加藤功一の議会報告8-1
一般質問のその後を検証
過去、任期中に危害の一般質問で取り上げた課題について、任期切れ前の議会で現在の状況についてひとつひとつ検証を行いました。
①グリーンインフラストラクチャーによる災害・環境対策について
「世田谷区保健医療福祉総合プラザ」は、緑化した各階バルコニーが雨水を一時的に蓄える段丘の施設形状、雨水や地下からの湧水の流水を抑制するレインガーデンなどグリーンインフラに配慮した施設となっています。災害対策、環境対策の観点から公共施設へのグリーンインフラの積極的に導入を推進すべきだと訴えました。市は、20年3月に策定した「狛江市環境基本計画」で、「人と生きものが共存する豊かで多様な水と緑のまちづくりを、都市景観の向上や都市防災への寄与等といった緑の多面的機能を活用するグリーンインフラの視点をもって進めるとし、施策の方向性として緑の創出や保全を掲げ、取組を推進している」、浸水対策では「コンクリートなどで造る、いわゆるグレーインフラと、自然環境が有する多様な機能を活用して持続可能で魅力ある地域づくりを進めるグリーンインフラ双方の、特性を踏まえた適切な組み合わせによる対策を進めるべきであると考えている」との答弁を得ました。
②シェアリングエコノミーの活用・推進について
個人の意識が商品・サービスの「所有」から「利用」へと変化する、シェアリングという概念が社会的に広まっています。経済活動の新たな形態である「共助のしくみ」を生み出す手段として、全国の自治体でもシェアリングエコノミーのとりくみが急速に進んでいます。例えば日野市では家事・育児などの困りごとをシェアリングサービスの活用によって解決することで、顔の見える関係が生み出され、地域コミュニティの強靭化が図られています。
狛江市では、空き家を活用した多世代・多機能型交流拠点を立ち上げ、子どもから高齢者まで市民誰もがいつでも気軽に立ち寄ることのできる交流の場を事業化し、これもシェアリングエコノミーのひとつとしています。また、交通手段の確保のために市役所の敷地内でカーシェアリングやシェアサイクル、職員の働き方として東京都とテレワークオフィスの相互利用などを実施しているとしています。「シェアリングエコノミーを前提とした事業の検討はしていない」としつつも、これらの事業を「市民ニーズ等の把握を行いながら、地域課題の解決に当たっての手段の一つとして、取り組んでいる」と答えています。
今後も、より積極的なとりくみを求めていきます。
③電子地域通貨を活用した地域経済活性化について
インストール型アプリを活用したデジタルによるプレミアム付商品券コマチケが2022年に発行されました。chiicaという、地域で貯まる・使える「地域通貨」のプラットフォームサービスを活用したしくみを利用しました。このシステムをそのまま活用すれば、電子地域通貨の導入が容易となり、地域内で貯めたくなる、使いたくなる通貨として、地域内での循環を通じた経済の活性化をすすめることができます。市には電子地域通貨の導入を求めました。
これについて市は、「まずは地域ポイント導入に向けた検討を行い、段階を踏んで電子地域通貨導入の検討を進める」とするとともに、「将来的な導入に向けては、新たにポイント事業に参加できる事業等の調査・集約も行う」などと答弁。「より幅広い取り組みと検討を進める」との考えを引き出しました。
④これからの社会教育、生涯学習のあり方について
23区内では、練馬区の練馬公民館が生涯学習センターに転換され、公民館がなくなりました。多摩地域の一部でも、公民館を生涯学習センターなどに転換する動きがあります。第9次地方分権一括法改正では、博物館、図書館、公民館などの公立社会教育施設について、条件を満たせば教育委員会から首長部局へ移管することが可能になりました。しかし、社会教育のためには、公民館を残したり、生涯学習センターやコミュニティセンターに転換したりするなど多様なやり方があります。狛江市には公民館・社会教育が担うべき役割、進むべき方向について確認しました。市の考えは公民館を「地域の学習拠点として市民の学習ニーズに対応した事業を展開する」などとの答弁を得、市民センターについては、「より幅広く地域の方々の主体的な参加を促し、市長部局をはじめ関係機関や多様な主体と連携・協力しながら、ライフステージに応じた生涯学習の場を提供していくことも重要」「そのためには、公民館、社会教育の枠組みにとらわれず、先進事例を参考にそのあり方を研究することも必要」と回答しました。先行きを注視します。
⑤学校施設・プールの集約化・共同利用について
通年型プールを整備することによって学校プールを集約化し、プールの共同利用で水泳授業を行っている自治体が増えています。また、児童・生徒の安全確保の面から水泳授業をスポーツクラブやスイミングスクールなどに外部委託する自治体も徐々に増加しています。狛江市でも将来的にプールを集約して施設を共同利用したり、専門家が指導する水泳授業の委託を進めたりするべきではないかと考えています。
狛江市は、質問に「検討課題として認識している」としつつも、「実現には児童・生徒の移動時間の問題や移動手段の確保、授業時間の調整等、様々な問題が想定されることから、先進自治体の取組みに注視しながら調査・研究を進めてまいりたい」と答えました。これからも実現を求めていきます。
⑥創業支援、業態転換支援、事業承継支援について
創業支援や業態転換支援、事業承継支援について狛江市独自の施策・これまでの実績について尋ねました。
創業支援の実績は、2022年度の創業スクール受講者は15名、創業セミナー受講者は24名となり、「それぞれ創業に必要な知識を習得していただくことができた」としています。また、2017年度から5年間に創業スクールを修了し、その後、創業した市民は12名になっているそうです。市は「少しずつではあるが、創業支援の一助になっている」との認識を示しました。また、創業資金の融資あっ旋や狛江市商工会、小田急SCディベロップメントなどの関係機関と連携した各種優遇措置のほか、創業支援家賃・改修費補助金を2022年度は7件交付し、資金面での支援にもとりくんでいるとしました。
事業転換については、国や東京都の支援とともに、「他の自治体の動向等も注視しながら、必要な支援策を検討する」との答えを引き出しました。事業承継支援については相談窓口の周知案内など、狛江市商工会をはじめとする関係機関と連携を強めるとしています。
組合員全員が「出資者」であり、「経営者」であり、「労働者」である事業のしくみであるワーカーズコープ、ワーカーズコレクティブを法的に位置づけた労働者協同組合法が2020年12月に成立し、22年10月に施行されました。今後は、労働者協同組合づくりのための具体的支援も狛江市に求めていく考えです。
⑦市役所の住民サービス・業務のICT化について
業務プロセスを見直し、より効率的かつ効果的な業務フローに改善する自治体BPR(業務本来の目的を達成するために、組織や制度を抜本的に見直そうという考え方)、行政事務の効率化の「業務の自動化に向けたAI・RPA(人工知能による業務の肩代わり)の導入やRPAによるバックヤード業務の効率化、市民が場所や時間にとらわれず行政手続きができる「モバイル市役所(持ち運べる市役所)の実現」など、業務のICT化(情報通信技術を活用してコミュニケーションを円滑化し、サービス向上などに活かすこと)が急務だと考えています。
狛江市に現状を尋ねたところ、AIとRPAの活用は一定程度進み、AI-OCR(AIによる文字認識)を7課9業務、RPAを5課13業務で活用し、AI会議録作成システムも各会議で活用しているとのことでした。「モバイル市役所」のとりくみは、東京都電子自治体共同運営サービスの電子申請サービスほかを活用。電子申請の拡充・電子決済の導入について、「法令等も確認しながら検討を進めている」という説明を受けました。
⑧公契約条例について
自治体と契約する事業者の労働報酬を法定の最低賃金よりも高い、労働報酬下限額などを定める「賃金条項」のある公契約条例は、中野区や北区など都内13自治体で施行されています。賃金条項がない葛飾区の条例も含め、公契約条例を制定する自治体は徐々に増えています。狛江市にも検討状況を尋ねました。
「公契約条例につきましては、現時点におきましても国全体で検討されるべきものとの考えに変わりはございません。引き続き、国をはじめ都内他自治体の動向を注視ながら、情報収集してまいります」と、消極的でした。今後も実現を働きかけます。