加藤功一の議会報告6
合意形成プラットフォーム
現在の民主政治の土台は代議制民主主義であり、日本の地方自治体では2元代表制を採り、狛江市では有権者が市長と22人の議員を選挙で選出しています。合理的なシステムですが、しかし、市民の声が十分に政策立案に反映されているのかという課題もあります。
直接民主制は、日本では自治体の人口規模からみて現実的ではありません。代議制民主主義の足りないところを補完し合う関係として、市民参加が求められます。
ドイツ出身の政治思想家のハンナ・アーレントは、世界を「テーブル」に例えました。テーブルを介して人々が対話して結びつく。人々と政治を直結させるテーブルをどう作り出すか、市民の意見を反映するシステムが求められていると考えます。
立法と政策立案は、行政職員や政治家が担うと思われがちです。ところが、この役割を市民自らボトムアップ的に担う動きが、「ルールメイキング」いう言葉とともに注目されるようになりました。選挙への参加だけが民主主義を機能させるわけではありません。行政が適切に市民の声を吸い上げ、市民が適切に政治家を動かすことも民主主義に貢献することになります。DX(デジタル技術を使った変革)社会における市民参加の方法を探りたいと考えています。
その前段として、市民参加と協同の手法の現状・課題について市に確認しました。狛江市では、審議会、委員会、協議会などに市民の多様な意見を取り入れ、行政活動に反映させるため審議会などへの市民委員を募集し、政策等の策定途中や策定後に、市民への説明や、市民どうしの議論、意見交換などを行っているとしています。また、市民の意見が大きく分かれる場合、公開の場で、それぞれの意見を聞く公聴会があるとしました。
協働のパートナーについては、他市では企業や教育機関が含まれていることがあるにもかかわらず、狛江市では対象外になっていました。この点については、対象を広げるよう検討していくとのことです。
さらに、市民参加型スマートシティ(インフラとサービスを効率的に管理・運営し、環境に配慮しながら、人々の生活の質を高め、継続的な経済発展を目的とした新しい都市)の可能性も検討してほしいと提案しました。
狛江市は、加藤が実例として質問で触れた横浜市のリビングラボ(まちの主役である市民に加え、企業やNPO、行政、大学など立場を超えた様々な人が集まって協働し、地域課題の解決につながる新たなモノやサービスを生み出す市民が主体となったオープンイノベーションの拠点)や富山市のシティラボプロジェクト(市域全体を「ラボ=実験室」とみなし、富山市の産学官民が実証や試行を通じて地域課題の解決を図る「未来共創」を推進するためのプロジェクト)のようなとりくみが参考になる、との前向きな答弁を得ました。
市民参加型合意形成プラットフォームは様々なしくみがあります。一例をあげると、神奈川県真鶴町では、みんなでつくろう!真鶴暮らしをテーマに、公園づくり事業と子育て・教育分野に関する地域課題解決事業を、公民協働で推進するために、デジタルプラットフォームを整備しました。このプラットフォームで町民や事業者との意見交換、意見・アイデア募集、事業進捗の見える化などを行うことができています。身近な公園づくり事業、子育て・教育分野に関する地域課題解決推進事業なども募集しています。このような参加型合意形成プラットフォームを採用する自治体が増えています。
現役世代の多数の市民、いわゆる「サイレントマジョリティ」の意見を聴取する手段として有効だと考えれられるので、市に対しては「前向きに調査・研究いただきたい」と要請しました。