山田くんとはナニモノなのか
山田くんとは、私の家(車)の名前だ。
なぜ山田くんなのか、とよく聞かれる。
今日はその話。
2019年秋、旅具店は迷っていた。
メキシコへ行くか、車を買って日本国内を見て回るか。
どちらもそれなりにお金がかかるし、どちらもやりたいことだった。
迷ったが、国内に留まることにした。
日本人として、日本のことをもっと知った方がいいと思ったからだ。
予算に合う車は限られていたので、良さそうな車があれば県を跨いで見に行った。
埼玉のとある中古車屋さんに行ったとき、店主が遠慮がちに
『お仕事で使う車をお探しですか?』
と聞いた。
旅: 「いや、バンを買ってそれに住もうと思って。」
店: 『えぇっ!、、、』
『すごい!すごくいい!!』
店主は詳しい話を聞く前に、ただ私のプランに賛成してくれた。
気を良くした旅具店は、テントに暮らしながら海外を長く旅をした話や、メキシコに行かずに日本に残ることにした話をした。
『へぇ〜!』とか『はぁ〜!』とか言いながら話を聞いてくれた店主は
『羨ましい!夢があってすごくいい!』と嬉しそうに言った。
その後、車についてのアレコレをとても丁寧に説明してくれた。
旅具店は日本で車を買ったことがなく、車庫証明やら車検について全く無知だったし、車の相場もまったく分からなかったが、
店主が心を込めて説明してくれているのが伝わった。
その店主の名前が山田さんなのだ。
その日は別の車屋さんへもアポを取っていたので即決しなかった。
別れ際、山田さんは
『楽しい話を聞かせて貰ってつい興奮しちゃったけれど、自分の家を買うって言うのはとても大事なことだから、他のお店も沢山見て、納得してから買ってくださいね。うちで買わなくてもいいんですよ。』と言った。
旅具店は山田さんが『家を買う』と言ってくれたのを覚えている。
ちょっと変わった旅具店の計画を素直に受け止め、理解してくれたのだと感じた。
他にも数台見たが、山田さんのところの車が一番だった。
「あの車、買います」と連絡を入れた。
ついでに「後輪のタイヤがすり減っていたので新しいタイヤを入れて欲しい」と伝えた。
山田さんは
『後輩にタイヤ屋がいるから、圧力かけて安くして貰いましょう』
と悪戯っぽく言った。
納車の日、山田さんは長袖のアロハシャツでやって来た。
『ハワイでは、アロハシャツは正装として認められてるんです。
今日は加藤さんの新しい門出だから、それに相応しい格好で来ようと思って』と言った。
とってもオシャレだし、一個人の納車を『新しい門出だから』と祝ってくれる気持ちが本当に嬉しかった。
私も山田さんに大事な発表をした。
「海外を旅してる時、バンに住んでる子たちはみんな愛車に名前を付けてました。みんな愛着を持って車と一緒に旅をしていて、私も自分の車を買ったら名前を付けようと思ってたんですよ。
名前は山田くんにします。」
山田さんは喜んでくれた。
私の暮らしを応援してくれる人であり、
可愛い山田くんの父であり、
友達でもある。
山田さんは『夢があってすごくいい!』と言ってくれたが、
山田くんには彼のワクワクする気持ちが詰まっていて、その気持ちも一緒に私と旅をしている気がする。
▷山田さんの会社
埼玉県草加市にあるFreedom
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