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加藤K 超短編小説 汗
彼は、いつもの黒のポロシャツに、ジーンズ姿で、
10分遅れて、現われた。
「ごめん、待ったでしょう」
額に汗を浮かべて、荒い息でそう言った。
「ううん、私も今きたところだから」
ありがちな返事をして、二人は歩きだした。
駅に近づくと、彼はおもむろに話しかけてきた。
「君の髪形、今日とっても味噌汁だよ」
そう言って、彼はにっこり微笑んだ。
「うん、今朝私、おじいちゃんのおしっこで
シャンプーしてきたから」
彼は、さりげなく私の髪をなでて、
晴れ渡る、初夏の空を見上げた。
「あー、とってもハミガキな気分」
そう言う彼の額には、もうさっきの汗は、
姿を消していた。