨の日。話題の新星のデビュー作を読んでみた。幼い頃から、能力、性格、行動で周囲を寄せ付けなかった少女、成瀬あかり。その彼女が高校を卒業するまでの足跡を描いた物語。独自の行動理念を持ち、思いついたことはとにかく実行してしまう成瀬は、中学2年生の夏を8月の終わりと共に閉店する西武大津店に毎日通ってみたり、親友の島崎を巻き込んでM-1グラン
2019年7月23日 12:41
不妊と夫の浮気に悩む紗英。彼女のよりどころは幼い頃から一番近くにいた奈津子だったが、彼女も自分の居場所を見つけられず、紗英を支えに生きていた。 周囲にも理解を得られないほど密接な関係が、徐々に彼女たちを追い込んでいく。人が理解し合うことの困難さを突きつける心理サスペンス。 なんというか、グロテスクな作品。後味や読み味を意図的に悪くするイヤミスと呼ばれるものとは違うと思うが、とにかく終始ザラ
2019年7月22日 09:44
引越しの準備の終わったアパートの一室。別れを目前にした男女。夜が明けたら別々の道を進む2人が過ごす最後の夜。彼らはお互いに相手に対して確かめなければならないことがあった。朝の光と共にもたらされる真実い向け、相手の一挙手一投足、一言一言に神経を張り巡らす濃密な心理戦を繰り広げる。 とてつもない緊迫感のある即興劇のようだった。 冒頭、お互いが引き出そうとしているのが、ある人物についての死の真相
2019年7月11日 21:27
オムニバス形式の恋愛短編集。アルバイト先の女子高生との淡い恋が語られたかと思えば、集団自殺を企てる初老の男の話になり、続いてはまた転校生に心をときめかす小学生の姿を描き出し……と、コンセプトも方向性も分からないままに次々と繰り出される恋愛模様は、最後にどんな姿を現すのか。 この作品は歌野晶午という書き手について知っているか知らないかで薦め方が全く変わる。 もし知っているなら、大丈夫、信じて
2019年7月9日 21:38
相馬いとは青森の高校に通う16歳。祖母譲りの津軽弁と内気な性格のために、クラスメイトに挨拶をするのも苦手な内気な少女。そんな彼女が思い切って始めたアルバイトはメイドカフェ。バイトはドジばかりだし、友達もなかなかできないし、三味線を弾かせたがる祖母ともギクシャクしていて、どうにも上手く行かない毎日だけど、ほんの少しずつでも、たった一歩だけでも前に進むために頑張るいとの青春奮闘物語。 メイド、ロ
2019年7月2日 23:35
奈良を舞台にした作品であまれた同人誌『NR』に寄せられたものを含む短編集。奈良盆地にある越天学園に通う、本陣達也は母親の死の原因となった学園を経営する御堂一族に復讐するために生きている。学園関係者の弱みを握り、情報を集める達也。ただ冷静に冷酷に事を進めているかに見える達也だったが、彼の周りには信頼できる仲間たちが集まっていた。円居挽といえば『丸太町ルヴォワール』で知られるミステリ作家だが、
2019年6月29日 23:07
これは、よかった。すごかった。泣ける話がすなわちいい作品だとは思わないけど、いい作品はやっぱり泣ける。こみ上げてこみ上げてあふれてあふれてとまらなくなった感情は、やっぱり涙になってこぼれてしまうものだから。主人公、佐倉ハルは小学六年生。NASAのエンジニアを目指して勉強中。風船ロケットを飛ばしたり、英会話を勉強したりと、かなり目的意識が高い。風船ロケットを飛ばすハルくんは、ガガーリンの名
2019年6月28日 23:43
デビュー作『氷菓』につらなる古典部シリーズの6作目となる短編集。2年生になった古典部の面々の屈託が、さらに掘り起こされている。米澤穂信といえば、押しも押されぬミステリ作家で、年末のランキングで2年連続の3冠を達成するほどの書き手だ。でも僕の好きなところは、ミステリとしての完成度以上に、デビュー作『氷菓』からずっと生きることの苦さが描き続けられているところだ。米澤ミステリの興味深さは日常系
2019年6月28日 17:45
偶然にも生年月日と身長が同じ、佐藤奈加子と佐藤重信。苗字まで同じ男女は出会いも偶然。32歳。仕事や人間関係についての悩みとは折り合いをつけられるはずと思いつつ、それでも思うようにいかない日々の中、ふとした時にお互いのことを思い出す。どこにでもある日常、どこにでもいる男女、共通点は多くとも、深く交わることのない2人のそれぞれの毎日をゆっくりとつづる。ただ、それだけの物語。単行本の出版が201
2019年6月23日 01:07
新卒から14年勤めた仕事を燃え尽き症候群のような状態になって辞した後、失業保険も切れてしまった主人公の「私」は、職業相談員に「一日コラーゲンの抽出を見守るような仕事」というふざけた希望を出す。その結果、彼女に与えられたのは。隠しカメラを使った小説家の監視する仕事。巡回バスの広告アナウンスの原稿を作る仕事。おかきの袋の裏のコラムを考える仕事。家々を訪ねて啓発ポスターを張り替える仕事。森林