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沈みゆく舟、湯河原町号
あるネット配信番組で、地方の若手首長の対談を見た。やり手の若い市長は次のように述べた。
「この街は沈みゆく舟。私の役割は、いずれ沈む事が分かっている舟の沈む速度を少しでも遅くして、どうにか次の世代へとバトンタッチする事だ」
人口減少と少子高齢化は日本全国どこの自治体でも抱える問題であるが、特に高齢化率の高い湯河原町は、舟の沈みゆくスピードは速い。
スピードが速ければ速いほど、巻き返す事ができる可能性は低い。何か天変地異でも起こらない限り、湯河原町の人口が増える事や子どもの数が劇的に増える事は難しい。
湯河原町は、いや日本は、少子高齢化の手を打つ時期をとっくに過ぎているのだ。
やり手の若手首長の発言には納得せざるを得ない。これから地方の政治を担う者は、沈む船を延命させる事に最大限の努力をしなければならないのである。
経済成長を遂げていた時代の首長はさぞやまちづくりが楽しかっただろうと思う。予算規模が前年度より今年度、今年度より来年度と増えていく。
税収が増えればやれる事も沢山。新規事業に次々と知恵を絞ってまた発展を望む事ができる。
しかし、これからの時代は舟の修繕作業に多くの税収を使わなければならない。予算を沢山使う新規事業なんてやっていられないのが現状だ。
老朽化した公民館等の施設はどうするのか。
庁舎の建て替えは予算規模が桁違いだが、やらないわけにはいかない。
人口が減って行く中で、上手に規模を縮小しなければならないが、建てるだけ建ててしまった建物の維持も縮小も、今の財政状況では非常に厳しい。
上下水道、造った当初は人口が増える事を想定していたが、人口が減少する中で、その維持管理費は町民一人一人の負担に上乗せされる。
そこにコロナの様なパンデミックがいきなりやってきたりする。今後もこの様な新たな感染症がやってこないとは言えない。
考えれば考えるほど、あまりに明るくない未来予想図の中、意外にも世の中はあっけらかんと現実を生きている様にも見える。ゆっくりと迎える終わりに向かって、まだ大丈夫、まだ大丈夫、と過ごしている様にも見えてしまう。
確かに、財政破綻しようが、町がなくなろうが、命を奪われる事はない。それよりかは今ある現状を変えられる事の方が不安だという気持ちも理解できる。
だけど、ついに、いよいよ大きな変化を余儀なくされた時に、その変化に対応できる町づくりを想定しなかった場合、大きな痛みを伴うのではないか。
それを私たちは自分の後の世代に先送りしているだけではないか。
目の前にあるものだけに目を向けて、その後どうなるかに真剣に向き合わないと、困るのはこれから生まれてくる世代、いや、もう生まれて元気に走り回っている子どもたちである。
「沈む事がわかっていたのに、何でその時に手を打たなかったの?」将来、沈み切りそうな船の上から子どもたちに悲しい顔で言われてしまう前に、今やらなければならない事があるのではないかと考えてしまう。