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3年続いた婚外パートナーと、お別れした話

去年の12月の頭。
気付けば3年近く続いていた婚外パートナーとお別れした。

彼の仕事が変わって忙しくなってから、
関係はかなり悪くなっていた。
宙ぶらりんのまま残っていた旅行の予定。
これ予約した頃は仲良しだったのにね、と胸がぎゅっとなる。

キャンセルしたら良かったのに。
「お別れ旅行」なんてアホみたいな気持ちで一緒に出かけたのが12月。

もう気持ちが離れているのに。
これで終わるとお互い思いながら美しい景色を眺め、
お互いが心のないセックスをする。
あれは本当にお勧めしない。

無駄に美しい街並みや自然、最高に癒される温泉宿に、
なんだか申し訳なくなる。
どこに行っても気持ちが入らない、むなしい。
最後の思い出、なんてまさに自己憐憫。
後になって何も残らない。馬鹿馬鹿しいものだ。

結局最後まで、お互い明確な別れ話はしなかった。

私は夫とはセックスレスだ。
「もう男の人の身体に触れることもないかもしれない」
そう思って、帰りの新幹線の隣の席で、
彼の腕にぎゅっとしがみついてみた。

3年近く、何度も抱きしめてくれた太くて大きな腕、
頭をなでてくれたてのひら。
いやらしいこともたくさんして、すっかり洗脳されてしまったのに、
これから私、どうしよう。

前なら周りの目も気にせず身体を寄せてくれたであろう彼は、
まったくの無反応。
ぴくりとも動かず、
私の存在なんてないように固く硬直してじっとしている。


「もう終わりなのに何してんの」
「終わりだから、最後に味わってる」
「ふーん」
それだけ。

涙が出てきて、顔を見られないように彼と反対側の窓を向いて、
景色を見ているふりをした。
東京に向かう新幹線は、どこを走ってるのかよくわからない。
窓の外はほとんど真っ暗で、建物の光だけがすごいスピードでどんどん横切っていく。
ちょっとだけ、泣いてることに気付いてほしくて、わざとしゃくりあげるように鼻をすすった。

彼もそれに気付いている。
けど、やっぱり何も言わなかった。

新幹線を降りて、改札を出る。
「丸の内線だっけ?」
「うん」
「じゃ、ここで」

いつもなら送ってくれるけど、改札の前でさようならした。
振り返ったら、彼は立ったまま、ずっとこっちを見ていた。
人がどんどん横切ってよく見えない。
他の人にぶつかりそうになりながら、それでも彼の姿が見たくて、
私も何度も振り返った。


それで、おしまい。
さよなら、私の3年間。

それから2か月弱。
私は馬鹿みたいにひきづっている。

とっくにフォローを外して、外されているSNSを見ると、
彼はすごく元気そうで楽しそうだ。


婚外だもの。
もともと存在なんて誰にも明かされていない関係性なので、
彼のSNSは平常運転。
何か月前と比較しても、ずっと変わらない、
ただ、その頃より幸せそう。

SNSでもふと心の弱さをさらけ出す、そんな繊細な彼が好きだった。
私がいないとだめだって、そう思わせてくれた。

私も弱かった。
弱い者同士で、だから、ずっと心だけは隣同士、横っちょにあった。

でもそれって、相手の不幸をずっと願っていたってことだよな。
今はそう思っている。

彼の幸せそうなSNS。
もうとっくにお別れしているというのに、
私は、自分の存在がもう不要だということを
あらためてかみしめている。


弱かった私は、何かあると彼にすぐメッセージを送った。
彼はいつもすぐ返事をくれた。
それだけで安心できた。

今思うと、心を文字にするのは私の精神安定剤だった。
でも、もう、心を文字にして、伝えられる相手はいない。

だったらここに残そう。
誰にも言えないこと、ずっと引きずってるバカみたいな自分。

こうして文字を打っている時だけは、心が安らかになれる気がする。
早く忘れたい、
自分だけが取り残されている。
時間が止まるどころか逆流に飲み込まされているように、
気を抜くとすごい力で過去に引き戻されていく。

そこから立ち直って前を向くまでを、ここに残していきたい。

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